表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/200

さらば王都

 シャロを結城宅に連れて行くと、大歓迎された。


「黒い髪が綺麗ねえ」


 そう言って微笑んで結城の妻がシャロの帽子を取ろうとする。

 シャロは慌てて帽子を掴んだ。

 結城の妻は戸惑うような表情になる。


「?」


「この三日月のアクセサリー、一馬の贈り物なんです。だから、帽子はあんまり脱がないんです」


 咄嗟についたにしてはうまい嘘だなあと思う。


「あらあらまあまあ」


 結城の妻は愉快げに微笑む。


「結城さん。この二人、ラブラブ」


「ち、違います! 私と一馬はそんなんじゃ」


「またまた~」


「やめなさい、食事にしよう。それにしても時間がかかったね、一馬。刀を見せてくれるかい」


 シャロが料理を食べ始める。

 一馬は、無言で結城に刀を鞘ごと手渡した。

 結城が鞘から刀を抜いて、明るい場所で見るとよくわかる。

 刃は欠け放題で、ところどころ峰にまで届かんかという傷がある。


「これは、もう使えないね」


 結城は、無情にもそう言った。


「師匠から貰った品だったのですが」


「物は壊れる時は壊れるよ。大丈夫。第六席贔屓の刀匠を紹介するよ」


「ありがとうございます!」


 また、師匠と同じ刀を振れる。それが、一馬には嬉しかった。


「それで、お前の刀をそこまで傷だらけにしたのは何者だい?」


 一馬はしばし考え込んだ。告げ口をしている生徒の気分になったのだ。

 だが、隠していても仕方がない。


「鬼人公斬歌」


「ふむ……」


 結城は考え込む。


「ゲートがあるんだよ」


「ゲート?」


「手に負えない魔物を魔界に封じ込めたゲートだ」


「けど、そんなものがあるなら」


「そう。鬼人公は勿論、ドラゴンも吸血公も巨大狼もこちらには来れない」


 沈黙が場に漂う。


「結界に綻びができているのかもしれんな」


 そう、結城は呟くように言うと、いたずら坊主のように笑った。


「まあ、今日は食べよう。難しいことは明日でもなんとかなる」



+++



「で、次の目的地は亜人の町?」


 遥の問いに、一馬は頷く。


「一度見ておけと言われたし、シャロの姉の情報があるかもしれない」


「ここまで来るには快適な馬車の旅だっただわさねえ」


「徒歩だ」


「これだから脳筋は困るだわさ」


「馬車に金使うなら美味いもの食べたほうがよくね?」


 言い合いながら、三人と三匹は進んでいく。

 亜人の町を目指して。



第二十九話 完




今週の更新はここまでとなります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ