到着、そして再会
全力で空中を駆けて、半日で王都に辿り着いた。
城の門は開かれ、近隣の村からの避難民らしき人々が入っていく。
それを誘導している人物に、見覚えがあった。
「スピカさん!」
スピカはその瞬間に刀の柄に手をそえた。
しかし、一馬の顔を見て緊張を解いた。
一馬はシャロを抱いたまま地面に着地する。
「一馬か。さらにできるようになったようだね」
褒められたらしいが、ぼんやりとした表情をしている相手なので実感がわかない。
「今、王都の戦力はどんなもんなんですか?」
「農兵が二千。専業兵士が五百。十剣見習いが二十。そして、十剣は君達が間に合ったことで六人」
隣に新十郎が降りてきた。
「敵さんは三千はあるぜ。フィジカルで負ける人間軍が勝つにはちと厳しい。周辺都市から兵を集める時間も足りない。まんまと奇襲された形になるな」
そう言いつつ、新十郎はキュアーを発動される。
疲労が霧のように消えていった。
「そのための十剣でしょう」
淡々とした口調でスピカは言う。
しかし、その言葉には重みが感じられた。
「そうさな」
新十郎は頭を後頭部で組んで、上唇を尖らせながら大仰に頷く。
「近隣の町や村の避難は済んだ?」
スピカが門番に問う。
門番は地図を確認して、頷いた。
「これでラストです」
「わかった。今の人達が入ったら門を閉じて」
スピカはそう言ってゆっくりと歩き出す。
その後に続いて、一馬達は王都へ入っていった。
ひとまず、決戦には間に合ったようだ。
第五十九話 完
次回『第一席の覚悟』
王都決戦となりました。日・月で六話ほど投稿しようと思います。




