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ギガスのトンバ

「ギガス殿。貴殿は不器用だ。無理をして手伝うことはない」


 洞窟の奥から声が聞こえてくる。


「けど、俺、暇。手伝い、する」


「あなたが手伝うと散らかるんだ」


「うー、俺、暇」


「ギガスか……」


 刹那は呟いて、考え込むように顎に手を当てる。


「ギガス?」


「私の記憶が確かなら、巨人族です」


 一馬の問いに、刹那は淡々と答える。


「厄介だなあ」


 刹那はぼやくように言う。


「刹那さんと一馬がいれば勝てない敵ではないように思いますが」


 遥が言う。


「そうですね。引き返す道はない。ここで逃して人間界で暴れられたら大惨事です」


 刹那は刀の鞘に手を添えると、歩き始めた。

 そして、次のフロアに躍り出る。


「に、人間!」


 小型の魔物の一匹が叫ぶ。


「遥、お願いします」


「飛燕!」


 遥は抜刀する。

 鳥の影が地面を走る。


 小型の魔物は、それで全滅だった。

 ただ、巨人が一匹、棍棒で飛燕を無理やり叩き潰した。


「ん? なんでここに、人間いる?」


「あなた達の企みもここまでです。私は王都十剣第六席赤羽刹那。あなた達を討伐に来ました」


 ギガスは、同情したような表情になる。


「例え俺、倒そうと、この先、地獄。お前達に先はない」


「それは自分の目で確かめさせてもらいましょう」


「その時には、もう、手遅れ」


 淡々とした語り口調に、一馬は背筋が寒くなった。

 確かに、先行きの怪しい船に乗っている実感はある。


「一馬、倒しますよ」


「はい」


 一馬と刹那は並んで刀を抜く。


「飛燕!」


 遥が飛燕を飛ばす。

 それを、ギガスは無理やり叩き潰した。

 その瞬間、一馬と刹那は同時に飛び上がっていた。


「斬岩いっ……」


 技が発動する前に、棍棒が神速で一馬の腹部に襲いかかる。

 一馬は空中に見えない壁を作り、さらに上へと飛んだ。

 刹那も同じようだ。


 刹那は見えない壁を幾重にも作り、それを次々に蹴って地面へと高速で戻って行く。

 ギガスの意識が下にいった。


「一光!」


 一馬の技が発動した。

 下を向いたギガスは、頭部が真っ赤に裂けて地面に倒れた。


 刹那は刀を鞘に収めると、一馬に布を投げてきた。


「それで刀の血を拭きなさい」


「洗って返します」


「いえ、あなたにあげましょう」


 そう言う刹那の表情は微笑んでいる。


「上達しましたね、一馬。空中での方向転換。技のキレ。いずれも以前の比にならない」


「皆のおかげですよ」


 一馬は照れながら、刀の血を拭って鞘に収めた。


「どうやら、彼らは道を舗装していたようですね」


 確かに、このフロアにはタイルのようなものを敷き詰めようとした痕跡がある。


「このタイル、なんだか嫌な感じがするだわさ……力が抜けていくかのような」


「ふむ」


 刹那はそう言うと、手をかざして、炎を腕に浮かべた。

 それは、放った瞬間にタイルに吸収されて消えた。


「魔術を吸収するタイルのようですね」


「それじゃあ私はここでおさらばだわさ」


 静流は気だるげに言う。


「岩石系の魔術なら無理やり破壊できるでしょうね。行きましょう」


「魔族の規則だった行動。嫌な予感しかしないだわさ」


 ぼやくように静流は言って、先を歩く刹那の後をついていった。

 一馬と遥は顔を見合わせて苦笑すると、その後に続いた。



第三十八話 完

次回『終着点』

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