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七公会議

「相変わらず集まりが悪いな」


 そうぼやくのは鬼人公斬歌だ。

 椅子に座り、足をテーブルの上で組んでいる。その腕は細身だが筋肉質で、腰には二本の刀がある。頭には一本の角が生えていた。


「まあ魔物に協調性を求めるのがそもそも無理というもの」


 そう夜に溶けるような声で言うのは不死公リゼルドだ。骨に王冠とマントを着せたような格好で、側頭部には大きな穴がある。


「龍公に至ってはこっちを小馬鹿にしてるからなあ」


「で、なんの用かね、斬歌」


 そう、狼公マーナガルムが言う。巨大な狼の外見で、舌で手を濡らしては顔を洗っている。


「吸血公ブラドが討たれた」


 斬歌が淡々とした口調で言う。


「今、ブラド領では跡継ぎ決めでてんやわんやだ」


 そう言って斬歌は肩をすくめる。


「十剣か?」


 リゼルドが低い声で言う。


「いや。それが、十剣の弟子らしい」


「ほう」


「新たな十剣候補か……」


 マーナガルムが陰鬱な声で言う。


「吸血公の跡継ぎ候補の意見としては仇討ちを念頭に置いている者が多い。しかし、十剣の怒りを買うのは我々の望むところではあるまい。もちろん十剣側も我々とはことを構えたくなかろうがな」


 沈黙が漂う。

 リゼルドも、マーナガルムも、十剣を相手にしたくないという思いがある。


「その十剣の弟子の腕。試してみてもかまわんかな」


 そう、マーナガルムが言う。


「本当に十剣に届き得るのか。ブラド公は人を軽く見ている節があった。足元をすくわれただけではないかという懸念がある」


「あんたが出るのかね」


 斬歌は戸惑うように言う。


「いや、私の息子二匹にやらせよう。元々後継者問題で悩まされていたところだ。その十剣の弟子の腕を確認してきた方を、正式な後継者としよう」


「ふむ」


「異論はないかな」


 斬歌の言葉に、返事はない。


「では、息子達に人間界に行く準備をさせようとしよう」


 そう言って、マーナガルムは駆けていった。

 斬歌はその背後を見送る。


「十剣だけでも厄介だと言うのにその後継者も育ちつつある。我々が人間界に進出できぬわけよな」


 斬歌はぼやくように言う。


「怪しい芽は早めに摘むに限る」


 リゼルドが言う。

 漆黒の闇のような沈黙が漂い、二人の姿もその場から消えた。



第十八話 完



次回『サランの町』

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