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本当の帰還
シャロは、不可思議な空間にいた。
宙に浮いている。けれども上下の感覚がない。左右の感覚もない。
例えるならば、虚無。
そこに、人間モードのシャロはいた。
「あなたは、どんな世界を作りたい?」
不思議な声が、空間に響いた。
「一馬の、いる世界」
「その人は成仏してしまったよ?」
「引きずり戻す」
「そっか。そんなにその人が大事なんだ」
「そうよ。やり足りないことが沢山あるんだから」
そう言って、シャロは握り拳を作る。
「子供がある程度大きくなったら、一緒にピクニックに行こうって言った。学校の入学式は二人で参加しようって言った。子供が大きくなったら剣を教えようって言った」
「そう。あなたは一馬が全てなのね」
「そうだよ。一馬と子供以外いらない」
「魔族の世界を上書きすることもできるのよ? そんなことに、思いはいかない?」
「わかりあえるって信じてる。事実、一馬は魔界の人達と仲良かった」
「そう。本当に一馬しか興味が無いのね」
「ええ、ないわ」
「わかりました。叶えましょう」
そうして、世界は弾けた。
第百九十八話 完
次回『そして日々は続いていく』
本日投稿予定




