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魔王、極悪国家の領主令息に転生す。~闇魔法で人族を支配するつもりが、名君扱いされる~  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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第13話 領主継承式の準備


「それにしてもまさかミラ様がアデレア国の聖女でしたとは驚きました。ゼノン様とはいったいいつ知り合われたのですか?」


「数年前に私が秘密裏にこの街へ訪れていた際、ゼノン様に助けられたことがありました。その時私はゼノン様に忠誠を誓ったのです」


「左様でしたか。ゼノン様も私の見えないところでしっかりと成長されておられたのですね!」


 騎士団が我の屋敷を訪れた翌日。


 今日は盗賊の狩りは休憩しており、今は昼食をとりながらミラとユルグが話している。ミラが聖女であることはユルグにも話した。


「ですが、聖女となればいろいろと制約があったと思うのですが、長くアデレア国を離れてしまっても大丈夫なのですか?」


「……ええ、問題ございません。私にとってはゼノン様がすべてですので、もはやあの国に未練はございません」


「そ、そうなのですね……」


 以前ミラに確認したところ、どうやらこの国に来ることを他の者には話していないようだ。事前に国から脱出する用意をしておいて、我が転生する兆候を感じ取ってすぐに抜け出してきたらしい。


 人族の中で聖女がどのような扱いを受けているのかは知らぬが、もしもアデレア国が何か言ってきたらその時に対処するとしよう。


「それにしても盗賊どもの規模がだいぶ小さくなってきたな」


「主要な盗賊はすべてゼノン様が討伐してしまいましたからね」


「ええ。ゼノン様のおかげで領民も安心して生活をすることができます。すでに助けられた女性から噂が広まっていき、ゼノン様を称える噂も聞こえております!」


「「………………」」


 名声などはどうでもいいのだが、我の力を取り戻すためには盗賊どもを闇魔法で呑み込むのが一番早い。ユルグは知らないことだが、我にとってはむしろ盗賊は多く湧いたほうがありがたい。


 盗賊たちは独自の連携を取っており、盗賊団を潰す際に他の盗賊の情報を得ることができたのだが、大きな盗賊団はあらかた潰してしまったようだ。蓄えていた盗品もすべて奪うことができるので、盗賊は見つけ次第潰すとしよう。




「ふう……やることが多すぎるな」


 昼食をとったあとはミラとユルグと共に書類と向き合っている。ゼノンの記憶が残っているため、我でも人族の文字を読むことが可能だ。


 税収の変更や領地の法の確認、騎士団から送られてきた資料を基にまともな人員での組織編制。ミラとユルグが優秀であってもやらなければならないことが多すぎる。


「も、申し訳ございません。最終的な決定はゼノン様がした方がよいかと思いまして……」


「ユルグを責めているわけではない。むしろおまえは働き過ぎだ。ちゃんと休息を取れ」


「な、なんというありがたいお言葉……。大丈夫です、ダレアス様に仕えていたころは数日間寝ずに仕事をしていたこともございますから!」


「……いいから今日の夜は休め、命令だ」


「しょ、承知しました」


 まったく、それで身体を壊したら元も子もないだろうに。まあ、身体ならミラの聖魔法があればどうにかなるかもしれんがな。


「早くゼノン様の晴れ姿を拝見したいですね」


「ふむ、小さな領地ではあるが、記念すべき我の初の領地であるからな」


 ユルグが進めていたその辺りの調整が終われば正式に我が領地を継いだことを領民に宣言する。小さいとはいえ、我が人族として初めて統治する場所である。盛大に祝うとしよう。


 そしてユルグには同胞である魔族の情報を集めるよう命じた。魔族は酷い扱いを受けているから保護したいという苦しい理由だったが、盗賊に捕らわれていた女を解放したこともあって、ユルグも素直に信じたようだ。


 同胞が見つかり次第、たとえどこであろうとすぐに駆け付けることができるよう備えておくとしよう。






 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「ゼノン様、本当によくお似合いです!」


「うむ。ミラもよく似合っているぞ」


 いよいよ領主継承式が始まる。


 この日のために用意した我の闇魔法を象徴するかのような黒色のマントはミラの分も用意してある。人族の服装もこうしてみると悪くないものだな。


 領主継承式はこの街の広場で行われるため、グリフォンのエリオンに乗って空から降りる予定だ。すでにユルグたちは現地で準備をしている。


「さて、そろそろ行くか。税収は下げるが、ダレアスの散々な悪政があるだけに領民が我を認めるのか予想がつかんな」


「ゼノン様でしたら大丈夫でございます。もしも従わぬようなら皆殺しにしてしまえばいいだけございます、くふふふ……」


「……領民も我の所有物であるから、無暗に殺そうとするなよ」


「はい。ゼノン様がそう仰るのでしたら承知しました」


 ミラの忠誠心はありがたいが、領民はせっかくの資源である。精々我のために働かせるとしよう。


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