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22.認識の相違

 メグは背後からホソイが去っていく気配を確認してから目の前で繰り広げられている戦場に視線を戻した。

 ちょうど崩れた陣形に両軍が引き始めていた。

 砦からは味方の兵士が負傷した敵兵を連れて砦に戻って来るところが見て取れた。


 ヤレヤレやっと終わったようね。

 今日はこんなものかしら。


 メグは城壁から離れると食堂に向かった。

 メグが食堂に入って食事をしているとしばらくしてからレリックが副官であるレイを連れて彼女の前に現れた。


 現れた途端、レリックが鼻息荒くメグを罵倒し始めた。


「メグ。なんで砦からこちらを援護しなかったんだ。」

 メグはレリックを無視してそのまま食事を続けると彼は激高のあまりメグの前にあった皿を食べ物が乗ったまま払いのけた。


 ガッシャーン。


 とてもいい音が食堂中に響き渡った。


「レリック!」


 メグは怒りのあまりレリックを魔法で瞬殺しようとしたがそれに気が付いたレイが彼を守るために前に出てきたのでハッと我に返ると手に持っていたフォークとナイフを静かにテーブルに置くと両手でレリックの胸倉を掴んだ。

「いい。良ーく聞きなさい。私が得意なのは大規模魔法であって、ちまちまとした小さい魔法はあまり得意じゃないのよ。あーんな味方が密集しているところに大規模魔法を放ったら敵味方みーんなが等しく被害を食らうのよ。」


「避ければよかろう。」

 レリックは事もなげに言い放った。

 メグは脱力して彼の胸倉から手を離すと今度は彼の胸に指さしてコンコンと説明した。

「いい。筋肉しかないアナタにもわかるように説明すると私の魔法攻撃を避けられるのはあなたくらいなの。」

 レリックは横でいつの間にか食事をしているレイに視線を向けた。

「私でも難しいですよ。」

 レイはしれッとそういうとまたフォークとナイフを持って静かに肉を口に持って行った。


 こいついい性格してるわ。


 レリックはレイの回答にさすがに一般兵のことを思い出したのかドカッと椅子に座ると残っていた皿に手を伸ばして食事を始めた。


 おいおい。


 それは私がさっき持ってきたものなんだけど。

 なんで自分で持ってこないのよ。

 これだからおぼっちゃまは嫌いなのよ。


「なんだ食べないのか?」

 ああ。

 けんか売っているの?

 君がいきなり私に因縁をつけてくるからでしょう。

 それにさっき私が食べようとしたら皿を・・・お肉の乗った皿を床に落としたんだろうが!

 


 メグはクワッと両目開いてレリックを睨み付けるが彼には通じなかった。

 なんだか疲れて席を立つとメグの背にレリックがまた仕事を追加してきた。


「先ほど捉えた捕虜を尋問するから牢屋で待っていろ。」


 メグは片手を上げるとその場でレリックに雷撃の魔法を放ってから食堂を後にした。


 メグの背後では爆音と焦げ臭いにおいがあたりに充満した。


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