破裂
帝都十剣第三席、遥は、玉座の間の右側のテラスを守っていた。
天使を名乗る存在に、城が危ないと予言されたのだ。
予想外にもその予言は当たっていた。
駆けつけた遥は、辛うじてその場に間に合った。
悪魔が二匹、遥の前に躍り出る。
遥はその鋭い爪の突きを避けつつ、一匹に居合を放った。
「飛燕、三式!」
一本の黒い影が床を進んでいく。
それが魔力の壁を貫いて悪魔の影を貫いた時、その背中から沢山の鳥の影が溢れ出るように舞い出ていった。
凝縮と破裂。飛燕三式には二つの段階がある。
一つは、凝縮した高密度の刃としての段階。この高密度の刃は大抵の敵の内部までを貫くことができる。
二つは、本来の飛燕の姿に戻って敵の内部を食い破る段階。
この殺傷能力の高い新たな飛燕を、遥は習得していた。
もう一体の悪魔は、怯えるようにその場から消えてしまった。
(私の役目はここを守ること)
そう、言い聞かせるように遥は心の中で呟く。
(一馬、静流、他は頼むよ)
祈るように、遥はそう心の中で呟いた。
+++
静流は宙を駆けていた。
空中に見えないブロックを作り、それを次々に踏み越えていく。
その目が、敵を補足した。
足に魔力と不条理の力を混ぜ合わせて凝縮する。
それが、爆発的な推進力を生んだ。
「刹那の太刀!」
悪魔の魔力の壁が阻もうとしたが、静流に対してその効果は薄い。
三匹の悪魔が真っ二つになって地上に落ちていった。
そして、静流は見えないブロックに着地して、再び刹那の太刀を放つ。
静流は空中を折れ線状に駆けながら、多数の悪魔を斬り殺した。
そのうち、敵の姿は見えなくなった。
「勇者顔負けだな」
城に入ると、一馬が苦笑顔で言う。
「内部に入ってきた奴はいないだわさか?」
「ああ、それなら俺が斬った」
静流は思わず黙り込む。
しばらく前にはなかった凄みが、一馬から感じられる。
「お互い、いい修行をつんだようだわさね」
「そうさな」
そう言って、二人は拳と拳をぶつけあわせた。
第百六十話 完
次回『語りべ』
本日の更新はここまでです。明日も三話投稿します。




