あなたを超える時
「う?」
「体が……重い」
そう言って、瑞希と遥が膝を折った。一馬も同じだ。
「今のうちに息の根を止めてやろう、勇者殿!」
そう言って、結城は光刃を放った。
瑞希の背中に光のマントが現れ、それは四人を包んで敵の攻撃から守った。
「どうなっている? 結城さんは操られているのか?」
一馬の問いに答えたのは新十郎だ。
「ああ、そうだ。針を打ち込まれた。喉のあたりに突き刺さっていると思う」
「いいぞ、この体は。体が軽い。使える力に底が見えない」
再び、光刃が放たれる
瑞希のマントにヒビが入った。
「一馬! 遥! あなた達なら動けるはずです!」
天使の声が響き渡る。
(そういえば、あいつに渡されたものがあった……)
服に突き刺さっている羽を見る。
(胡散臭い羽……)
そう思った瞬間、羽が光り輝いた。
そして、一馬は体の自由を取り戻していた。
恐ろしいほどに自分の体から聖の力が溢れているのがわかる。
遥も同じようだった。
「瑞希、ありがとう。けど、もう大丈夫だ。この三人なら、いける」
瑞希は微笑むと、マントを消した。そして、その場に倒れ込んだ。
一馬は結城を剣で指す。
「こうも安々と操られるとは思いませんでしたよ、結城さん。結城さんと一緒に戦った記憶は俺の中で光り輝いている」
「これは肉体の乗っ取りに近いからね。いくら屈強な意志を持っていれど無理なものは無理ってものさ」
結城はせせら笑うように言う。
「今こそ、あなたを超える時だ」
そう言って、一馬は剣を構えた。
第百九十三話 完
次回『尊い犠牲』
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