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189/200

突入

 一馬は、子供達の顔を見て、頭を撫でていた。

 シャロがそれを優しく見守っている。


「どうしたの? 急に」


「いや、帰ってこなければな、と思ってな」


「それでいいよ」


 シャロは、穏やかな口調で言う。


「世界がどうなろうと、一馬が帰ってこればいい」


「……ありがとう」


 一馬とシャロは、軽く触れるだけのキスをした。

 お互いの愛情が行き来した気がした。


「行ってくる」


「うん、行ってらっしゃい」


 そして、一馬は家から出ていった

 玄関の扉を閉める時、少し躊躇う。

 もう二度と、この玄関の扉を開けることができないような、そんな予感がしたのだ。


(ちょっとネガティブになってるな)


 玄関の扉を慎重に閉める。

 そして、合流地点へと向かった。


 既にメンツは揃っていた。


 結城、新十郎、遥、静流、神楽、斬歌、シアン、瑞希

 全員が一流の腕を持った強者だ。


「まずは刹那さんが先に行って、吸血公の城を退魔滅砕陣で囲んでくれています」


 ざわめきが起きる。


「まずは一馬が行って、全員が移動したらワープ不可能の結界を張ってくれる?」


「わかった」


 シアンが手を差し出し、一馬はそれを握る。

 一瞬で、周囲の景色が変わった。

 薄暗い城の中だ。

 玄関には、確かに術を行使している刹那がいる。


 一馬は、全員の到着を待って、ワープ不可の効力を持った結界を張った。


「まずは一段落、だな」


 結城が淡々とした口調で言う。


「刹那のおかげで邪魔は入らない。つけよう。決着を」


「一馬くん、変わりますよ」


 いつの間にかついてきていた天使が提案する。


「大丈夫なのか?」


「結界の術ぐらい軽いものです」


「転移不可の効果を付与するんだぞ」


「朝飯前ですね」


 そして、天使は結果を張る。

 見事な腕だ。一馬は、結界を解いた。

 シアンが頷く。


「うん、ワープは不可能です。討ち逃す憂いはないでしょう」


「それじゃあ、行くか」


 暗闇の城の中を、十人は歩き出した。



第百八十九話 完



次回『一心』


本日中投稿予定

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