表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

111/200

三年の時間

 異世界に入ると、そこは巨大な岩の前だった。粉々になっていたのを誰かが修復したらしい。

 そして、殺気を感じて、一馬は振り返った。

 空に龍が五匹飛んでいる。


 五匹の龍は一馬の登場に戸惑ったようだが、すぐに口から炎を吐き出し始めた。

 それを、結界で防ぐ。


 そして、覇者の剣を鞘から抜いた。

 その刀身から光刃が飛び、龍達を消滅させた。


「死ぬかと思ったよ」


 そう言って建物の影から出てきたのは大々だ。


「どういうことだよ。ドラゴンがこんな位置まで飛んできてるって」


「今、龍公と帝国の決戦の最中なんだ。十剣も各地に散って、それぞれ敵を相手取っている。実力のある戦士は一人でもいたほうがいい」


「結界新しくはるとかいう話が出ていなかったっけ」


 一馬が金塊を取りに来た時に、そんな話があったはずだ。


「破られた」


「なんつーか本当ポンコツだな」


 一馬は呆れ混じりに言う。


「とりあえず結城さんに挨拶してこようと思う。あの人は帝都だろう」


「俺達の村を守ってはもらえんか」


「ん? 遥と静流がいるだろう?」


「状況は変わったんだ。遥さんも静流さんももうおいそれと呼べる存在じゃない」


「なにがあったか簡潔に頼む」


「それはな……」


「やっぱり、いただわさ」


 会話に乱入する者がいた。

 気配がまったくなかった。なんて使い手だ。

 しかし、その語尾にはどこか聞き慣れた響きがあった。


 声のした方を向くと、赤い上着を胸前の黄色い紐で止めた女性剣士の姿があった。

 十剣の制服。

 しかし、彼女はどう見ても静流だった。


「……え? なにその服。コスプレ?」


「コス……? 移動しながら話すだわさ。今、帝国は滅亡の危機にある」


 そう言って、静流は宙を蹴っていった。

 速い。

 一馬は慌てて大々を背負って、後をついていった。

 全速力を出して追いつく。


「その様子じゃ訓練はサボってたみたいだわさね」


「最低限はやってた。それ以上にお前が伸びたんだ」


「そうかもしれないだわさね。なにせ、三年が経っているんだから」


 三年。

 努力が実を結ぶには十分な時間だ。

 今、静流と戦ったら勝てるだろうか。

 そんなことを思いながら、一馬は駆け続けた。


「まずは、一度に数ヶ所の結界が破られたことから悪夢は始まった……」


 静流は複雑気な表情で語り始めた。

 その時のことだった。

 前方に龍が二十数匹いる。


 待っていたかのように。

 いや、待っていたのだ。

 一馬の帰りを知っていたかのように。


「ここは私に任せて」


 そう言って、静流は鞘から剣を抜いた。

 その次の瞬間、黒い影が龍達を一斉に覆った。

 そして、龍達は肉片になって地面へと落ちていった。


「なんだ。あいつもあんたが来るのを待ちきれなかったみたいだわさ」


 そう言って、静流は空中で立ち止まる。

 一馬も、つられて空中に作ったブロックに立ち止まった。


「今のは?」


「飛燕・改。飛燕の攻撃範囲を大幅に強化した必殺技よ」


「ってことは……」


 一馬は大声を出した。


「遥か? 今の!」


「なめないほうがいいだわさよ。遥はスピカさんに弟子入りして死線を彷徨うような修行をこなした。今の彼女は、もう昔の彼女じゃない」


 一馬は、息を呑んだ。

 昔の仲間達の成長に、驚かされるばかりだった。



第百十一話 完

次回『超えるべき壁』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ