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第66話 デートをしよう!!

「デートをしよう!!」


 放課後にルカがいそいそと近づいてきてそう言った。

 まだ生徒がいっぱい残っている教室の真ん中でデートのお誘いをされたことで、皆の注目が一気に集まる。


「ルカ、皆見てるよ」

「うっ……ま、まぁいいじゃん? 私達……つ、付き合ってるんだし!!」


 ルカの宣言で、黄色い声が上がる。やっぱりみんな恋に興味津々のお年頃なのね。


「2人目の彼女か~やっぱりモテるね~」

「いいなぁ~私も彼女欲しいなぁ~」


 みんなが羨ましそうに見てくるのがこそばゆい。でも悪い気はしないけど。


「じゃあ、今からデートしようか? 場所は……キマーシュの町でいい?」

「そこでいいけど……えっと、今すぐじゃなくて、ちょっと待ってもらってもいい?」

「わかった。でもなんで?」


 ルカのことだからすぐにでも行こうと言うのかと思ってたけど、意外だ。やけにモジモジとしているし。


「い、いいからっ……色々と準備があるのっ!! 先に行っててっ!!」


 そう言われては仕方ないので、私はキマーシュの町の入り口で、ルカとの待ち合わせる約束をしたのだった――



「遅いなぁ~」


 待ち合わせ場所でしばらく待っているけど、ルカはなかなか来なかった。

 あんまり遅くなると遊ぶ時間が減るんだけど、一体どうしたんだろうと考えていると、

「お、お待たせっ……待たせてごめんねっ」


 後ろから声が聞こえた。


「もう遅いよルカ――」


 その声がした方に振り向くと、そこには――


「おおおおおっ。る、ルカ、その恰好っ」

「ど、どうかなっ……」


 思いっきりおめかししたルカが立っていた。


 トレードマークのポニーテールはそのままだけど、それを結わえるのは普段の色気のない輪ゴムではなく、可愛らしいリボン。

 服もフリフリの付いた純白のワンピースで、ルカの日焼けした小麦色の肌に抜群に似合っていた。


 他にも可愛いバッグや靴で着飾ったルカは、普段制服と体育でのブルマ姿しか見てないから一層ギャップがあって可愛かった。


「か、可愛いっ……!!」

「やったっ」


 私から褒められたルカがぴょんと飛び跳ねて喜ぶ。いやもうほんと可愛い。


「でも、そういう服も持ってたのね、似合ってるけど、ちょっと意外と言うか」

「う、じ、実はね……クラリッサに貸してもらったんだ。私、実用的な服しか持ってなくて、可愛いのとか全く……」


 ルカはちょっと恥ずかしそうにほほを指でかいている。

 あ、そうなんだ。確かにクラリッサならこういう系好きだろうし、何より――


「クラリッサのかぁ~。それならサイズも合うよね」

「ちょっと……どこ見てるの?」


 それは勿論、その慎ましく膨らんでいるお胸です。

 エメリアやシンシアみたいな特盛もいいけど、こういうのも捨てがたい。

 お胸に貴賎なしってやつだ。


「ん~? あれ? でもルカのお胸ってもっとこう……」


 ルカってクラリッサ並みの絶壁だったはずなんだけど。なんで慎ましいながらも膨らんでいるの?

 制服の時はよくわからなかったけど、改めて薄着の姿を見てみると明らかにクラリッサと差を付けている。


「わ、私だって成長してるんだから……ちょっとはおっきくなってきてるんだよっ!」

「そうなの!?」

「そうだよ!?」


 そ、そう言われてみると、スク水着ていた時も若干膨らんでいたような……? クラリッサは相変わらず大平原だったけど。


「クラリッサ、何か言ってた? それ貸したとき」

「『裏切り者ぉ~~ひどいですわ!! あんまりですわ!!』って言ってた」


 その声真似はかなり似ていて、その光景がありありと浮かぶようだった。

 確かに同じ絶壁仲間だと思っていただろうに、ルカだけ成長していったらそりゃ裏切られたとも思うわな。


「前に言ってたよね? 揉まれるとおっきくなるって……だから、アンリが揉んでくれたらもっとおっきく……それこそエメリアやシンシアみたいになるかもよ?」


 わずかに成長したことで希望を持ったルカがぎゅっと胸を持ち上げ……るほどはないけど、手で強調しながら見せつけてくる。

 うむ、貧乳っ子のこういうポーズもいいものね。


「いやぁそれはどうだろう? あの子達のは、それこそ規格外だし……」


 あんなサイズ見たことないってレベルだしなぁ。クラリッサ程の絶壁も見たことないレベルではあったけど。


「や、やってみないとわかんないじゃんっ!」


 私の言葉を真っ向から否定るするように、思いっきり力説された。いや、確かにそうなんだけどね。

 でもそこまで言うなら、ルカの体で試してみるしかないよねぇ?


「わかったわかった、じゃあ頑張って育ててみましょうか」

「う、うんっ……よろしくっ……」


 これからのことを想像したのか、うへへとルカがにやける。

 しかし、まだ夜も更けてないのに少々過激な話をしているなぁ。なんか周りから注目されてるし。


「とりあえず移動しよっか?」

「え? あ、そ、そうだねっ!!」


 今になって周りからの生暖かい、応援するような視線に気付いたルカが、慌てて私の手を引く。


「どこにいこっか? アンリは行きたいとこあるの?」

「ん~そうだなぁ、とりあえず服屋さんに行こう。服をプレゼントさせてよ」

「え!? い、いや、悪いよそんな……」

「いいからいいから。可愛い服を着たルカがすっごく可愛かったから、他にも着せてあげたくなったのよ。いいでしょ?」

「か、かわ……!!」


 私からストレートに褒められてルカが真っ赤になる。こういうところが特に可愛いんだよなぁ。


「わ、わかった……行く……」

「じゃあ、1つは行き先決定ね。ルカは何か行きたいとこ無いの?」

「え、じゃあそうだなぁ……とりあえずバッティングセンターと~」


 バッティングセンター、こっちの世界にもあるんかい。やっぱり誰かが広めているなぁこれ。


「あとは……その……」


 何か言いにくそうにしている。でもせっかくの初デートなのだ。どこでも付き合ってあげよう。


「どこでもいいよ? ルカが行きたいとこでいいんだからね?」

「じゃ、じゃあ……その、欲しいものがあるんだよね……」

「欲しいもの? 何?」


 尋ねる私に、ルカは照れくさそうにしながらも、意を決したように答える。


「……く、首輪……プレゼントして欲しいなって」


 ――そうだった。この世界では愛しい相手に首輪を贈るのが愛の証だということを、私は改めて思い出したのだった――



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