七公の登場
結界を張った男は穴の中に戻っていってしまった。
代わりに、次々とギガス部隊が現れる。
「お前の相手はあきたよ!」
そう言って、一馬は高々と跳躍する。
そちらに視線を向けたギガスの腹部を、刹那が真っ二つにした。
「久々のコンビですね」
「ですね、師匠」
一馬は刹那に背中を預けて周囲を見る。
まだ、五十体も敵は出てきていない。
結界内に入った仲間は一騎当千の強者ばかり。
戦況は優勢だった。
ここまでは結城の計算通りだろう。
一馬はあらためて結城に感心した。
計算が狂ったのは、ギガス部隊殲滅の後だ。
鬼人部隊が現れたのだ。
「鬼人がここまで……?」
刹那が戸惑うように言う。
鬼人は十体や二十体ではなかった。百はいるだろう。
ギガスと違って穴から出る動作も俊敏だ。
結城が一馬と刹那に背をぶつけた。
「俺はまだ自分が敗者だとは認めてないぞ!」
結城が猛々しく言う。
「俺もです!」
一馬が叫んで返す。
「鬼人は、近接技術千を軽く超えてきます。背中を取られると厳しい」
刹那が静かな口調で言う。
「皆! 背中合わせで戦うんだ! 敵に背を見せるな!」
結城が叫び、応じる声が上がる。
その時、八本の彗星が勢い良く結界の中を飛び回った。
鬼人部隊はそれに喉笛を斬られて倒れた。
「ん、なんか言ったか?」
新十郎が言う。
彼の必殺技、八撃彗星だ。
「馬鹿野郎とよくやったって言ったんだよ」
結城は苦笑交じりに言う。
八本の剣は、新十郎の周囲で浮いている。
予想外のことが起きたのは、この後だった。
結界の外、背後の味方の軍勢の前に、大きな穴が開いた。
そこから、魔族公ギルドラが魔力をほとばしらせながら現れたのだった。
第百四十四話 完
次回『ギルドラ』
トラブルがなければ明日投稿します。




