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意外な編成

「第二席に私が?」


 戸惑うように言ったのは刹那だ。

 図書室で、刹那は本を開いたまま動きを止めている。


「これからは君の退魔の力が戦況を左右する。だから君も退魔の力を磨いていたんだろう?」


 結城の言葉に、刹那は慌てる。


「いや、強力な悪魔が地上に現れたら大変だなと思ってやってただけで」


「しかしそれは見事にパズルピースとしてはまった」


 刹那は黙り込む。


「そもそも、君は実力は十分ある。アピールが足りないんだよ」


「第七席で満足していたもので……八席まで落ちたら流石に焦ったかもしれませんが」


「遥はまだまだ経験不足だ。その点、君はこの仕事を始めて長い」


 刹那は、本を閉じた。


「保留にさせてください」


「ああ、任せた。新十郎が俺を二席にと五月蝿いしな」


「早めに返事をさせていただきます」


「ん、頼む」


 結城は去っていく。


「……自分の背を押すように風が吹いている時ってこんな感じなのかなあ」


 思わず、呟く。


「第二席、か。果たして無力な存在として終わるか、健闘できるか」


 刹那は本を棚に戻して、一つ溜息を吐いた。


「新十郎さんみたいな人なら、健闘するしかないんだよって言うんだろうなあ」


 自分が第二席。未だに夢を見ているような気分の刹那なのだった。




+++



 雪が降り始めた頃、刹那が第二席になるということが大々的に発表された。

 しかし、十剣の中で圧倒的な強さを持っているわけでもなく、最近目覚ましい活躍をしたわけでもない刹那の昇格に人々は首を傾げたようだ。


「やり辛いったらないですよ」


 一馬の家で、刹那は愚痴をこぼす。


「師匠の愚痴も珍しいですね」


 テーブルの向かいに座って、頬杖をつきながら一馬は言う。


「刹那の太刀の開発者は静流だと思ってる人が多いし、退魔滅砕陣の話はあんまり伝わっていないようだし。回復力が強いだけだと思われてるみたいです」


 刹那はそこまで言って、何かに気がついたように苦笑いを浮かべる。


「ま、最後のは事実そうなんですけどね」


「そう自分を卑下することはないですよ」


「そうですかねえ。二席。やはり荷が勝ちすぎている」


「今日は特に要件はない感じで?」


 一馬が問うと、刹那は黙り込んだ。

 そして、真剣な表情で、一馬から視線を逸した。


「届いた、かもしれないんですよ」


「届いた?」


「退魔滅砕陣が、です」


 話が見えない。


「なにに届いたと言うんです?」


「キスクの、本体。悪魔王に」


 一馬は黙り込んだ。

 キスクの本体。真なる悪魔。台座の外から中を操作しようとするイレギュラー。


「小さな火傷ぐらいの傷かもしれません。けど、退魔滅砕陣の力を追っていくと、違った存在に行き着いたような感触があった」


「つまり、キスクを倒す方法はある?」


「あなたも覚えますか? 退魔滅砕陣」


「俺は回復のスキルを覚えていないからなあ。結界と断界に全振りです」


「では、どうします? 私は退魔滅砕陣を磨いていこうと思います」


「……なにか手はないか、考えてみます」


「そうですね。異世界から来たあなたなら、また私達と違った発想ができるでしょう」


「お茶できましたよー」


 そう言ってシャロがやってくる。

 刹那も、一馬も、一先ず話を中断した。



第百八十二話 完

次回『弟子』


本日18時頃投稿予定


金2話土2話日3話で更新する予定です。

決戦直前を描いていきます。

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