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第74話 ユリティウスでの2年目の生活が始まった

「ふぅ……極楽極楽」


 私達は結局冬休みの間中を、ほとんど私の家で過ごした。

 仕事があるモニカや家のことがあるクラリッサとかはちょくちょくそっちに帰ってはいたものの、それでも私の家にいる時間の方が長かったくらいだ。


 そして私達は今、2年の新学期が始まるタイミングに合わせて、我が家の馬車でユリティウスに向かって移動中、という訳である。

 馬車の中には私と、6人の彼女達……そう、この馬車に乗っているのはみんな私の彼女なのだ。その事実の何と素晴らしいことか。


「アンリちゃん、はい「あ~ん」ですわっ」

「あ、お嬢様っ、私もっ。はい「あ~んっ」」


 すっかりデレたクラリッサと元からデレてるエメリアに両脇から挟まれ、私は2人からお菓子の「あ~ん」を受けている。実にたまらん。でももう一声欲しいところだ。

 そう思った私は2人の腰に手を回して抱き寄せた。


「あっ……」

「お嬢様っ……」

「手じゃなくて、お口でがいいなぁ~」


 抱き寄せられた2人は、うっとりとしたような顔になって私のおねだりを喜んで聞いてくれる。


「も、もうっ……ハレンチですのねっ……仕方ありませんわっ」

「はい、わかりましたお嬢様っ」


 こんなことを言いながら、手に持ったクッキーを「はむっ」と口で咥えると目をつむって差し出してくる。素晴らしい光景だ。


「んっ……おいしっ……」


 しかし私を挟んだ彼女達の口から直接クッキーを頂くなんて、なんと贅沢なんだろう。ハーレムさまさまである。


「アンリちゃんっ、もう1ついかがですの?」

「私のもどうぞっ」

「こらこら、2人からだけじゃなくて、私のも食べてよねっ」


 再度口に咥えて差し出してくる2人に対抗する様に、私に「抱きつくような体勢で膝の上に座った」ルカも「あ~ん」に参入してきた。


「はい、アンリっ。ん~っ」


 私は口にクッキーを咥えて顔を寄せてくるルカから、遠慮なくそれも頂く。

 軽く口づけをして離れた私に、再度クラリッサとシンシアから「あ~ん」が飛んでくる。このままだと太ってしまいそうなんだけど。


「いや~でも、彼女ごとに味が違うみたいねっ」


 3人の彼女達から交互にお菓子を口移しされてみてそう思う。


「えへへ~私の味、美味しい?」

「美味しいわよっ」


 食べさせてもらってるのは同じクッキーだというのに、実際そう感じるから不思議なものだ。やっぱり彼女達の唾液のせいなんだろうか、このたまらない美味しさは。


「わ、私の味だってお嬢様好みのはずですっ」

「わたくしもですわっ!」


 そんな負けじと対抗してくる両脇の2人をルカはちらりと見ると、


「おっとっとぉ、馬車が揺れたぁ」


 わざとらしいセリフと共に、ルカが私にしがみついてきた。最近やや成長してきた膨らみが当たるのが心地よい。


「うううっ……膝の上、羨ましいですわっ」

「まぁまぁ、そのうち順番も回ってくるからさっ」

「私は最初に膝でしたから、次はまだまだ先ですねぇ」


 そんなクラリッサ、ルカ、エメリア達の姿を見て、向かいの席の方から羨ましそうな声が聞こえてきた。


「いいですねぇ。次のローテーションはいつでしたっけ?」

「交代したばかりですからね~。もうしばらくかかるかと~」

「わ、私はさっきまで膝にいたし、しばらく間が空かないと心臓が持たないよ……」


 マリアンヌ、シンシア、モニカの3人である。

 そもそも私達がなぜこんな座り方をしているかと言うと、この馬車は6人乗りだからである。そこに私を含めて7人乗れば、必然的に1人が誰かの膝の上に乗っかることになる。

 その誰かは当然百合ハーレムの主である私で、みんなこぞって私の膝に座りたがったので、ローテーション制を導入したと言うわけである。

 そういう訳で私達は1つの馬車に全員で乗って、私の両隣と膝の上を交代しながらユリティウスに向かっている最中なのだ。


 なお馬車を2台出すことも提案したけれど、私と離れたがらない彼女達の満場一致で却下された。この辺はハーレムの主と言えど民主主義には逆らえない。


「私が霊体化すれば膝に乗らなくても済むんですけどね」

「ええ~それじゃあつまんないじゃん、せっかくこうやってアンリの膝に乗れてるのに」


 マリアンヌの提案を却下したルカがニンマリと笑いながら、首の首輪を愛おしそうに撫でる。

 その仕草に合わせてなのか、他の全員も同様に首輪を撫でる。この馬車の中は密室なので、誰にはばかることなく首輪を付けていられると言うわけである。

 密室の中に首輪を付けた私のものである彼女達が、それも6人。これを極楽と言わずして何を極楽と言うのか。

 ユリティウスに着くのがもったいなく感じられるほどである。


「いやぁ~それにしても、楽しい冬休みだったねぇ~」


 私の言葉に、冬休みの間のことを思い出したのか全員が顔を真っ赤にする。

 冬休みの間中、私は彼女達と日替わりで夜を共にしたのだ。時折複数だったり、6人同時だったりってのもあったけど。


「これから先、私が1人で寝るって事はないんだろうなぁ」

「当然です。そんな勿体ないことさせませんよ。私がお嬢様のメイドとして、きっちりスケジュール管理をさせていただきます」

「ですね~。私も協力しますよ~」


 どうやら私の生活は今後メイド達2人によってしっかり管理されてしまうようだ。この2人、仕事は有能極まりないし逃げ場はないだろう。


「アンリにはハーレムの主として、私達を可愛がる義務があるんだから、しっかり務めを果たしてよね」

「そうですわっ。お休みなんて無いと思うんですわねっ」


 ブラックすぎる。ハーレムの主は週休0日らしい。まぁそれもまたよしか。


「それはそうとモニカ、良かったの?」


 私はぼ~っと何かを考えている様子のモニカに話を振る。


「え、いや、だって、ほら、その……抜け駆けみたいになるのも悪いし、それに心の準備がまだ、ね」

「そ、そうですよっ! こういうのはフェアであってほしいです!」

「そうですわっ」


 私が言っているのは……百合子作りのことだ。

 エメリア達はまだ学生で、マリアンヌは学園の用務員だけど肉体が無い。それに対してモニカは社会人なのだ。

 だから早々に百合子作りをするのもありかとも思って冬休みの間に提案してみたんだけど、それはやんわりと断られていた。


「じゃあ当初の予定通り、百合子作りをするのは3年の半ばくらいになるのかなぁ」


 それなら学生生活にもそこまで支障が出ないだろう。


「それがいいと思います。その予定で卒業までのスケジュールを組ませていただきますね」

「いや、まだハーレムメンバー増える予定もあるんだけど……」

「あ、そうでした……もう、お嬢様ってば本当に女の子大好きなんですねぇ」


 生粋の貴族であるクラリッサを除いた面々が呆れたように笑っている。

 すみません。でもどうしようもないのです。


「みんなのことは平等に愛するから、ね?」

「お嬢様、モテますからねぇ……まぁそんなところも好きなんですけど」

「ま、しょうがないね~。惚れた弱みってやつだよ」

「アンリちゃんくらいの魔力持ちならむしろ当然ですわ」

「卒業までに何人になるんですかね~」

「でも百合子作りですか~。いいなぁ~。私も体が欲しいですっ」

「まぁ、アンリエッタなら何とかしてくれるでしょ、頑張ってねっ」


 はい、色々と頑張ります。

 そして私のユリティウスでの2年目の生活が始まったのだった――


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