表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

188/200

最後の一人

 一馬は、久々に自領に戻ってきていた。

 それは、ある少女の噂を聞きつけたからだ。

 瑞希。

 森の中で発見された親も知れぬ少女。


 彼女の基礎魔力量は一馬に匹敵し、使う魔術はいかなる敵も屠るという。

 そんな少女がいるのなら、今は一兵でも欲しいところだった。


 久々のホームに辿り着くと、大々が迎え入れてくれた。

 瑞希について訊くと、深刻な顔でこう言った。


「俺は、彼女は神様がつかわしてくれた存在じゃないかと真剣に思うんだ」


「そこまでか」


「ああ。何度か悪魔に襲われているが、彼女のおかげで乗り切れた」


「ルルの力ではなく?」


「ああ。一馬も基礎魔力が高い方だから言っておくけど、ビビるなよ」


 そう言われて、一馬は瑞希と対面した。

 不思議なものを見た気分だった。

 子供とは落ち着きがなく騒がしいものだと思っていた。


 しかし、この少女にはそんな気配微塵もない。

 まるで、波一つない水面のようだ。


「君が、瑞希か?」


「うん」


「実力に自信は?」


「……あなたを待ってた」


 瑞希は、はっきりとした口調で言う。


「この里を守ってくれる存在を派遣してくれれば、代わりに私は魔界へ行く」


「お嬢さん、お嬢さんの実力を確認するほうが先だ」


 瑞希はしばらくぼんやりした表情で考え込んでいたが、一つ頷いた。


「言われてみれば、そうね」


 そう言うと、彼女は白いマントに包まれていた。

 思わず、驚愕する。

 あれは、防御結界を応用して編まれたマントだ。


 そのマントが、一馬に向かって勢い良く伸びた。

 体を横にして避ける。

 そして、マントは一馬目掛けて∪ターンして戻ってきた。

 結界を張り、覇者の剣を抜く。


 結界は一瞬で割れ、覇者の剣とぶつかり合いになった。

 そして、一馬は天を目掛けて宙を舞う。


 マントの先が追いかけてくる。

 その伸び切ったマントの奥にいる少女目掛けて、不可視のブロックを蹴った。


 マントのもう片方の先がいつの間にか戻っている。

 それは不可視のブロックを突き破り、先に延びていた一本と共に前後から一馬を襲った。

 一馬は不条理の力を使いブロックを作り、左へと蹴って移動する。


 地面に着地して、息を呑む。

 天才だ。


 基礎魔力量も化物じみているし、使う魔術も実戦向きだ。


「君の実力は十分にわかった。世界を守る戦い。参加してくれるね」


「里を守ってくれる代理を送ってくれたらね」


「十剣見習いを五人ほど送るよ。それなら不足はないだろう?」


「多少不安だけど、我慢する。ここが歴史の転換点だから」


「瑞希、なにやってんのよ!」


 ルルだった。


「お嬢さんはしばらく借りる。世界の命運をかけた戦いが待ってるんだ」


「じゃあ、私も行く。瑞希を守る程度はできる」


「シャルル。里を守って」


 瑞希は、願いを込めた口調で言う。


「それだけで、私は救われるから」


「でも……」


「お願いね」


 そう言って、瑞希はルルの手を掴んだ。

 ルルは不安げな顔をしていたが、すぐに苦笑した。


「帰ってくるんだよ。二人で」


「ああ。そのつもりだ」


「シャロは大事にしてるんでしょうね?」


「この前寿司を奢ったよ。俺は壁に叩きつけられたが」


「スシ……?」


「今度奢るよ。今度こそ、行く」


 そう言って、一馬は地面を蹴った。

 メンツは、揃った。



第百八十八話 完

今回の更新はここまでとなります。

次回から最終決戦編に移ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ