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二股の道

 しばらくは、魔物の姿もなく順調に道を進めた。


「む」


 そう言って、刹那は足を止めた。

 目の前には二股の道がある。


「どうします?」


「二手に別れて行動するしかなさそうですね」


「……その先に魔物の集団がいたら?」


「一旦戻って全員で攻略にかかりましょう。遥」


「はい」


 声をかけられて、遥は裏返った声で返事をする。


「静かに」


「はい」


「私と来なさい。一馬は静流を守るように」


「了解しました」


「では私は右の道を行きます」


「では俺は左の道を」


 そう言って、四人は二チームに別れた。

 歩いて行く。


「あんた、魔物の気配の探知なんかできるんだわさ?」


 一馬は押し黙る。そんなことをした経験はない。


「やっぱ私がついてて正解だったわね。魔力の探知で魔物を探し出すのは軽いもんだわさ」


「あんまり大声で喋るな。相手に気取られるだろ」


「二十五メートル先にいるだわさ」


 そう言って、静流は杖で地面を突く。


「荒ぶる炎の精霊よ。その力を我々に示したまえ。ファイアストーム!」


 彼女がそう唱えた瞬間、杖から炎が迸った。

 炎は一馬の前を高速で飛んで行く。

 一馬は、慌ててその後に続いた。


 部屋の中では炎が荒れ狂っていた。

 それが、小型の魔物や大型の魔物を食い散らかしている。


 そして、炎が消えた後、残ったのはドラゴン一匹になっていた。

 一馬は飛び上がり、ドラゴンに向かって落下する。


「斬岩一光!」


 ドラゴンの頭が真っ二つに割れ、その巨躯が地面に崩れ落ちた。


「ドラゴンまでいる……?」


「いつぞやのドラゴンもここから出てきたのかもしれないだわさね」


 淡々と言って、静流は杖をついて歩いていく。


「この下には、なにかがある」


 一馬は、確信を持ってそう言っていた。


「そうね。しかも、それは多分ろくなものではないだわさ」


 二人は歩いていく。

 膨れ上がる不安を抱えながら。


 進んだ先では、二股の道が、一つに繋がっていた。

 腕を組んだ刹那が、苦笑交じりに声をかけてくる。


「遥のおかげで助かりました。まさか飛燕を習得していようとは」


「こちらも静流のおかげで助かりました。師匠って範囲攻撃あります?」


「攻撃魔法もそれなりに使えますが、あまりないですね。自信あったらあなた達に助けを求めていないです」


 刹那はそう言ってフロアの中央まで行くと、座り込んだ。


「一旦、休みましょう」


「助かるだわさ。集中力を回復させるだわさ」


 フロアの中央に集まり、座り込む。静流だけは寝入る構えだった。


「なにがいましたか?」


「大半は焦げてたので見分けがつかなかったのですが、沢山の小さな魔物と、ドラゴン」


「ドラゴンまでいたかぁ……いつぞやのドラゴン騒ぎはここが発端と見て間違いないですね」


「そういうことなんでしょうね」


「嫌な予感がしてきました」


 刹那は、淡々とした口調で言う。


「我々は地下に進むのではなく、この辺りで破壊行為を行って、道を塞いで帰るべきかもしれない」


「けど、任務は偵察でしょう?」


「ええ、そして上に伺いをたてている時間もありません」


 しばし、沈黙が漂った。


「十剣の役目って、辛そうですね」


「いえ、上も十剣の損失は手痛いんですよ。だから無茶は言わないんです。ただ、今回は現実が上の人々の想像を上回ってしまった例だということで」


「なら、引き返しても怒られない気もしますが」


「けど、ドラゴン事件の時のように町人に被害が及ぶ可能性がある」


 刹那はそう言って、鞄から干し肉を取り出して、頬張る。


「行くしかないんですよ」


「……そうですね。確かに、そうです」


 思ったより厄介なことに巻き込まれた実感があった。



第三十七話 完

次回『ギガスのトンバ』

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