表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

122/200

技の正体

 一馬は起き上がる。

 敵の目の前で寝転がる。そんなの、死を許容しているようなものだ。


 しかし、背中に電流が走ったような痛みを感じ、一馬は呻いた。


(背骨は……大丈夫。動ける。ただ、左手は……)


 左腕は、動かすだけで激痛が走った。

 全力を振り絞って右腕一本で覇者の剣を構える。

 敵は上空、のはずだった。


「私はあなたを殺す」


 耳元から声がした。

 上空へと飛ぶ。


「だから、あなたも私を殺しなさい!」


 やはり、震えるような声だった。


「シアン!」


 一馬は叫ぶ。


「俺達、友達だろ?」


 シアンが動きを止めた。


「この戦争、無駄な犠牲がたくさん出た。ドラゴンにも、人間にも。本当なら、来年を迎え、穏やかに暮らしていく命だ」


 一馬は、思いを込めて言う。


「俺達で、終わらせることはできないんだろうか」


「無理よ」


 シアンは再び姿を消す。


(わかってきた……!)


 一馬は目を閉じる。

 そして、左側面に現れたシアンに斬りかかった。

 目を開くと、シアンは驚愕したように剣を避けていた。

 そのまま、追撃を加える。

 覇者の剣とシアンの拳がぶつかりあった。


 そして、シアンは再び消える。

 一馬は再び目を閉じる。

 背後だ。

 上空へ飛び、剣を振り下ろす。


「斬岩一光!」


 一馬の一撃が、シアンの羽を断った。

 シアンは地面へと落ちていく。剣を離すと、その手を、一馬は掴んだ。


「お前の能力はわかった。瞬間移動だな」


「空間移動。私の術は世界をも移動する」


「細かいことはいい。飛べなければ勝てまい。俺の勝ちだ」


「そうかしら」


 その瞬間、シアンの腕から鱗が剥がれ落ちた。

 鱗はまるで意志を持ったように、一馬に襲いかかった。

 シアンの手を思わず離す。


 そして、不条理の力で作ったブロックで空中を移動した。

 鱗は追ってくる。

 剣を落としたのは悪手だった。


 慌てて、覇者の剣へと接近する。

 慌てたのがいけなかった。地上にはシアンがいる。

 上空へと跳躍したシアンと、目があった。


「終わりよ」


「そうかな!」


 威勢よく叫んだのはシアンでも一馬でもなかった。

 回転する八本の剣が一馬を守るように現れた。


 シアンは剣を蹴って地面へと落下する。

 そして、一馬は覇者の剣を握った。


「新十郎さん!」


「久しいなあ一馬」


 帝都十剣元三席。来須新十郎がその場に現れていた。


「私も忘れないでね」


 そう言って、元二席、あやめが一馬の治癒を開始する。


「刹那ほど上手くないからこの短時間じゃ気休めにしかならないとは思うけど」


「王妃やってたんじゃ?」


「あんまりにも旦那が聞き分け悪いから抜け出してきちゃった」


 そう言って、あやめは悪戯っぽく笑った。



百二十二話 完

次回『龍公ゼラード』


今週の更新はここまでです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ