第76話 ハーレムメンバー
長い冬休みが明けての教室は、そこいら中恋バナで持ちきりだった。
やっぱり長い間のお休みがあれば恋も進むってものよね。
「え~っ? ついに、あの子と付き合うことになったんだ!!」
「うん! ずっと好きだったから思い切って告白してみたんだ~そしたらおっけー貰っちゃって~」
「私は冬休み中、ず~っと幼馴染メイドといちゃちゃしてたわ。早く結婚したい~」
「あ、はいはい! 私、2人目の彼女出来た!!」
「え、ちょ、私ってものがありながら……。後で紹介してよね?」
「はいはい、分かってるって~。いや、冬休みも終わりも終わりだったから連絡しようがなくてさ~」
うんうん、皆順調なようで何よりね。
そんな感じで聞こえてくる話を楽しんでいると、その恋バナグループの子達がいそいそと寄ってきて話しかけてきた。
「ねぇねぇ!! アンリエッタさん!! 聞いたわよ~?」
「彼女! 6人も作ったんだって? 凄いよね~」
「一年の時に彼女6人って、この学園の記録じゃなかったっけ?」
「だねぇ。今の生徒会長が立てた記録が確か4人だったかな、一年の時に」
「それでも3年の今でも1人増えて5人でしょ? それ考えるとアンリエッタさんほんと凄いわ!」
一気にまくしたてられてすこし怯む。そっか、やっぱり6人ってのは多いのか。私はちらりと横で照れているエメリアを見る。
「1人目はエメリアさんでしょ? やっぱり幼馴染メイドとお嬢様ってのは鉄板よね!!」
「えへへ、ありがとうございますっ。実はもう結婚の約束もしていまして」
「おおお~!」
湧き上がる歓声を受けながら、嬉しそうにしながら私の腕にギュッとしがみついてくる。可愛い。あとでっかい。
でもそうよね。この世界に来てから初めて会ったのがこの子なのよね。一年たってこの子とこうなっていることを考えると、なかなか感慨深いものがある。
「子供は!? 子供はどうなの!?」
「あ、それはまだです」
まぁそれはおいおいね。まだ流石に早いかなと。
「2人目は……ルカさんだよね。今からプロが注目してる逸材を彼女にするとか流石よね~」
話を聞きつけたのかルカがトテテと駆け寄ってきて、私に後ろから抱きついてくる。最近成長著しいのよねぇ、ルカのお胸。
「へっへっへ~。でも、私とアンリの子供はもっと凄いはずだよ~。きっと世界一の選手になるんじゃないかな」
「えっ!! もう百合子作りしたの? おめでとう!!」
「いやいや、まだしてないしてない」
「でもそのうちするでしょ?」
「まぁそれはね。嫁にするんだし」
2人目の嫁宣言で女の子達が更に沸く。
そしていつの間にか空いてる片方の手に、クラリッサがしっかとくっついてきていた。
「3人目はクラリッサさんかぁ~。最初は仲悪そうだったのにね」
「それは、その、誤解が解けましたし……今ではラブラブですわっ」
すっかりデレたクラリッサは恥じらうことなく、私の腕にその胸板を押し付けてくる。こっちはまるで成長していない……。
どうやっても成長する気配が微塵もないのだ。これはもうお手上げである。ま、クラリッサはそこがいいんだけどね。
「卒業と同時に結婚する予定ですわっ。ね~アンリちゃん?」
「そうだね、クラちゃんっ」
愛称で呼び合う私達を、周りの子達がはやし立ててくる。
「いいねぇ~。で、4人目は……」
「わたくしの幼馴染メイドのシンシアですわ」
「あれ? たしかシンシアさんって従者科で、クラリッサさんの……」
「そうですわ。わたくしの彼女ですの。それで、2人揃ってアンリちゃんの彼女になりましたのよ」
彼女持ちを彼女にする場合は、2人共と彼女になるのがルールだしね。それにシンシアも可愛いし。
「2人同時にか~。彼女持ちを彼女にするって憧れるよね~」
「ね~。女の子の夢の1つだよね」
確かに、2人同時に私のものにしたときの充実感は素晴らしいものだったし、憧れるのもよくわかる。
「あれ? でも6人って、後の2人は? 学園の人?」
「2人のうち1人はモニカって言って、キマーシュでメイド喫茶を経営してる子よ」
「……ええええ!?!? マジで!? あのメイドグループの社長!? 凄い子彼女にしたのね!?」
「侯爵令嬢のクラリッサさんを落としたのにも驚いたけど、これもなかなか……」
モニカの場合は私が落されたようなものなんだけどね。子供が欲しいって迫られたわけだし。
それに店がここまで大きくなったのはそれこそ最近のことなのだ。
これからも異世界デザインを使ってどんどん大きくしていく予定だけどね。
「で、もう一人は?」
「ああうん、ほら、去年に入った用務員さんいるでしょ?」
「え、いや、知ってるけど……」
「えっ、ちょ、マジで? あの子確か……」
「そ、ゴーストよ。その子……マリアンヌが私の6人目の彼女なの」
私の言葉で、教室中がざわめく。
「ええええええ!? マジなの!? ゴーストと付き合うなんて、そんなことできるの!?」
「あ、でも私聞いたことある、昔の高名な魔術師が契約して肉体を与えて彼女にしたって……」
「でもゴーストよゴースト。高位魔力生命体なのよ!? 人間と付き合おうなんて普通考える!?」
まぁその点はマリアンヌの一目ぼれで、どうも私の魔力に惹かれたらしいんだけど。
それでも今ではマリアンヌともしっかり愛を確かめ合ったし、私個人として愛してくれているようだ。献身的なところがとても可愛い。
「いやぁ……アンリエッタさん、凄い人だとは思ってたけど、まさかゴーストを彼女にできるくらいぶっ飛んだ人だったのね」
「さっきも言ったけど、そんなの伝説でしか聞いたことないもんね」
「あ、でもさ……その、ゴーストって、その、そういうこと、出来るの……?」
その話題になって、皆が息をのんで私に注目する。そうだよね、お年頃だしそういうことって気になるよね。でも可能なんだなぁこれが。
「出来るよ? 契約で仮の肉体を与えているし……まぁあくまで仮だから百合子作りはできないんだけど」
「おおおおおぉぉ~!!」っというどよめきが巻き起こる。
確かにゴーストとそういう事ができるなんて、私も驚いたけど。
あの子ひんやりしてて触り心地がいいのよねぇ。夏とかは特に良さそう。
「あ、子供はさすがに出来ないのね?」
「でも、最終的には受肉させて、私の子供を産んでもらう予定よ。どれだけかかるかわからないけど」
「ええええ!? そんなことできるの……? あ、でも確かにアンリエッタさんならできるかも……」
できるかも、じゃなくてやるのだ。私の嫁達には全員私の子供を産んでもらいたいしね。
そしてそうこうしていると、朝のチャイムが鳴って担任のアリーゼ先生が教室に入ってくる。
先生は教壇へ向かいながら私と目が合うと――「パチッ」とウインクをしてきた。
私はこの先生から以前迫られたことがあり、それ以来先生も私の彼女候補なのだ。既婚者で妻もいて、すなわちその妻であるテッサ先生も同じく私の彼女候補、という訳である。
大人の女性って感じで、今のハーレムメンバーには無い魅力がある。うむ、実にいい。
2年になってからも楽しい学園生活が待っていそうだ。
そんなことを考えながら、私は教科書を広げたのだった――




