26.王都に帰還
メグは王都に得るために食事の時間は削らなかったが睡眠時間は削ってレイと協力して停戦条約の作成に尽力した。
お陰で丸二日で草案はでき何とか三日目には敵側の代表者と草案を取り交わし、一時停戦までには持ち込めた。
正式な停戦はお互いに取り交わした草案を王都にいる王が承認しなければ正式は停戦とはならないということでレイとメグは今、王都に向け馬を飛ばしていた。
調印式にしか現れなかったレリックは敵側が一時停戦を破棄した場合に備え、砦で待機することになった。
メグとしては一時的とはいえ王都に帰還できるのでうれしかったのだが、その一方でレリックの態度が解せなかった。
なんとも珍しい。
いつもならアンジェ会いたさになんやかや理由をつけてメグに砦での留守番を押し付け、レリックが王都に帰りたいとかいいそうなのに。
メグがムスッとした顔でそんなことを考えていると隣を走っていたレイが心配そうな表情を浮かべてメグに話しかけてきた。
「先ほどから顔色が悪いようですが大丈夫ですか、メグ?」
「メグ?」
何度目かのレイの呼びかけにやっと気が付いたメグが視線をレイに向けた。
「えっとなにか言ったかしら?」
「体調は大丈夫ですか?」
「隊長?」
(レリックのこと。そんなに心配しているの?)
レイはメグの隊長という言葉に一瞬眉がピクリとした。
「レリック隊長のことではなく、あなたの顔色ですよ。」
「ああ、そうか体調のほうね。別に何ともないけど・・・それを気にしてたわけじゃなくて、いつもなら真っ先に王都に戻れる案件があるなら自分が行こうとするんじゃないかと思って、ちょっとそのことについて考えていたのよ。」
レイは自分がどんなにメグのことを心配しているのかまったく気づいていない本人を前に、少し不機嫌になってぶっきらぼうな言い方でレリックの近況を説明した。
「ちなみに隊長なら砦の中にある特別室に入り浸っていますよ。」
「なにその特別室って?」
「特別室ですか。それでしたら急遽例の第二王女を入れるのにつくった部屋ですよ。」
「えっ・・・あのレリックがアンジェ以外の女に興味を持ったってこと?」
「興味をもったというよりはかなり夢中ですね。」
「うそ!信じられない・・・あのレリックが・・・。」
「なので隊長がもうあなたのことを気にすることはありませんよ、メグ。」
レイはここに来る前に王都で聞いたメグとレリックの噂のことを思い出して嫉妬に狂う自分の心をなだめながら、もうメグがレリックをいくら想っても無駄だと力説した。
一方、メグは隣でレリックがどんなにあの第二王女に入れ込んでいるかを力説しているレリックの話を聞きながら、これでやっとアンジェが自分をレリックと無理にくっつけようとはしなくなるだろうと安堵していた。
二人は通常の半分の時間で王都につくとそのまま王に停戦条約の草案と現状の砦の状態を報告して退出するとレイは王城で実母であるレトリーに捕まり、メグはアンジェの下で働いているはずのトリノに捕まった。
「メグ様。お久しぶりです。」
なぜかトリノの笑顔が怖かった。
「えっと元気にやっているようねトリノ。」
「ええ。お蔭様で毎日、恋人に会うことが出来て幸せですわ。ある一部分を除いて(ニコリ)。」
トリノの笑顔が怖い。
ある一部分は聞かなくてもわかるから聞きたくない。
メグが笑顔を凍り付かせていると突然、トリノに手紙を渡された。
「これは?」
「王宮に出仕する直前に大旦那様から渡された手紙です。」
あのクソ養父から渡された。
メグはトリノから渡された手紙の差出人を確認してから手紙を読んだ。
「すぐ戻れ、儲からない。」
なんだこの手紙は!
すぐ戻れはいいが儲からないとは何が儲からないのよ。
もっと具体的に書けや、クソ養父。
主語がないでしょう主語が。
くそっ。
メグはトリノからもらった手紙を魔法で消し炭にするとクソ養父が住む館に向け、ここまで乗ってきた軍馬を王城から出るときに戻さずにそのままそれにとび乗るとそのまま街中を駆け抜けた。
勝手に軍馬を使ったことで後で請求書が回ってきたがそれは呼び出したクソ養父に回した。
クソ養父。
首を洗って待っていなさい。
ことと次第によってたは全財産を根こそぎ奪って、今以上に儲からなくして丸裸にしてやるから。




