解決
第七公妃セレンは、キシャラに呼び出されていた。
玉座の間で二人は対峙する。
「美雪に放たれた暗殺者が処理されたそうだ」
「それはめでたいですね」
「お前だな、セレン」
キシャラは、氷のように冷たい目をしていた。
「誤解です。私がキシャラ様が愛する人間に刃を向けるわけがありません」
キシャラは小さな少し厚い板を取り出し、数度撫でた。
「セレン様、無理です。龍公や勇者が相手側についている。付け入る隙がありません」
板から声が流れ始めた。
「なら、あなたの家族が犠牲になるだけです」
それは紛れもなくセレンの声だ。
「お許し下さいセレン様。刺し違えてでも美雪殿を倒してみせます」
「よろしい。活躍に期待します」
セレンは、スカートを握りしめた。
よもや、会話を記録されていようとは。
「セレンよ。領内からの追放を命ずる」
「……は、閣下」
そう言った瞬間、セレンはキシャラに駆け出していた。
手には服に隠して持ってきたナイフがある。
キシャラは、避けなかった。
ナイフがキシャラの腹部に吸い込まれていく。
「何故、避けられなかったのですか、キシャラ様」
「……避けれんさ。お前があんな真剣な顔をしていたらな」
「キシャラ様を殺して、私も死にます」
「そこまで、愛は深いか」
キシャラはセレンの手を取って、ナイフを引き抜いた。
傷口は魔力で回復されていく。
「城外に家を建てよう。お前だけの家だ。私もたまに訪れよう。その時は私達はありきたりな普通の夫婦となり、お前は敬語を使わずに私に話しかけ、時に叱ってもいい」
セレンの瞳に、涙が浮かぶ。
「だから、もうくだらぬことなど考えるな」
そう言って、キシャラはセレンの唇にキスをした。
セレンは、緊張の糸が切れたかのように座り込む。そのうち、彼女の泣き声が部屋に響き始めた。
こうして、セレンの暗躍は終わりを迎えたのだった。
第百三十七話 完
次回『勇者対龍公』




