そして日々は続いていく
悪魔王キスクは、台座から出てきた。
と言っても、体の大半は既になく、頭だけで生きているようなものだ。
神が、その向かいに立った。
「あんたもあの世界に入っていたんだな」
あの世界に侵入した天使。
それは紛れもなく、神の偽りの姿だった。
「往生際が悪いわよ」
神はそう言うと、無から弓矢を生み出し、悪魔王の眉間を射抜いた。
今度こそ、悪魔王は完全に消滅した。
「戦いの終わりね……」
神はそう言って、台座を見た。
「けど、彼らは道を進んでいく。魔族との共存を決めたのはシャロなのだから」
神はそう呟くと、黒と白の二つに綺麗に別れた台座を撫でた。
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一馬の家では、シャロと一馬が抱き合っていた。
人間モードになったシャロは、次から次へと涙を流す。
一馬は、その頭を撫でて呟いた。
「ただいま」
「おかえり……」
シャロはしゃくりあげながら辛うじて言葉を発する。
「ごめんな、約束破るとこだった」
「本当そうよ。信じられない。黒猫と子供二人残してどうするつもりだったの?」
「悪い」
「私が再婚しても良かったの?」
「それは、嫌だ」
「なら、生きて帰ってきなさいよ」
「そうだな……」
一馬は入念に、シャロの頭を撫でる。
「これで俺の冒険も終わりだ」
「そう上手くいくかね」
結城が呆れたような表情で言う。
殺しても死なない、という言葉を噛みしめるかのように。
「七公とは同盟を結んでいる。俺達の戦いも、終わりです」
「……そう願いたいな。邪魔するのも悪い。我々は一旦戻ろうと思う」
その時、家に飛び込んでくる人物がいた。
「師匠、ついに悪魔王を倒したんですね!」
八葉だ。
「一仕事終えたってのは本当か?」
不動が入ってくる。
どんどん客が入ってくる。
「旅で随分知り合いが増えたな」
「人気者の妻は辛いもんだわ」
シャロは、しみじみとした口調でそう言うと、一馬を離し、皆の方向へと押した。
「最後の仕上げがまだでしょ、勇者様」
「そうだな。皇帝様に報告してくる」
そう言って、一馬達一行は家を出ていった。
第百九十九話 完
次回『数十年に及ぶ平和はすぐそこに』
最終回です。本日中投稿予定です。




