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魔王、極悪国家の領主令息に転生す。~闇魔法で人族を支配するつもりが、名君扱いされる~  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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第15話 見せしめ


「ふぐ~、ふぐ~」


 磔にしたヴェルザークは口に布が巻かれており声を出すことができない。


「この者はこの街の騎士団長という立場を悪用し、権力のある者たちへ賄賂をおくり、罪のない領民たちを不当に罰してきた不届き者だ。よって今この場にて我が直々に処刑する!」


 以前我の屋敷へ来た際に賄賂を渡してきたヴェルザークだが、騎士団の内情を調べてみると、ダレアスの後ろ盾をいいことに、気に入った女性へ乱暴をしたり、それに逆らう者を逮捕したりしていたことがわかった。……本当に人族の欲望は果てしないものだな。


 賄賂程度であれば降格くらいですますつもりであったが、こいつが犯していた悪事は他にもあり、十分に死罪に値する。


「さて、最後になにか言い残すことはあるか?」


 ヴェルザークの口に巻かれていた布をとってやった。


「ゼ、ゼノン様、どうかお許しを! か、金ならいくらでも払います!」


「フハハハ、馬鹿か貴様は? どちらにせよ貴様が所有している金品はすべて我がもらい受けることとなる。すべてを失って無様に死んでいくといい」


「あ、あんなに大金を支払ったのに……。この外道が!」


「我にとっては誉め言葉であるな。『奈落の暴食(アビスグラトニー)』」


 最期に見せしめとして我の役に立ってもらうとしよう。


「まっ、待ってくれ! 頼む、助けて! ぎゃあああああ! 痛い、痛いいいいい!」


 ヴェルザークは磔にされたままゆっくりと奈落の暴食へ呑み込まれていく。


「「「………………」」」


 先ほどまでは歓喜の声を上げていた領民たちだが、ヴェルザークの断末魔を引きつった表情かつ無言で聞くことしかできないようだ。


 そしてヴェルザークの身体が闇魔法によってすべて呑み込まれた。


「……お、おい。あれはまさか闇魔法じゃないか?」


「た、確かに闇魔法だ……。ゼノン様の祝福は闇魔法だったのか!」


 目の前で闇魔法を使用したことにより、領民たちがざわめく。


 人族の中では忌避された魔法として扱われている闇魔法だが、我にとってはどうでもいいことだ。力も多少は取り戻したことだし、歯向かう者は排除していけばよいだけである。むしろ領民どもに恐怖を与えることもできるので便利なくらいだ。


「見ての通り、我の領地で不正を働く者に対しては我がこの闇魔法をもって直々に処刑してやろう。不正や犯罪に対しては以前よりもより厳しく取り締まるので、新しい領法をよく確認しておくがよい。我からは以上である」


 領地継承式はこれで終了となる。領民の動揺が収まらない中、ミラと共にエリオンへまたがり、屋敷へと飛び去った。


 我が容赦のないことをしっかりと見せておき、実力をしっかりと刻み込んでやることが大切だ。我に逆らう者が現れてくれれば、その者を見せしめにしてやろう。


 さて、これから我が領地がどうなっていくのか楽しみだ。






 ――――――――――――――――――


【とある酒場】


「いやあ~ゼノン様か。まだ幼いのにとんでもない人だったな!」


「俺も実際に見たことはなかくて、街中じゃだいぶ横暴に振る舞っていたらしいけれど、噂なんて当てにならないもんだな」


「ああ。あれでまだ10歳ってのは信じられないぜ」


 ゼノンの領主継承式が終わり、前代未聞の式の様子は瞬く間に街中へと広がっていった。


 この酒場だけでなく、他のどの酒場でもその話で持ちきりである。この男3人組も酒を飲みながら、新しい領主のことについて話していた。


「……だけど本当に税率があんなに下がるものなのか? 普通領主が変わる度に税金は上がっていくものだろ?」


「……ああ、前領主に変わった時は一気に上がったよな?」


 新しい領法にて領主の陰口を叩いたくらいでは罪にならなくなったとはいえ、それをすぐに鵜呑みにして大声で話すほど愚かではないらしく、3人は他の人に声が漏れないように小声で話している。


「どうやら本当らしいぞ。それに税金が下がるだけじゃなくて、教育機関を新たに作ったり、街の衛生改善や畑の拡張なんかに結構な金をつぎ込んでいるって噂だ。それに伴ってあちこちで新しい仕事を募集しているって話だぞ」


「マジかよ! 仕事が増えるってことは俺たちの生活もだいぶ良くなるんじゃねえか?」


「ああ。それにゼノン様はこれまで放置していた盗賊団の討伐に乗り出したって噂だ。おかげで安全になったこの街付近へ訪れてくる商人がかなり増えていくらしいぞ」


「おおっ、そいつは景気のいい話じゃねえか!」


「あと知り合いから聞いた話によると、盗賊に捕らえられていた娘が助けられて戻ってきたらしいんだよ。なんでもゼノン様がたったひとりで盗賊団どもをぶっ潰して、捕らわれていた女たちを無償で助け出したらしいぜ」


「いやいや、そこまでいくとさすがに嘘だろ! なんで貴族の領主様がわざわざ盗賊を潰して平民の女なんかを助けるんだよ!?」


 1人の男の話を残りの2人はまったく信じていないらしい。ゼノンの事情を知らなければ、そう思うのは当然のことである。


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