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我が名は赤羽刹那

「我が名は赤羽刹那! 王都十剣が六席! 首を取って誉れとしたい者はかかってきなさい!」


 そう言って、刹那は刀を杖のように突く。

 王都十剣のネームバリューは抜群らしく、しばらく相手は硬直していた。

 しかし、目配せや相談をして、次々に襲い掛かってくる。


 刹那は、ゾーンの中に入った。


 槍を斬り、首を斬り、心臓を突く。

 その時、足が動かなくなって刹那は戸惑った。


 ゾンビが、刹那の足にしがみついている。

 その首を蹴り飛ばすのと、巨大狼が刹那の肩をかじるのは同時だった。


 刹那は巨大狼に刀をたて、崩れ落ちたところで自分に対してキュアーを発動させる。

 そして、シャロの姉の蹴りを間一髪で回避して、蹴り返した。


「私の継続戦闘時間は、十剣でも一、二を争います。被害は増える一方ですよ」


 敵は怯んだように、刹那を遠巻きに取り囲む。

 その時のことだった。


「おやおや、これはどうやら俺の出番らしい」


 そう言って、剣を帯びた青年が歩いてくる、

 尋常な使い手ではない。

 気配だけで、刹那はそれを察していた。


「あなたは?」


「魔族公四天王。炎のコルト」


「相手にとって不足なし!」



+++



 なにかいい匂いがするものに背負われている。

 一馬は、ゆっくりと目をさました。


 そして、体を緊張させる。

 フラッシュバックのように、意識を失う前の記憶が蘇ってきた。

 周囲を見回す。刹那の姿はない。


「敵はどうなった? 師匠は?」


「まだ戦っているだわさ」


「なんで戻ってる?」


「あんたの師匠の命令だからだわさ」


「刹那さんは全員での撤退は不可能だと考え、殿を申し出た。俺達はその考えに甘えた形だ」


「そんな! 師匠は王都十剣だ! 手を組めば、なんとでもできた!」


 沈黙が漂う。

 敵の大軍を見て、意気消沈してしまったようだ。


 一馬は、遥の背から降りると、来た道を戻り始めた。


「師の心遣いを無駄にするの?」


 遥が、躊躇うように言う。


「策はある。静流。ついてきてくれるか」


「条件によるだわさ」


「全員無傷で地上に戻れる。これ以上ない報酬だろう?」


 静流は目を丸くした後、笑った。


「あんたが言うとなんでも本当になりそうだから不思議だわさ」


「俺はエースだからな。最適解を導き出してみせる」


 そうして、三人と一匹は来た道を戻り始めた。




第四十一話 完



次回『崩落』

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