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第68話 うち来る?

「もう年末とか、早いものね~」


 期末試験も無事――ルカは相変わらずギリギリだったけど――終わり、私達は私の部屋に集まってだべっていた。


「ほんとにね~」

「まったくですねぇ」

「そうですねぇ」


 私は両脇にハーレムメンバーであるエメリアとルカをはべらせ、背中にはスク水を着たマリアンヌがひっついている。

 エメリアはミニスカメイド、ルカはブルマ姿であり、2人共私から贈られた首輪を付けていた。

 本来人前で首輪を付けるのはマナー違反であるが、その場の全員が彼女同士なら問題はない、というものらしい。

 自分の彼女をお互いに見せ合ったりすることも多いから、そういうことになっているそうな


「今年はエメリアとルカの2人を彼女にできたし、いい1年だったわ。みんなはどうだった?」

「私も、こうしてお嬢様の彼女として年末を迎えられるなんて、まだ夢を見ているみたいです……」


 うっとりとした顔を浮かべるエメリアのほほを撫でてあげると、更に蕩けそうな笑みを浮かべる。


「私も、運命の王子様に出会えたわけだし、最高の1年だったよ」


 可愛いことを言うルカののどをコショコショと撫でてあげると、ゴロゴロと猫のような鳴きまねをする。


「まさか人間の女の子に恋をするなんて思ってもいませんでしたよ。去年の今頃はあの教会で漂っていたんですけどねぇ」


 マリアンヌが感慨深げに私の後ろで呟く。

 私も幽霊の恋人ができるとは夢にも思ってなかったけどね。まぁまだ恋人予定、ではあるんだけど。


 私達がそんなこんなで4人でじゃれ合っていると――


「まったくもう、イチャイチャしすぎですわっ」

「そうですよ~。まったくもう」


 私の前に座っている2人がブーブー言ってきた。


「いや、そういうあなた達もじゅうっっぶんイチャイチャしてるからね?」


 クラリッサは、自分の彼女であるシンシアに首輪を付けさせ、さらにミニスカメイド姿で『あーん』をしてもらっているのだ。

 もの凄い熱々っぷりである。


「結局、今年中にはクラリッサを彼女にできなかったしな~」


 そう、まだこの2人は私の彼女になっていないのだ。私の彼女は依然エメリアとルカの2人だけである。

 マリアンヌとモニカには申し訳ないけど順番待ちをして貰っている状態だ。


「だ、だって、仕方ありませんわっ……こう、タイミングと言いますか、そういうのがなかなか……」


 そうなのよね。何と言うか、お互い新しい彼女ができたところだから中々上手いタイミングが無かったのである。

 クラリッサはマリアンヌ達に順番を譲ると言ったのだけど、それは丁重にお断りされていた。

 マリアンヌ曰く、「こういうのは順番が大事なんですよ。昔から」とのことである。


「結局、初カノ期間かなり延長しましたもんね~」

「仕方ありませんのよっ!! シンシアが、その……可愛すぎるのがいけませんの!!」


 はいはい、ご馳走様~。しかしこんなラブラブで、私に初めてをくれると言う約束はまだ有効なんだろうか?

 私としてはすごーく楽しみにしているんだけど。


「ねぇ、2人って熱々だけど――ぶっちゃけどこまで行ったの?」


 私が考えていることを読み取ったかのように、ルカがぶっこんでいく。こういうとこは頼りになるなぁ。


「ええ!? そ、それは、その……」

「キスまでですよ~。キスはキスでも大人のキスですけど~」

「え? そうなの? 私はてっきり……」


 ルカからの直球の質問を受けたクラリッサが、耳まで真っ赤になっている。

 直球と言うかすでにデッドボールな気もするけど。


「だ、だって、その、初めてはアンリちゃんにって決めてますものっ……」

「ですよ~。それは私が保証します。私達2人とも、アンリエッタ様のものですよ~」


 2人は立ち上がって私に近づくと、そのまま抱きついてきた。


「クラリッサ、シンシア……」


 5人の美少女から密着される形になり、しかもその5人が5人とも私の彼女だという事実に幸福感が溢れてくる。


「んっ……」


 クラリッサとシンシアが目を閉じてキスをせがんできたので、順番に2人の唇を味わう。


「あ、ずるい!! アンリ! 私も私もっ!!」

「私もお願いしますっ!!」

「私も~」


 結局両脇と後ろの3人にもキスをしてあげて、それから再び前の2人にもして、さらにせがまれて何度も何度も全員とキスを繰り返した。


「はふぅ~」

「ふへぇ~」

「幸せですわっ……」

「ですねぇ~」

「体があるっていいですねぇ」


 満足したのか、5人は私にもたれかかって蕩けた顔をしている。流石に5人から体重をかけられると重いんだが。口には出せないけど。


「ところで……冬休みはどうする? 良かったらうち来る?」

「いいの!?」

「だって親にも紹介したいし。5人とも私の嫁になるんでしょ?」


 早いうちに紹介しておいた方がいいだろう。なにせ5人だ。びっくりするだろうか。それとも、まだまだ少ないと言われるだろうか。


「もちろんです!!」

「なるなる!! 絶対嫁になる!!」

「ま、まぁ、その予定ですわねっ……!」

「お嬢様~? こういう時は素直に嫁になるって言うものですよ? 私は勿論嫁になりますけど~」

「じゃ、じゃあ……お嫁さんになりますわっ!!」


 4人がそれぞれ私の嫁になる宣言をする。うむ、改めて言われるとやっぱり嬉しいものだ。

 あれ? マリアンヌは?


「……私も、受肉出来たら嫁になりたいですね~」

「あ、やっぱりそれが条件?」

「条件と言いますか、やはり幽霊の身では結婚は難しいかなぁと」

「まぁ……それはそうかもしれませんわね。アンリちゃん? 頑張るんですわよ?」


 う~ん、私は気にしないんだけど、やっぱりそういうものなんだろうか。これは頑張らないとなぁ。


「じゃあみんな私の家に来るってことでいいのね? でも、正式に彼女として報告できるのは2人かぁ」

「う、じゃ、じゃあ、その、お願いがあるんですの……ちょっとワガママなお願いなんですけど……」


 はっはっは、クラリッサのワガママなんていつものことじゃないか――


「…………」


 ――私に密着したままのクラリッサが上目遣いになる。やばい、マジで可愛い。絶世の美少女からの上目遣いとか、もう押し倒したくてしょうがない。


「あ、えっと、お願いって?」

「あの、わたくし達が別れた庭……その場所で改めて、その……」


 ああ、あの庭か。記憶を取り戻したことで思い出した、クラリッサが振られたと思い込んだ庭のことだろう。


「告白して欲しいんですの……わたくし、アンリちゃんの彼女になるならそこがいいですわっ」

「わかった。じゃああの庭で改めて告白して、クラリッサを彼女にするね」


 クラリッサがそう望むならそうしてあげたい。こんなワガママ些細なものだ。むしろ乙女で超可愛い。


「アンリちゃんっ……!!」


 感極まったようにクラリッサが涙ぐむ。

 つられてこっちまで泣きそうになるくらいクラリッサが愛おしく感じられた。


「良かったですねぇ~お嬢様~。あ、私はその後で彼女にしてくださいね。場所は……そうですねぇ、確か高い木が生えてる所がありましたよね? その木の下でお願いしますっ」

「了解了解っ」


 ちゃっかり自分の告白シチュまで注文するシンシアは、ほんとに抜け目のない子だ。


「アンリの実家か~楽しみだなぁ~」

「わたくしは久しぶりですわっ」

「ですね~3年ぶり? でしょうか」

「どんなところなんでしょう。私も楽しみです」

「とても素晴らしいところですよ。私が皆さんをご案内いたしますねっ」


 そういうわけで、私の学園生活での1年目は幸せいっぱいに終わったのだった――



お読みいただき、ありがとうございますっ!!

これにて第4章――1年後期編、完結になります!

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