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24.砦を覆いつくす大防御壁魔法

「メグ。メグ。」

 メグは自分の肩を揺さぶる人間の声に我に返った。

「大丈夫ですか。」

「大丈夫じゃない。」


 それはそうだろう。

 いくら何でもこの巨大な砦を覆いつくす大防御壁魔法を構築しろなどと無茶が過ぎる。

「確かに私は籠城を推進したけどそれは戦略上のことであって全員でかんばるものでしょ。なんで私ひとりが働かなきゃならないのよ。そんなのってないでしょ。」


 ごもっともです。

 レイはブツブツ言いだしたメグの独り言に相槌を打った。


「それもただ働きとかイヤすぎる。」

 メグはブツブツ言いながらも砦の中央にある一番高い見張り棟に向かって歩いて行った。


「メグ、どこに行く気ですか。」

 ブツブツ言いながら歩き出したメグにレイは背後から声を掛けたがその声が聞こえないのかはメグはずんずんと先に歩いていく。

 レイは捕虜を連れて行ってしまったレリックを気にしながらもブツブツと言いながら階段を登っていくメグの後をついて行った。


 メグは砦で一番高い見張り台に着くと驚いた表情の砦の兵士を無視して砦へ砲撃を始めた敵軍を睨んでから何かを呟き始めた。


「メグ?」

 レイはオロオロしている兵士を無視してメグに話しかけるが彼女には聞こえないようだった。


 メグはひとしきり何かを呟いた後、右手を上げると敵がいる北側に腕を向け何かを放った。

 光が北側の上空に打ちあがりきれいな紋章が上空に浮かび上がった。

 砦の兵士と敵軍が一瞬、その白く浮かび上がった紋章にくぎ付けになっている間にその紋章が北だけではなく南・東・西にも浮かび上がった。

 四つの白い紋章はお互いに白く輝き合うとパアァーと虹のような色を発して砦を囲むように広がり透明な膜となって砦を全体に広がった。


「何だあれ。」

 砦のあちこちから同じような声が上がった。


 そこへ我に返った敵軍から砲撃が始まった。

 ところが敵から放たれた砲弾はメグが先ほど展開した透明な膜に触れた途端、白い光を上げると砦に届く前に砕け散った。


 砦の中で上がっていた叫び声がなくなりシーンと静かになった瞬間、爆発するような歓声が上がった。

「なんだあの魔法、スゲー。」

 砦のあちこちから賞賛の声が上がった。


 レイも固唾を飲んでその光景を見ていた。

「はあぁー疲れた。もうこんなただ働きやってられないわ。」

 メグは何ともこの歓声にはそぐわない言葉を発するとレイが声を掛ける前に階段を下りていく。


「ちょっ・・・ちょっと待ってください、メグ。」

「ええ、何かまだあるの?」

 メグはだるそうにレイを振り返った。


 それはそうだろう。

 こんな巨大な防御壁魔法を展開したのだ、疲れていないわけはない。

 だがレイも今後の作戦のことがあるので聞かないわけにはいかない。

「この防御壁魔法ですがどのくらい持続出来るのですか。」

「三日よ。」

「そうですか。みっかしか・・・えっ、三日って3日ですか?」

 聞き間違いだろうか三日と聞こえたんだが?


「そうよ。何回もやるなんて面倒だから三日にしたわよ。」

「本当に三日も持つんですか。」

「これくらいの砦ならもっと長くかけた方がいいでしょうけど、そうすると出す魔力も大きくなるからぎりぎりの三日にしたわよ。何回もかけるのめんどくさいから。」


 なんだかレイはめまいがしてきた。

 面倒だから三日とか聞こえたが何がどう面倒なのかを理解したくない。

 普通はこの砦を覆いつくす防御壁自体が無謀なはずなんだがなんか常識外れというかなんというか。

 レイがそんなことを考えているうちにメグはさらに階段を下りてそのまま歩いていく。

「今度はどこに行くのですか、メグ。」


 メグは自分の背後から階段を下りてくるレイをくるっと振り向いて睨みつけると彼の胸に指をつきさして文句を言った。

「いい。もしレリックみたいにこの後私に何かやれって命令しても、私は食事を終えるまでぜぇーたい何もしなから。わかったかしら。」

 レイはすごい剣幕で彼の胸に指を突き付けて叫ぶメグに首肯すると彼女は安心したように彼に背を向けると食堂がある建物に向かって歩いて行った。


 レイは彼女の後に続いて歩きながらもすれ違った数人の兵士に食糧庫に行って一番いい肉を持ってくるように厳命した。

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