第一席の覚悟
スピカ、新十郎、あやめ、刹那の顔パスで城に入城し、一同は中を歩いた。
「あれが一席とやりあった……」
「十剣に混じっても物怖じしないな……」
なにやら噂話が聞こえてくる。
「俺って有名人なんですか?」
十剣の四人が立ち止まった。
そして、勢い良く振り返った。
「自覚なかったのー?」
「嘘だろ?」
「……一馬らしいと言えば一馬らしいけど」
「まあ、一馬らしいの一言に収束しますね」
四人相手に呆れられてしまった。
「特に十剣候補生の中ではライバル出現でざわついてますよ」
刹那が、脱力したような苦笑顔で言う。
その表情が、強張った。
一馬の表情も、強張っていた。
凄まじい殺気と圧迫感だ。
それが、城の奥から放たれている。
「相変わらず凄まじい剣気だな、おい……」
新十郎が呆れたように言う。
「だから私は二席より上は狙わないのよねー」
あやめは苦笑顔で言う。
「まあ、それでこそ私達のリーダーだと言えるでしょう」
刹那が淡々とした口調で言う。
「……けどこれ、相当テンパってる」
スピカは同情するように言う。
「行こう。リーダーの元へ」
スピカの一言に従い、皆、前へと進んだ。
作戦会議室では、結城が今まで見せたこともないような難しい表情で顎をこすっていた。
その表情が、一馬一行を見て緩む。
「あやめ、新十郎、刹那、間に合ったか。これで王都の十剣は六人だ」
「どうするつもりだ、結城。農兵はおろか軍人兵十人でも敵の一兵以下だぜ」
新十郎が渋い顔で言う。
「そこで王都十剣の見せ場というわけだ」
結城は悪戯っぽく唇の片端を上げた。
「あやめ、スピカ、君達は確か範囲攻撃が使えたな?」
「ういよー」
「使えるけど……」
「なら十分だ。王都十剣と一馬一行で敵を撃破する」
結城は、一馬に向き直る。
「ギルドを介して話をしよう。報酬の面なども用意してみせる。力を貸してくれるか、一馬」
一馬は、一も二もなく頷いた。
「結城さんの助けになれるなら、それが一番の報酬です」
「よく言うぜ、お前ぇ」
結城は破顔して一馬の頭を撫で回す。
作戦は決まった。
十対三千という、数字だけで見れば絶望的な数字が一馬達の肩に伸し掛かった。
「死ぬ前に結婚したかったなあ」
あやめが呟く。
「私などはどうでしょう」
衛兵の一人が陽気に叫ぶ。
「死ぬ前に強い男と結婚したかったなあ」
衛兵は気恥ずかしげに、黙り込んだ。
「なんでそこで退く、そこで!」
「王都十剣の二席が無理を言ってやるなや……」
新十郎が呆れたように言った。
第六十話 完
次回『作戦会議』




