洞窟の中へ
縄を使って、洞窟の中に降りていく。
日光に晒されて、洞窟の中は暖かかった。
「さて、行きましょうか」
そう言って刹那は前を歩き始める。
三人と一匹はその後に続く。
刹那と静流と遥の猫は飼い主の肩の上だ。
「……確かに、なにか出そうですね」
遥が、呟くように言う。
「でしょう? 気配が魔に近いんですよ、ここ」
刹那が腕を組んで言う。
「けど、師匠。魔界へのゲートはここではないんでしょう?」
「だから私も首をひねっているわけです……止まって」
そう言うと、刹那は刀を鞘から抜いて、下の層に向かう階段に歩いていった。
そして、小さなうめき声が周囲に響き渡った。
「来てください」
刹那の声に従い、一馬達は進んでいく。
そこには、首をかき斬られたゴブリンの死骸があった。
「魔物がいる……?」
遥が戸惑うように言う。
「これはますますきな臭くなってきましたね、師匠」
「そうですね。こんなところに魔物が一匹。見張りと見るべきでしょう。そして、見張りを倒した以上、我々の侵入が伝わるのは時間の問題でしょう」
そう言って、刹那は刀を振って血を飛ばすと、残った血を布で拭き取った。
「急ぎますよ」
そう言って、早足で刹那は進んでいく。
湿気がどんどん強くなっていく洞窟で、周囲を照らすのは静流の炎だけだった。
第三十六話 完
次回『二股の道』




