我が名は赤羽刹那
「我が名は赤羽刹那! 王都十剣が六席! 首を取って誉れとしたい者はかかってきなさい!」
そう言って、刹那は刀を杖のように突く。
王都十剣のネームバリューは抜群らしく、しばらく相手は硬直していた。
しかし、目配せや相談をして、次々に襲い掛かってくる。
刹那は、ゾーンの中に入った。
槍を斬り、首を斬り、心臓を突く。
その時、足が動かなくなって刹那は戸惑った。
ゾンビが、刹那の足にしがみついている。
その首を蹴り飛ばすのと、巨大狼が刹那の肩をかじるのは同時だった。
刹那は巨大狼に刀をたて、崩れ落ちたところで自分に対してキュアーを発動させる。
そして、シャロの姉の蹴りを間一髪で回避して、蹴り返した。
「私の継続戦闘時間は、十剣でも一、二を争います。被害は増える一方ですよ」
敵は怯んだように、刹那を遠巻きに取り囲む。
その時のことだった。
「おやおや、これはどうやら俺の出番らしい」
そう言って、剣を帯びた青年が歩いてくる、
尋常な使い手ではない。
気配だけで、刹那はそれを察していた。
「あなたは?」
「魔族公四天王。炎のコルト」
「相手にとって不足なし!」
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なにかいい匂いがするものに背負われている。
一馬は、ゆっくりと目をさました。
そして、体を緊張させる。
フラッシュバックのように、意識を失う前の記憶が蘇ってきた。
周囲を見回す。刹那の姿はない。
「敵はどうなった? 師匠は?」
「まだ戦っているだわさ」
「なんで戻ってる?」
「あんたの師匠の命令だからだわさ」
「刹那さんは全員での撤退は不可能だと考え、殿を申し出た。俺達はその考えに甘えた形だ」
「そんな! 師匠は王都十剣だ! 手を組めば、なんとでもできた!」
沈黙が漂う。
敵の大軍を見て、意気消沈してしまったようだ。
一馬は、遥の背から降りると、来た道を戻り始めた。
「師の心遣いを無駄にするの?」
遥が、躊躇うように言う。
「策はある。静流。ついてきてくれるか」
「条件によるだわさ」
「全員無傷で地上に戻れる。これ以上ない報酬だろう?」
静流は目を丸くした後、笑った。
「あんたが言うとなんでも本当になりそうだから不思議だわさ」
「俺はエースだからな。最適解を導き出してみせる」
そうして、三人と一匹は来た道を戻り始めた。
第四十一話 完
次回『崩落』




