新十郎の忠告
一馬は別れ際の新十郎の台詞を思い出していた。
「第二席には気をつけろよ」
師にも同じ台詞を吐かれた気がした。
「第二席はサキュバスの血をひいてるからな。その上結婚適齢期が近い。有望株のお前はいかにもカモだ」
「そうやすやす色香などに引っかかると思います?」
「そう言ってる奴を力技で落とすのがサキュバスの怖いところでな。第一席も第二席にはあまり近づかんよ」
「そういうものですか……」
回想はそこで途切れている。
自分が狙われるかもしれないというのは自意識過剰な気がするが、サキュバスの血をひいていると言うならばあまり二人きりにならないほうがいいだろう。
「おし、勝ち!」
「強すぎです……」
あやめがガッツポーズをし、遥が頭を抱える。
「私はこのカードゲームの全国大会で二位をとったことがある」
「ホントですか?」
「マジよ、マジマジ。さて、愛。カモン?」
「挑まれて逃げるわけにはいきませんね」
愛が遥に入れ替わって座る。
この二人はどうやら面識はあるようだ。
「私の今のデッキは罠デッキ。泥沼に沈めて差し上げましょう」
「それは楽しみね」
そうやって熱中している二人を見ていると、なんだ、普通の人じゃないか、なんて思ったりするのだ。
問題は、夜だ。
家が何軒建ってるか次第だなと思う。
けれども、幼馴染とそっくりな彼女は、警戒心を抱くにはあまりにも可愛らしすぎた。
第五十三話 完
次回『スタート地点』




