帰還
突入メンバーが帰ってきた。
夜の闇の中だ。人気はない。
帝都で、一行は立ち止まった。
一馬の家へ行かなければならない。
それが、気を重くさせる。
「私は新十郎さんの遺体を王宮に運んできます」
刹那は、そう言って包みを一つ抱えて歩いて行く。
「わかった、頼んだ」
「一馬……彼以上の弟子は、今後現れないでしょう」
そう言いながら、刹那は歩いて行く。
「立派な奴だったな」
結城は、呟くように言う。
「うん、立派な人だった」
シアンが、同調する。
そして、一行は一馬の家へと向かった。
中で待っていたのは、優恵と、黒猫だった。
黒猫は来訪者の一人一人を眺め、そして呟いた。
「一馬はどうしたにゃ? 帰るって約束したにゃ」
結城は、胸を射抜かれるような思いで、遺品を床においていった。
覇者の剣、服、毛革の鎧、そして一つの卵。
「これが一馬の遺品だ」
黒猫は硬直する。
そして、歩いていって卵を少し弾いた。
「これは?」
「世界の卵よ」
天使が答える。
一同、一瞬硬直した。
「これが、世界の卵?」
「そう。新しい世界を作る神秘のアイテム」
「そうか……一馬はそんな大層なものを残していったか」
結城は感心したように言う。
黒猫の瞳から、涙がひとしずく落ちた。
「こんなものはいらないにゃ。私がほしいのは、一馬だにゃ。彼の優しい腕。たくましい背中。眩しい笑顔……」
「いけない!」
叫んだのは天使だった。
しかし、遅い。
それよりも早く、シャロの涙が世界の卵に落ちた。
その瞬間、世界の卵が開いた。
第百九十七話 完
次回『本当の帰還』
明日投稿予定




