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魔王、極悪国家の領主令息に転生す。~闇魔法で人族を支配するつもりが、名君扱いされる~  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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第18話 公開処刑【他者視点】


「ふっふっふ、その目で見てみろ。貴様ら魔族の公開処刑は実に盛況のようだ」


「くっ……」


 普段は騎士団などが訓練を行っている広い広場だが、その成果を見せるための観客席があり、そこには多くの身なりの良い者たちが広場の中心に磔にされている5人の魔族の男達の処刑を今か今かと待っている。


 客席は領地内の貴族、高位の役人、そして財を成した大商人たちで埋め尽くされていた。わざわざ少し離れた街から来ている者もおり、彼らは豪奢な衣服に身を包み、金糸の刺繍や宝石がふんだんにあしらわれた装飾品などを身に着けている。


 そしてこの部屋は観客席の一番上にある豪華な内装の特別な部屋で広場全体を見渡せるようになっており、その中には一人のでっぷりと肥えたダスクレアの領主であるザイラス=ダスクレア、護衛として武装している兵士が5人、そしてその目の前には1人の小柄な女の子がいた。


 だが、女の子はただの人ではない。人族の中ではほとんどいない紫色の髪をしており、なにより頭の両側からは人族には決して持ちえない黒い角が生えている。


「殺すならさっさと殺せ……」


「貴様らのような汚らわしい魔族であっても、儂ら人族にとって多少は役に立つのだよ。領民どもは常日頃不満しか言ってこないから、こういったことで発散させてやらねばな。他の魔族の女どもは下々の者どもの相手を死ぬまでさせてやろう」


「この外道……!」


 女の子がザイラスに食って掛かろうとするが、その両手両足は金属製の強固な鎖につながれており、まともに動くことができない。


 魔族との戦争が終わり、私服を肥やすことしか考えないこの国の領主たちのせいで人族の生活は困窮していく一方である。


 そのため特に身分の低い者たちの不満はかなりのものだが、ザイラスはダスクレア家に逆らう者を捕らえ、男は公開処刑をして女は民衆の慰み者にすることによって領民を恐怖で支配しつつ、不満を発散させるという手法を取っていた。


「ふん、貴様らのような汚らわしい魔族と交わるなどとんでもないことだが、そういった好き者もいるようだ。貴様の買い手はすでに決まっているから、せいぜい壊れるまで楽しませてやれよ」


「………………」


 女の子はザイラスを睨みつけるが、命乞いや懇願をしたところでザイラスの気が変わることはがないことはすでにわかっている。


 ここに至るまで彼女たちを拘束して連行してきた兵士やこの男に自分はどうなっても構わないからどうか戦闘の意思のない女子供は見逃してくれと懇願したが、誰もその願いを叶えてくれる者はいなかった。


「……私たちは何もしていないのに、どうして人族は魔族をここまで敵視するの? 昔から続いていた戦争だって、初めは人族の方から一方的に攻め入ってきたじゃない! 私たちが何をしたというのよ!」


「ほう、過去の戦争のことについても知っておるのだな。だが、ほとんどの人族はそのことを知りはしない。一部の国の上の者は知っておるが、民衆は魔族から先に攻め入ってきたと認識している。人族に対して共通の敵を作っておけば儂ら権力者にとっては都合が良いのだよ。戦争は莫大な富を産むし、様々な不都合をすべて魔族のせいにすることができるからな」


「っ! そんなことのために……!!」


 女の子の目はこの数日の間で泣き果てて真っ赤になっているが、それでも端から涙がにじみ出てくる。


 この男に対しての憎しみと怒り、なによりこの状況で何もできない自分の非力さと悔しさだけが溢れてきた。


「ふっふっふ、その反抗的な目付きは悪くないな。さて、そろそろ処刑の時間だ。おい、こいつの目をしっかりと開かせておけよ。仲間たちが無様に処刑されることをしっかりと見せつけてやれ」


「「……はっ」」


「ふー! ふふー!」


 ザイラスの横にいた護衛たちが魔族の子を押さえつけ、舌を噛んで自害をさせないよう猿ぐつわを噛ませる。そして公開処刑をする様子をみせつけるように女の子の瞼を無理やり開かせた。


「さて、貴様ら魔族はどんな悲鳴をあげてくれるのであろうな? 魔法による火あぶり、水ぜめ、電流。槍による串刺しと生きたまま魔物に食わせてやる処刑法を用意しておいた。ひとりずつゆっくりといたぶってやるからな」


「うう……」


 女の子の目からは涙がとめどなく溢れてくる。身体と頭を押さえてる護衛たちを振り払おうとするが、彼女の力ではそれもできない。


 すべてを捧げても里の仲間を救いたいという彼女の思いとは裏腹に磔にされた魔族の男たちへゆっくりと処刑人が近付いていく。


「……むっ、なんだあいつは? こんな余興は予定していないぞ?」


 いざ処刑が始まるというその瞬間、空から一人の男が舞い降りた。


 20代くらいの長身の男は整った顔立ちをしており、人族にしては珍しく黒い髪をしている。全身は漆黒の服とに包まれており、手袋やマントまですべて黒色で統一されていた。


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