十剣と六公
玉座の間に、六公が並び立った。
シアンも今は、竜人モードになっている。
舐められまい、としているのだろう。
そんなシアンの考えが手に取るようによめて、一馬は苦笑した。
一馬が何故この場にいるかというと、護衛だ。
結城一人だけで六公を相手取るのは不可能だと皇帝は判断したのだ。
結城の他に、八葉もこの場にいる。今では、帝都十剣の衣装を身につけている。
「久しいな、皇帝殿」
リゼルドが玉座に座った皇帝に言う。
「うむ、久しぶりだな、不死公」
「この度、死者が邪法の剣を使って暴れたという報告が入った。そこで、契約に従い事態解決のためにまいった次第だ」
「遠路はるばる申し訳ない。しかし、敵はまたいつ現れるかわからない。迅速に割り振りを決めていこうと思う」
「同感だ。出る杭は早めに打つに限る」
「十剣と六公の者で組んでいくのが最適だと私は思うのだが」
「そうだな。どんな相性の者が出てこようとも即座に対応できよう」
「私はリゼルドさんと組みますよ」
八葉の言葉に、皇帝は一瞬硬直した。
「ほう、そなたは……私の時代の勇者の面差しがある」
「血を引いていますからね。かなり薄まってはいますが」
「面白い。仇敵の子孫と組む。そんな日が来るのも面白い」
皇帝は二人のやり取りを聞きながら頭をフル回転させていたようだが、そのうち一つ息を吐いた。
「リゼルド殿。不肖の娘だがお任せできるだろうか」
「引き受けよう。ただし、数百年前が最盛期だった私が力になれるかは怪しいが」
「なにを言われます」
八葉は面白がるように言う。
「凄い魔力だ」
不死公は苦笑した。
シアンは結城と組むことになった。
シアンの瞬間移動で何処にでも結城を送り込めるという戦術だ。
そして、一馬と組むのは、鬼人公斬歌。
一馬は、斬歌に抱いている苦手意識をぐっと飲み込んだ。
本気を出したらどちらが強いかやってみないか?
この男はそんな提案をしてくる可能性がある。
しかし、今回はそんな場合ではないのだ。
その他の組み合わせも順当に決まり、帝都とその周辺を見回る配置が構成された。
そこは流石六公なだけあって、簡単に決まった。
一馬が任されたのは西。
違和感があれば即座にその村に駆けつける。そんな覚悟が必要だった。
第百七十八話 完
次回『青い空が見たい』
十二時頃投稿予定
本日は三話投稿と予告していましたが四話投稿になりそうです。




