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王都十剣第三席 来須新十郎

「何故道を塞ぐ」


 一馬は問う。道を塞ぐ男に。

 男は、薄く笑った。


「俺は王都十剣は第三席、来須新十郎。結城殿と互角に戦った剣士がいると聞いて、挑みに参った」


「結城さんと戦えば手っ取り早いじゃないか」


「あれは人間じゃない」


 新十郎は淡々とした口調で言う。


「だが、お前は人間かもしれない」


「はた迷惑なことで」


 一馬は呆れたように言う。

 そして、前へと移動した。


「五連華!」


 そう言って、一馬の五連撃が放たれる。

 その五連撃を、新十郎はあるいは避け、あるいは弾いた。

 そして、剣の一撃を一馬に浴びせる。


 一馬は後方に引いたが、鼻から血が流れていた。


「どうやら、人間だったようだな」


 新十郎は満足気に言う。


「一馬! 大丈夫?」


「かすり傷だ」


 一馬は淡々と言い、刀の柄を両手で握りしめる。


「激戦の後で少し気が緩んでいたらしい」


 それは、とてもとても静かな声だった。


「ゾーンに入らせてもらう」


 その瞬間、愛は怖気を感じた。

 一馬から、人間性が失せたように感じたのだ。

 代わりに感じるのは、鬼を前にしたような恐怖感。


 新十郎の気配も変わった。

 二人は相手だけに意識を集中し、武器を構える。


 先に動いたのは一馬だった。


「十連華!」


 十連撃が新十郎を襲う。

 その全てを、新十郎は弾く。

 そして、剣と刀が幾重にもぶつかりあった。


 一馬の蹴りが新十郎の腹部に突き刺さる。

 新十郎は膝を折って、剣を杖のようについた。

 そして一馬は刀を振り下ろそうとしたが、それを断念して後方へと飛んだ。


(何故……?)


 見ると、新十郎の周囲には三本の剣が浮かんでいた。


「この技を見せるのは、結城の次にお前が二人目だ」


 そう言って、腹を抑えながら新十郎は立ち上がる。

 三本の剣が自由自在に宙を舞う。

 それは、次々に一馬を襲った。


「四撃彗星!」


 新十郎の四本の剣が光り輝いて一馬を襲った。

 その時、一馬を黄色い光が覆った。

 四本の剣が止まる。


 次の瞬間、一馬の刀が相手の頭部を打っていた。

 新十郎は地面に倒れる。四本の剣が、大地を貫いた。


「こ、殺したの……?」


「峰打ちだ」


 そう言って、一馬は刀を鞘に収める。


「だから無理って言ったにゃ」


 垂れ猫の耳がどこからともなく現れて、新十郎の傍に座る。

 そして、唱えた。


「キュアー」


 新十郎は意識を取り戻したらしく、慌てて立ち上がった。

 そして、自分の敗北を悟ったらしい。地面に座り込んだ。


「純粋な剣の腕では俺のほうが上だな」


「なにを言っても負け惜しみだにゃ」


 相棒の言葉に、新十郎は苦い顔になる。


「まあ、俺の負けだ。なんでも言うことを聞こう」


「じゃあ、土のエレメンタルマスターの護衛を手伝ってもらえますか?」


 新十郎は目を丸くして馬車の中を見る。

 その視線が、愛の視線と重なった。


「これは恥ずかしいところを見られてしまったな。いいだろう。お前の旅、俺が護衛しようではないか」


 そう言った後、新十郎は地面を叩いた。


「ああ、悔しい」


「タイマンじゃ負けたことないの、ちょっとした誇りなんですよ」


 一馬はそう言って、微笑んだ。

 十剣の第三席を退けた。

 その事実に、愛の胸は高鳴っていた。



第四十六話 完




次回『不死軍団』

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