表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

119/200

大地からの雨

「なあ、遥は不条理の力を使ってたんだよな?」


 夕食の鶏肉を片手に一馬が問う。


「ええ、そうよ」


 遥は食べるのを一時やめ、答える。


「じゃあ、なんで斬れなかったんだ? 不条理の剣はいかなる硬度も覆す剣だろ? 相手の剣を折れないのも前々から疑問に思ってたんだよな」


「それは簡単だわさ」


 静流が手に持った鶏肉を振る。


「魔力が不条理の力を阻害しているんだわさ」


「魔力が……?」


「魔物には生まれつき魔力を纏っている種が多い。人間より強いレベルでね。それが不条理の力を邪魔するだわさ」


 つまり似たような性質の力が二つあって、効果を相殺しあっているということか。


「覇者の剣は例外か?」


 そう言って、一馬は愛剣に触れる。


「光の属性……魔族への特攻効果を感じるけど、相手の魔力次第では抑え込まれると思うだわさ」


「なるほどなあ」


「明日は次の三竜神を処理する。戦闘はないだろうけど、しっかり休むだわさ」


「わかったよ」


 こうして、今日も夜は更けていく。



+++



 不動は土の塊の前で、それを包むかのように両手を前方に差し出していた。

 顔色は悪い。


「キュアー」


 刹那が呟くように言う。その途端に、不動の顔に生気が満ちた。


「助かっている。短足猫に相棒を変えて回復専門役になればどうだ?」


 不動の提案に、刹那は困ったように苦笑した。


「生憎、今の相棒も気に入ってるから。それに、この子はこの子で色々な能力を持っている」


「そうだったな」


 不動は黙って、土の塊に手を差し出し続ける。


「封印はもちそうですか?」


「三竜神の一角が堕ちた」


「聞いてます。一馬達が倒したと」


 刹那はそこで言葉を切り、苦笑する。


「まさかあのデコボコトリオがここまで成長するとは思わなかったな」


「お前には刹那の太刀があるだろう」


「まあ、皆揃ってレベルアップしてるってことですかね」


「一馬の伸びは異常だ。まるで創造主が、この世を守るために作ったかのような」


「まあ、勇者ですからね」


 土の塊が動いた。不動は顔をしかめて、手に力を込める。

 それきり、土の塊はまた動かなくなった。


「早くこないですかね」


「その時が始まりか終わりか俺には予想しかねるがな」


 気難しい人と有名な不動だが、噂は本当だなとあらためて刹那は思う。


「さて、彼らはどこでなにをしているやら」


 沈黙が場に漂った。

 刹那もわかっている。とどめを刺す力を持っていないことに二人して歯がゆく思っていることを。



+++



 時間は少し遡る。

 不動の守るエリアにも、大量のドラゴンと一体の三竜神が現れていた。


 大地から土の矢が一斉に放たれドラゴンの頭を的確に破壊していく。

 不動だった。


「へえ。土属性の魔法か。工事にしか使われないと思っていたよ」


 三竜神の一体。鎧に身を包み、羽と尻尾を生やした男が言う。


「大地から降る雨を見たことはあるか?」


 不動は問う。

 戸惑えば戸惑ってくれるほどいい。

 目的は、相手の臨戦態勢に隙を作ることだ。


「生憎、見たことないな」


「見せてやるよ」


 そう言った瞬間、大地から雨のように土の粒が空へと飛んでいった。

 それは、三竜神の一体を包んで、完全に封印した。

 内部に凶悪な猛獣を捕らえた土が地面に落ちる。


 刹那の協力を帝都に乞うたのはそれからすぐのことだった。




第百十九話 完

次回『三竜神 マリン』


更新日となります。

三竜神との連戦となります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ