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魔王、極悪国家の領主令息に転生す。~闇魔法で人族を支配するつもりが、名君扱いされる~  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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第19話 漆黒の男【他者視点】


「おい、なんだあの男は! さっさと排除して処刑を始めろ!」


『は、はい!』


 ザイラスが魔道具によって部屋から処刑場にいる者へ指示を出す。


 すぐに処刑場の横で待機していた騎士たちが現れ、処刑をおこなおうとしていた魔法使いと共に突然現れた漆黒の男を囲った。


「まったく、来客の方々がいるのに、侵入者を許すとはなんという失態だ! 警備を担当していた者にはあとで罰を与えるとしよう。……それにしてもあの男は一体なんなのだ? まさか人族のくせに魔族に与するわけではあるまいな?」


 ザイラスがぶつぶつと言いながら、謎の侵入者を分析する。見た目は若い人族の青年に見えるが、なぜ魔族の公開処刑時に現れたのかが理解できなかった。


「なっ、まさか闇魔法だと!?」


「……っ!?」


 男を囲っていた騎士たちが男へと襲い掛かろうと前に出て、騎士たちの後ろにいた魔法使いたちが一斉に魔法を男に向けて放ったが、男の周囲から大量の闇の霧が現れ、魔法使いが放った魔法をすべて呑み込んだ。


 そして武装した騎士たちが男へと襲い掛かるが、男がどこからか出した巨大な漆黒の鎌によって一瞬で両断される。


「闇魔法の祝福? あるいは魔族が変装でもしているのか? いずれにせよ、間違いなくあの男は魔族に与する者だ! おい、他の騎士もすべて出せ。念のため冒険者ギルドで雇っていた者もすべてだ!」


『は、はい! 承知しました!』


 ザイラスの指示によりこの会場にいた別の騎士たちが続々と広場へと飛び出す。広い場所であるため護衛に来ていた者の数は多く、冒険者なども雇っていたためその数はゆうに50を超えていた。


 現れた騎士や冒険者たちが次々と乱入してきた男に襲いかかっていく。


「くそっ、あいつは化け物か!?」


 だが、漆黒の男はたったひとりでそのすべてを圧倒的な力によって蹴散らしていく。


 魔法を使っているはずなのに動きは騎士たちよりも俊敏で、騎士たちを巨大な闇の鎌により一刀両断していき、魔法使いが放った魔法はすべて闇の霧の中へ呑み込まれていった。そして男が鎌を持った反対側の腕を振るえば、四方に放たれた黒い弾が放たれ、それを受けた者たちはその場にうずくまって動かなくなる。


 磔にされた魔族を守るように処刑場中に乱入者の放った黒き闇魔法が暴れ回った。


「まずい、まずいぞ! あれは手に負えん!」


 戦闘は素人であるはずのザイラスの目から見てもはっきりとわかるほど処刑場に乱入した男の実力は圧倒的であった。


 魔族に与する者などいないと思い、街の騎士団の中でも腕利きの者は自身の出払っていた屋敷の警備を任せていたのが災いした。すでに金で雇った冒険者の一部はあの男を倒すことを諦めて逃亡を始めている。


闇影兵の顕現(シャドウソルジャー)


「なんだ!? あんな魔法は見たことがない!」


 漆黒の男が新たな魔法を唱えると、地面から黒い影が広がり、多数の人の形を形成していく。それぞれの影の兵士はひとつの軍勢となり、磔にされていた魔族を守りつつ、騎士団や雇った冒険者に襲い掛かる。


 さらにあろうことか、男は向かってくる騎士団や冒険者だけでなく、客席にいる一般人へ向かって攻撃をし始めた。


「くそっ、なんてやつだ! 儂らだけでもすぐに逃げて屋敷に戻るぞ!」


「は、はい!」


 ザイラスは拘束されている魔族の女の子を放置し、この部屋にいる護衛と部屋の外にいる側近を連れてここから逃げ出そうとする。だが、ザイラスが部屋から出ようとしたその時、別の護衛の者が走ってきて衝撃の事実を報告してきた。


「ザ、ザイラス様、大変でございます! この広場の出入り口に強固な障壁魔法が張られております! ここから逃げ出そうとしている者が殺到しておりますが、誰もこの会場から抜け出せません!」


「なんだと!?」


 主催者としての責任をすべて放棄して逃げようとしたザイラスだが、乱入者はそれを許すつもりはないらしい。


「……まずい、まずいぞ! お前たちでもその障壁は破壊できないのか!」


「た、試してみなければ分かりませんが、出口には多くの人々がパニックとなって押し寄せており、そもそもそこまで辿り着くことができない状況におります!」


「なんということだ!」


 騎士や冒険者だけでなく、無差別に攻撃をし始めた乱入者のせいですでにこの処刑会場は酷いパニック状態となっており、あちこちから怒号や悲鳴が聞こえている。


「……あの男は捕らえていた魔族を解放しに来たのだろう。捕らえていた魔族の女どもとそこの女を人質にして儂らだけは逃がしてもらえるよう交渉するしかないな」


 ザイラスがこの状況で窮地から脱する方法を思考する。ザイラスはそういったずる賢いことを考えることだけは得意な男であった。


「貴様が領主か」


「っ!?」


 だが、ザイラスが拘束されていた魔族の女の子を連れ出そうと振り向いた時、そこには先ほどまで下の会場で暴れていた乱入者の姿があった。


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