一心
「分かれ道ですね」
遥が淡々とした口調で言う。
確かに、道は左と右で分かれている。
「どちらに進んでも玉座の間には辿り着くみたいですよ」
天使が言う。
「それじゃ、好きな方に進むか。俺結城と同じルートがいいな」
新十郎が言う。ちゃっかりしたものである。
「私と一馬と遥は左の道を行こうと思います。回復の術は遥が使えるので」
静流が淡々とした口調で言う。
「瑞希、来いよ」
一馬は散歩にでも誘うような軽い口調で言う。
瑞希は頷いて、ぼんやりとした表情で一馬の傍に駆けてきた。
「それじゃ、決定ね」
天使がそう言って歩き出す。
「玉座の間で会おう」
結城がその後を追う。
そして、六人はそのまま歩いていった。
「私達も進むか」
そう言って、静流が歩き始める。その後を、三人で追った。
ある程度進むと、松明に火が灯り始めた。
そして、禍々しい邪気が溢れ出してくるのがわかる。
「この邪気……」
「近いね」
静流は淡々とした口調で言った。
そして、一同は広いフロアに辿り着いた。
一人の剣士が、刀の柄に手を添えて構えている。
「……名を聞いておこうか」
一馬が言う。
「一心」
一心は淡々とした口調で言う。
「なんと憎らしいことだろう。その赤い制服。小娘が二人、か」
「十剣に仇でもいるのか?」
一馬の問に、一心は首を横に振った。
「私が本来はその赤い制服を着るはずだったのよ」
その一言で、戸惑いは加速した。
第百九十話 完
次回『十剣失格』
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