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魔王、極悪国家の領主令息に転生す。~闇魔法で人族を支配するつもりが、名君扱いされる~  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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第20話 虚無の幻獄


「よし、大きな怪我などはないようだな」


「は、はい!」


 公開処刑場の一番上にある部屋。そこにはひとりの魔族の少女が捕らえられていた。両手両足を強固な鎖によって拘束されていたようだが、今の我の力であればこれを外すことなど容易である。


 全身ボロボロでところどころに青あざが見られるが、命に関わる大きな怪我はないようだ。それにしてもこの少女……いや、それは今考えることではないか。


「あ、あの、どうして私たちを……」


「理由はあとで説明するが、我はそなたたちの味方だ。これまでよく耐えてくれたな。安心しろ、そなたたちは我が必ず守る!」


「う……うう……」


 少女の両目からは大粒の涙がぽろぽろと零れた。


 隠れ集落を襲われ、仲間と共に捕らえられ、幼いながらもこれまで殺されるという恐怖と必死に戦っていたのだろう。襲われた集落の同胞たちを助けることはできなかったが、せめてここにいる者たちは必ず守ってみせる!


「き、貴様はいったい何者だ! なぜ魔族などを助けようとする!」


 5人の武装した兵士たちに囲まれているでっぷりと肥えて太りきった男。ダスクレア領の領主であるこの者の名はザイラス=ダスクレア。ゼノンの記憶によると何度か上流貴族の集まるパーティで直接会ったことがある。


「その者たちは我の大切な同胞だ。我が同胞を随分と弄んでくれたようだな。楽に死ねると思うなよ」


 グリフォンの背に乗り、ミラの聖魔法による回復魔法で体力を回復させながらひたすらにこのダスクレア領まで飛ばして今日の朝にこの地へ到着した。すぐに同胞を助けるために情報を集めたが、処刑時間のギリギリとなってしまった。


 わざわざ民衆の前で残虐な処刑方法を用意していたようだし、人族も非道なことをする。前世で人族と戦争をしていたころは兵の士気を上げるために互いに捕らえた敵軍を処刑することはあったが、ここまではしなかった。


 あの妙に真面目な勇者がいればこんな非道な行為は許さなかったであろうな。魔族との戦争がなくなったこの50年の間に随分と堕ちたものだ。


「魔族の同胞だと……。闇魔法を使う貴様はいったい……」


「……ザイラス様、この者の姿は現在見えているものではないようです! おそらく幻影魔法の類かと」


「なに!?」


「ほう、多少は腕の立つ者もいるようだな」


 今の我の姿は虚無の幻獄(ヴォイドファントム)によって見せている幻だ。他の者はまったく気付いていなかったようだが、どうやらここにいる護衛はそれよりも多少はマシらしい。


 カルヴァドス領の領主である我が魔族に与しているとバレるとまずいので変装の代わりだ。いずれはこの国や世界ごと相手にするのも一興だが、今はまだ我の力が完全に戻っていないので耐えねばな。


「なっ、貴様はカルヴァドス家のゼノンか!」


「よく覚えていたな」


 虚無の幻獄を解除して元の姿を見せると、ザイラスは我のことを覚えていたようだ。


「馬鹿な、貴様はまだ祝福を授かってすぐではないか! それに先日領主の座を継いだのであろう! 魔族に与するとは国を敵に回す気なのか!?」


 我が領主の座を継ぎ、闇魔法の祝福を得たと発表したのは一週間ほど前だが、すでにその情報はここまで届いていたようだ。


 そして我は魔王である。我が同胞のためならば喜んで世界を敵に回そうではないか。もっとも、今回その必要はないがな。


「フハハハ、他の者にバレなければ問題ない。どちらにせよ、ここにいる者はすべて皆殺しだからな!」


「なんだとっ!?」


 魔族を助けたことがバレるとまずいのならば、それを目撃した者すべてを殺せば問題ない。我が同胞を残虐に処刑する姿を見て楽しむような輩だ。たとえ我に仕えると言ったところで不要だ。


 さて、ぐずぐずしていると出入り口に張ったミラの障壁魔法が破られてしまうかもしれない。さっさとこいつらを殺して別の場所に捕らえられていた同胞を助けているはずのミラと合流するとしよう。


葬送の黒炎(ダークネスフレイム)!」


「ぎゃあああああ! 熱い、熱い!」


「なんだこの黒い炎は!? 盾や鎧にまで燃え移ったぞ!」


 我の放った巨大な黒焔の渦がザイラスの周囲にいる護衛を襲う。


 護衛の数人は盾で防いだようだが、それでも無駄だ。葬送の黒炎は対象の者を燃やし尽くすまで決して消えることのない黒い炎である。たとえ金属製の縦や鎧で防ごうとも、そこから燃え移り、そのすべてを燃やし尽くす。


「駄目だ、水魔法でも消えない! なんなんだこの黒い炎は!?」


「あ、熱い! 嫌だ、死にたくない!」


「ぎゃあああああ!」


 護衛の者は必死で黒い炎を消そうとするが、水魔法ごときで消せはしない。ゆっくりと肌を焦がしながら護衛の者たちが真っ黒な消し炭になっていく。


 多少は腕の立つ護衛もいたようだが、それでも力をある程度取り戻した我の相手をするにはまだ力が足りぬな。


 この闇魔法は闇影兵の顕現と同様に盗賊どもを狩ることによって新しく使用することができるようになった闇魔法だ。我が前世の力を取り戻していくにつれてより強力な闇魔法が使用できるようになる。


「ひいいいい……」


 そしてここに残ったのは我があえて狙わずにいたザイラスひとりであった。


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