25.戦争終結
ホソイがちょうど三日目にメグを訪ねてきた。
二人は砦の城壁の上でホソイが持ってきた肉サンドを食べた。
「それで状況は?あっやだもう美味しい。このたれ絶品すぎよ。」
メグは手に零れたたれをベロリと舐めながらまたバクバクと残りの肉サンドにかぶりついた。
お陰で気分は最高だ。
「あっそういえば言い忘れました。このたれを今度王都の店で出すのに使うそうです。」
「さすがね。開発初期費用を早期に回収できるように最初はこのたれを掛けた料理は高額にしておいてなおかつ数量限定で出してちょうだいね。」
「ご心配しなくても彼らもわかっていますよ。ところで話は変わりますが当初の予定より早く終わりそうですよ。」
「あら、それって私の魔法のせいかしら。」
ホソイは呆れた表情を隠さずにそのまま説明をつづけた。
「まあそれもないとは言えませんが今回は別口です。」
「別口?」
「はい。隣国の王位継承者がこちらの捕虜になっていますのでそのせいかと。」
「王位継承者って誰よ。」
そんな人物いたかしら?
「第二王位継承者で正妃様がお生みになった第二王女です。」
「王女・・・っておんな・・・まさかレリックが連れて行った。」
「そのまさかです。」
あれ、そういえばあの後レリックが連れて行ったきりどうしたんだっけか。
まあいいか。
この小競り合いさえ終われば王都に帰れるんだし、私が心配することはないわね。
メグがきれいに食べ終わったので手を魔法で出した水で洗ったところで視線を違うほうに向けると砦を目指して敵国の使者らしい人物がやってくるのが見えた。
「アラ。あれってあれかしら。」
メグは気を利かして飲み物を出してきたホソイから温かい飲み物を受け取るとその様子をじっと見ていた。
使者は砦の城壁で何かを喚いているようだ。
しばらくするとタイミングが良いようでメグが掛けていた障壁がきれいに溶けて使者が和平交渉をしたいと叫んでいることがメグがいるところでも聞き取れた。
やれやれ。
やっとこのわけのわからない戦いも終わりそうだ。
メグはレイとこの砦を治めている隊長が砦の外に出て話し合っているのが見てとれた。
どうやら、ようやっと王都に帰れそうだ。
さて戻ったら何から手をつけようか。
一番最初は・・・ウフフ、さっき食べたたれをつけた肉サンドからか・・・いや違うわ。
もう商売を中途で邪魔されることを阻止しなければならない。
まず徴兵されないようにしなくっちゃ。
「徴兵を防ぐ方法ってあったかしら?」
思わず呟くとホソイからすぐに返答があった。
「いくつかありますよ。」
メグはホソイに先を促した。
「一つは兵役の代わりにその分のお金を納めること。」
「いやよ。無駄にお金を使うのわ。」
「二つ目は軍に食料などお金に代わるものを納めること。」
「利益も出ないのにタダとかありえないわ。」
「では三つ目は結婚することです。」
「はあぁー結婚!なんで結婚すると徴兵されないのよ?」
メグは納得できないと持っていた温かい飲み物が入ったカップをガンと壁に打ち付けた。
カップが割れて地面に破片が飛び散った。
「女性に限り結婚後は妊娠の可能性があるので一時的に免除されます。」
「期間限定とはいえそれは魅力的ね。とはいっても誰と結婚すればいいのかしら。」
メグの独り言にホソイの目がきらりと光ったがめずらしくメグはそれに気が付かなかった。
これがその後メグの後悔につながることになると。
ホソイはしばらくブツブツと独り言をいっているメグを観察した後、ちょうどメグを呼びに来たレイと入れ替わりにその場を去った。
やっとメグが結婚を意識するようになったと大旦那様にご報告しなければならない。
これで私も王都に戻れる目途がたちそうだ。
ホソイ的には男娼館で紡がれる閨話を盗み聞くことが趣味だがここは戦場が近いせいか殺伐とした会話が多くて少々胸焼け気味だ。
早く王都の男娼館に帰りたい。
ホソイは砦の城壁で何かを話しているレイとメグのシエルエットを振り返ってみてから砦を後にした。




