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魔王、極悪国家の領主令息に転生す。~闇魔法で人族を支配するつもりが、名君扱いされる~  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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第4話 所有物となった領地


「初夜税? なんだそれは?」


「ゼ、ゼノン様! 初夜税というのはですね……」


 ミラが少し顔を赤くしながら初夜税の説明をする。


「……なるほど、実にくだらん」


 繁殖行動に初めても何もなかろう。そんなものを税として取るとは人族はよくわからなんな。


 だが、人族の身体に転生してひとつ気になることがある。


「ミラ、こっちに来てくれ」


「はい、なんでしょうか? ……ひゃん!?」


「ふむ……」


 近くに寄ったミラの大きな乳房に触れる。柔らかい感触が手のひらに伝わるが、特にそれ以外は感じない。


「どうやらこの身体はまだ未熟なようだ。一度この身体で人族の繁殖行為とやらを試してみてもよかったのだがな」


「そ、それは残念でございます。……もしもゼノン様が成熟した暁にはぜひ私をお使いくださいませ!」


「う、うむ。考えておこう……」


「はい! くふふふ……」


 ミラがよく分からない笑みを浮かべながら我に迫ってくる。謎の圧がすごい……。


 我が魔王であった頃は人族との争いでそんな状況ではなかったからな。そもそもミラとは我と身体の大きさが違いすぎて、抱くことなど物理的にできなかったものだが。


「貴様らは不要だ。そのような税もいらん。今日の出来事を口外しない契約を結べば、そのあとは勝手にするがよい」


「は、はい!」


「ゼノン様、本当にありがとうございます!」


 本当にダレアスという男はクズであるな。いろいろと考えなければならぬことが多そうだ。




魂魄の契約(ソウルコントラクト)!」


「うっ!?」


 契約の闇魔法が発動すると我と使用人の男の胸にお互いを縛る黒い鎖が繋がり、そのまま見えなくなる。これで屋敷にいたすべての者との契約が完了した。


 これで契約をした者が我に害を与える行動はできなくなり、ダレアスを殺したことも漏れることはないだろう。


「ユルグ、さっさと連れていってやれ」


「か、かしこまりました」


「ゼノン様、ありがとうございます!」


「感謝しております!」


 ユルグの案内でダレアスが人質として軟禁していた者を解放しにいく。どうやらこの屋敷とは別の場所に集められて作業をさせられているようだ。


「さて、これでどうなる? 『奈落の暴食(アビスグラトニー)』」


 ダレアスと同様に長髪の男の身体が闇の霧へと沈んでいく。


「……ふむ、力は戻ったが、先ほどよりも遥かに少ない力だ」


「呑み込んだ者によって変わるのかもしれませんね」


「そうであるな。この屋敷の者とは契約を交わしたゆえ、他の者で試してみるとするか」


 少なくとも死体を呑み込めば力が戻ることは確定のようだ。どのような者を呑み込めばより力が戻るのかは検証していく必要がある。




「ゼノン様、仰せの通りにいたしました」


「うむ、ご苦労であったな」


 ここはダレアスが使用していた部屋で、豪華な装飾が施された美術品などが飾ってある。人族というのはこういった煌びやかなものが好きなようだな。後ほど我好みの内装に変更するとしよう。


 ミラと共にこの時代の現状の把握をしていると、ユルグが指示した通り、ダレアスに捕らえられていた使用人たちの家族や大切な者たちを解放してきたようだ。


「……ゼノン様。先ほど仰っていましたが、死んで生まれ変わったとはどういうことなのでしょうか? そしてその女性は何者なのでしょう?」


 ユルグは我が祝福の儀で闇魔法を得たことや牢屋でボロボロにされていたことを知っていた。その状態のゼノンがなぜ傷ひとつないのか、性格が変わりきってしまったことが先の説明では納得できないらしい。


「言葉の通り、我は一度ダレアスに殺されかけた。秘密裏に配下としていたミラのおかげで助かったのだ。それと闇魔法の影響で、これまでの考え方もだいぶ変わってしまったらしい。だが、我が8歳の頃に木から落ちた時、ユルグが救ってくれたことも覚えているぞ」


「っ!? 確かにゼノン様本人のようですね……」


 正しくはゼノンの記憶があるだけだがな。不愉快ではあるが、ゼノンの元々の喋り方も我と似たようなものだったため、言葉遣いに関しては変に思われてはいないようだ。


「ユルグ、まずはこの領地の状況について聞かせろ」


「は、はい」


 ユルグには我が同胞である魔族のことについて聞きたいのだが、いきなりそのことを聞くのは怪しまれるか。どちらにせよ、この領地は我が所有物となった。この人族の世界をどうするかは置いておいて、現在の状況について可能な限り把握しておきたい。




「……よくもまあこれほど無駄な税を絞り取っていたものだ」


「これでは搾取するというよりも領民を虐殺しているだけですね」


「税収というものは生かさず殺さず搾取するのが基本であるが、これではミラの言う通りただ殺すだけであるな」


 税収についてはそれほど詳しくない我であっても理不尽なことがよく分かる。


 このカルヴァドス領は我が領地となり、我が所有物となった。たとえ人族であっても、無駄に我が所有物が減るのを指をくわえて見ている必要はない。


「ユルグ、初夜税などの不要な税金はすべてなくせ。美術品や装飾品など屋敷の維持費もいらん。そんな金があるのなら、領地のために使え」


「よ、よろしいのでしょうか?」


「必要な物は我自身の力で手に入れる。ダレアスという愚か者のせいでこの領地の民は疲弊しきっている。まずは税収を減らしてまともな生活ができるようになってから、今まで以上に搾り取ればよい」


「……なるほど。領民全体の生活水準を上げれば、これまで以上の税収でも負担にならないというわけでございますね。すばらしいお考えです! すぐにそのように手配いたします」


「ふむ? まあ、そういうことだ」


 別にそういったつもりではなかったが、我としては今後税がより多くなるのならばそれでいい。


「それにしてもこの領地の防衛費が高すぎるぞ。なぜこれほどの大金が必要なんだ?」


「……実はそちらの防衛費というのは表向きでありまして……正確に言えば、()()()との契約金と言った方が正しいかもしれません」


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