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そして日々は続いていく

 悪魔王キスクは、台座から出てきた。

 と言っても、体の大半は既になく、頭だけで生きているようなものだ。

 神が、その向かいに立った。


「あんたもあの世界に入っていたんだな」


 あの世界に侵入した天使。

 それは紛れもなく、神の偽りの姿だった。


「往生際が悪いわよ」


 神はそう言うと、無から弓矢を生み出し、悪魔王の眉間を射抜いた。

 今度こそ、悪魔王は完全に消滅した。


「戦いの終わりね……」


 神はそう言って、台座を見た。


「けど、彼らは道を進んでいく。魔族との共存を決めたのはシャロなのだから」


 神はそう呟くと、黒と白の二つに綺麗に別れた台座を撫でた。



+++



 一馬の家では、シャロと一馬が抱き合っていた。

 人間モードになったシャロは、次から次へと涙を流す。

 一馬は、その頭を撫でて呟いた。


「ただいま」


「おかえり……」


 シャロはしゃくりあげながら辛うじて言葉を発する。


「ごめんな、約束破るとこだった」


「本当そうよ。信じられない。黒猫と子供二人残してどうするつもりだったの?」


「悪い」


「私が再婚しても良かったの?」


「それは、嫌だ」


「なら、生きて帰ってきなさいよ」


「そうだな……」


 一馬は入念に、シャロの頭を撫でる。


「これで俺の冒険も終わりだ」


「そう上手くいくかね」


 結城が呆れたような表情で言う。

 殺しても死なない、という言葉を噛みしめるかのように。


「七公とは同盟を結んでいる。俺達の戦いも、終わりです」


「……そう願いたいな。邪魔するのも悪い。我々は一旦戻ろうと思う」


 その時、家に飛び込んでくる人物がいた。


「師匠、ついに悪魔王を倒したんですね!」


 八葉だ。


「一仕事終えたってのは本当か?」


 不動が入ってくる。


 どんどん客が入ってくる。


「旅で随分知り合いが増えたな」


「人気者の妻は辛いもんだわ」


 シャロは、しみじみとした口調でそう言うと、一馬を離し、皆の方向へと押した。


「最後の仕上げがまだでしょ、勇者様」


「そうだな。皇帝様に報告してくる」


 そう言って、一馬達一行は家を出ていった。



第百九十九話 完

次回『数十年に及ぶ平和はすぐそこに』


最終回です。本日中投稿予定です。

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