刹那の危機
刀と刀を素直にぶつけてはならない相手というのは多数存在する。
刀は簡単に刃こぼれするし、曲がるし、最悪折れる。
だから、受け流す技量が必要となってくる。
今回もそのケースのようだ。
刹那は振られる剣を受け流し続ける。
反撃のタイミングは見えない。
しかし、意味はある。
こうしている間にも避難が進み、異変を察した結城や一馬が駆けつけてくるだろうからだ。
刹那は防御一辺倒の剣技をふるい続ける。
こうなると刹那は強い。
自分についた傷は強力な治療魔術で治し、大抵の攻撃はほとんど受け流す。
防御能力では十剣でも一、二を争うだろう。
その安定感と常人を遥かに凌駕する治癒能力が刹那の十剣たる所以だ。
相手の息が切れてきた。
隙が、見えた。
剣を大きく弾いて、相手をのけぞらせる。
そして、踏み出す足に不条理の力を集中し、突進した。
放たれる刹那の太刀。
神速の居合は相手の首を落とした。
そして、相手の体は倒れ、頭は地面に落ちた。
相手の背後に刹那は着地する。
(なんだったんだろう……)
なにが彼を殺人鬼に変えたのか。それは刹那にはわからない。
調べろ、と言われたら厄介だなあと思う。
その時、刹那はかすかな音を聞いて振り返った。
殺人鬼の首がくっつき、敵の剣が刹那の肺に突き刺さっていた。
後退して、治癒呪文を唱える。
首が、くっついた? 自然に?
そこで、刹那ははっとして、ある手段を用いることにした。
「ターンアンデッド!」
地面に手を当てると、そこから青い魔法陣が放たれる。
それは帝都を包み、殺人鬼も成仏させた。
殺人鬼は倒れ、剣が落ちる。
刹那は血を吐きながら、治療呪文を唱え続けた。
そして、ふと気がつく。三人の血を吸った剣が消えていることに。
第百七十五話 完
次回『犯人は誰だ?』
本日も三話投稿します。
次回は十二時頃投稿予定。




