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23.捕虜の尋問

 メグが城壁の上で風に吹かれて気分転換をしているとレイの部下が一人手に何かを持って駆け寄って来た。


「メグ様。」

 メグがレイの部下であるモブ顔の兵士の声に振り向くとレリックたちがこれから捕虜の尋問をするので牢屋に来てほしいと告げ、すぐに抱えてきた包みをメグに差し出した。

 メグは怪訝な顔でその包みを受け取った。


「レイ副隊長からです。」

「レイから?」

 ほんのり温かい包みを受け取るとメグはそれを開けてみた。

 包みの中にはまだ作られたばかりの肉がパンにはさみこまれた状態で美味しい匂いを漂わせていた。


 美味そう。

 ごっくん。


 メグは満面の笑みで肉が挟み込まれたパンを取り出すとその場で食べ始めた。


 何この肉。

 ウマー。

 もうヤダ食べるのが止まらない。


 メグを唖然と見ている兵士をまるっきり無視してメグはそれを食べ続けた。

 そのうち呼び出したにもかかわらず全く来ないメグに怒り狂ったレリックが直接怒鳴り来んで来るまでメグはその場で袋の中身を堪能した。


「何時まで食べてるんだメグ。早く来い。」

「何時までって・・・食べる終えるまで・・・。」

 メグは最後の一つを頬張るのを睨みつけるように見たレリックはイライラしながらもメグの腕を掴むと砦の地下にある牢屋の前まで引っ張ってきた。

 メグが牢屋の前に立って中を覗き込むとそこには血まみれになった人間が横たわっていた。

「ほよ?」

「こいつの素性を調べてくれ。」

「素性?」

 メグが首をかしげると後から入って来たレイが小さな指輪をメグの目の前に差し出した。

 メグはそれを受け取るとそこに刻まれた紋様をしげしげと見つめた。

「変装用の指輪ね。」

「やはりそうですか。」

「でもこれって・・・。」

 メグはレイから指輪を受け取ると掌の平の上にのせて魔力探査をかけた。

 指輪が青白い炎を上げたかと思うと白い光をだしてからスッと消えた。


「どうなんだ?」

 メグの脳裏には信じられない光景が浮かび上がっていた。


 しばらく無言になったメグにしびれを切らしたレリックが彼女の肩を強くつかんだ。

「メグ。」


「うるさいわね。」

 メグは指輪をレイに投げ渡すとカギがかかっている牢の扉をいとも簡単に開くと中に入って床に横たわってる兵士を仰向けにした。


 そこにはむさくるしい男ではなく白い顔をさらに白くした女が横たわっていた。


「おい。どうなっているんだ?」

 背後で騒いでいるレリックを無視してメグは床に横たわっている女に右手を向けると小さく呟いた。

「治癒。」

 淡い光が床に横たわっている女を包み込むように輝きしばらくするとスッと光が消えた。

 メグは光が消えると立ち上がって背後にいるレリックを振る返るとその場に爆弾を投下してから立ち上がった。

「その女性、隣国の第二王女みたいよ。」


「「はあぁー!」」

 背後からその様子を見守っていたレリックとレイから思わず間抜けな声があがった。


「なんでまた変装リングまで使ってあんなとこにいたんですか?」

 レイが間抜けな声でそのまま疑問をメグにぶつけた。


「さすがにそこまではわからないけどもうすぐ目を覚ますから本人に聞く方が早いんじゃないかしら。」

「まあそうですね。」

 二人が話しているうちに何を考えたのかレリックが牢屋の小汚い床から女を抱き上げるとそのまま階段に向かって歩いていく。

「レリック。どこに連れて行く気ですか?」

「いくら何でも隣国の王女をこのままこんなところには置いておけない。」

「まあ確かにそうですね。」

 レイは諦め顔でどんどんと階段を登っていくレリックについて行った。

 メグもその二人の後ろから階段を登る。


 三人が階段を登り切ったところに砦にいる兵士の一人が駆け込んできた。

「大変です。また敵が現れました。」

「なんだと。」

 レリックは自分が抱えている女性を見てから背後にいるメグに振り返ると一言命令した。

「隊長命令だ。この砦を防御魔法で砲撃から守れ。」

「な・・・なんですって!」

 メグがあまりに無謀な命令に叫び出すがレリックはメグの叫びを無視しするとそのままずんずんと女性を抱えて歩いていってしまった。

 レリックは去った場には彼の無謀な命令を何も疑わずに喜々として復唱してからその命令を砦の守備隊長に告げるために走っていく若い兵士とその若い兵士を止めそこなったメグがいた。


 そしてその彼女の憐には憐れみの目を向けるレイがいた。


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