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魔王、極悪国家の領主令息に転生す。~闇魔法で人族を支配するつもりが、名君扱いされる~  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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第8話 平和ボケした盗賊


「止まれ。なんだてめえらは?」


「おいおい、なんでこんなところに修道女がいるんだ?」


 盗賊の拠点へ正面からミラと共に進んでいく。


 ふむ、目の前の人族は人相も悪く、どう見ても善人には見えない。こんな場所に見張りを置いていることだし、盗賊で間違いないだろう。


「おいおい、めちゃくちゃいい女じゃねえかよ!」


「ひゅう~、もしかして親分が俺たちのために手配してくれたんじゃねえか?」


「なるほど、そうにちげえねえ!」


 見張りの2人はまったく警戒することなくミラの方へ近寄ってくる。まあ、子供の姿の我と女性のミラ2人ではこの拠点を潰そうとここまで来たとは思いもよらぬだろう。


「へっへっへ、たっぷりと可愛がって……ぎゃあ!」


 見張りの男のひとりがミラの方へ手を伸ばし、我がその汚い手を斬り落とそうとしたところで、洞窟の中からナイフが投擲され、その男の肩を貫いた。


 そしてそのナイフを投げたと思われる無精ひげを生やした男が出てきた。


「この馬鹿野郎が、ちゃんと相手を見やがれ! 部下の躾がなってなくてすみませんねえ、ゼノンお坊ちゃま。こいつはきっちりとしめておきますんで、どうかご容赦を」


 先ほど見張りのうちのひとりが洞窟の中に入っていったが、どうやら仲間を呼びに行っていたようだ。無精ひげの男の他にも10人ほどの仲間が姿を現した。


 そして我の記憶にはないが、この男は我のことを知っているらしい。


「我々は契約が続く限り、カルヴァドス家の者に手を出す気はごぜいませんので、これからもお互いうまくやっていきましょう。それでゼノンお坊ちゃま、今日は使いの者もいないのに一体どうしてこんなところへ?」


 口調は軽いが、先ほどの見張り2人とは異なり、武器に手をかけ我らに対して最大限の警戒をしているようだ。


 ふむ、武器や防具なども見張りよりもまともな物だし、多少はまともな相手のようだ。


 面倒な問答をするつもりはない。さっさと終わらせるとしよう。


呪詛の弾丸(カースバレット)


「なっ、いきなり何を!?」


 我が闇魔法を発動させると、我の周囲に数十の漆黒の球体が浮かび上がる。


 無精ひげの男はすぐに戦闘態勢をとるが、他の愚鈍な盗賊どもはまだ状況がわかっていないらしい。捕まる心配がなく平和ボケした盗賊団などこんなものか。


「ぎゃああああ!」


「な、なんだこりゃ!?」


「痛え、痛えよおお!」


 呪詛の弾丸が全方位に射出され、洞窟の外へ出てきた盗賊たちを撃ち抜いていく。


「ふむ、やはり速度と威力がだいぶ落ちているようだな。本来の力であれば、こいつら程度なら一瞬で塵にできたものだが……」


「お、俺の足が!?」


「があああ……なんだ、この痛みは!?」


 昨日牢屋で試した時と同様に、威力は落ちたが呪詛の弾丸の効果はしっかりと発動している。


 呪詛の弾丸はそれほど強力な闇魔法ではないが、この魔法を受けた者の肉体が朽ち果てる呪いを付与する。本来であれば普通の人族程度、この魔法を受けただけですぐに動けなくなったのだがな。


「や、闇魔法だと!? てめえ、ゼノンじゃねえのか!」


 呪詛の弾丸を回避した無精ひげの男は今の攻撃が闇魔法であると察したようだ。


 昨日よりはまともな実験ができそうでほっとしたぞ。


「我はゼノンである。貴様らとの契約は現時点をもって破棄する。貴様らには我の闇魔法の実験台になってもらおう!」


「契約を破るってのか! こんなことをしてただで済むと思うなよ! 俺たちが本気で動けばあんなチンケな領地なんて――」


「御託はいいからさっさとかかってこい。それとも、このまま黙って死ぬか? 『魂の収奪(ソウルドレイン)』、『葬送の闇鎌(ブリアルサイス)』」


 盗賊との契約など守る価値もない。


 この身体の戦闘能力や奈落の暴食の効果を試すため、我の糧となることを光栄に思うがいい。


「っ!? てめえら、やっちまえ!」


「野郎、ぶっ殺してやる!」


「死にやがれ!」


 残っていた盗賊どもが一斉に武器を持って我へと襲い掛かってくる。


「ぎゃああああ!」


「腕が、俺の腕がああ!」


 攻撃を避けつつ、すれ違い様に葬送の闇鎌を振るうと盗賊どもの首や四肢が宙へ舞う。


「……ふむ、やはり以前とは異なるな」


 魂の収奪の効果によって周囲の者からエネルギーを吸い上げて自身を強化しているのだが、体格がだいぶ小さくなったことで、身体の動かし方が以前とは違う。まあ、このレベルの相手であればまったく問題ないが。


「さすがゼノン様です!」


「ちくしょう、こっちの女には攻撃がまったく通らねえ!」


 ミラの方を襲おうとした盗賊もいたが、周囲に聖魔法による障壁を作り出して攻撃を防いでいる。ミラには手を出さぬよう事前に伝えているが、あちらは気にせずとも問題ないようだな。


「なんてガキだ! おい、こいつをただのガキと思うな、全力でいくぞ!」


「お、おう!」


 無精ひげの男が指示を出すと、まだ残っていた盗賊どもが男の周りへと集まった。


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