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第64話 メイドを愛する者

「どうよこの光景……たまらないわね」

「ええ……私達の勝利ね……」


 私とモニカは2人で並んで、目の前の光景を感慨深げに眺めている。


「ついにここまで来たのね……これもモニカのおかげよ。ありがとうね」

「そんなことないわ。アンリエッタのデザインのおかげよ。私はそれを形にしただけ」

「いえ、モニカが私の要求を完ぺきに満たしてくれて、さらに普及にも尽力をしてくれたおかげよ。誇っていいことだわ」

「アンリエッタ……」


 私達の視線の先には――体操服ブルマに身を包んだ少女たちがグラウンドで準備運動をしていた。

 今は放課後で、本日最後の授業の魔法スポーツの後、ブルマの使用状況の調査に来たモニカに出会ったのだ。

 そういうわけで私もまだ着替えておらず、ブルマのままである。


「ブルマもだいぶ普及してきたわね」


 目の前の少女たちは部活をしている子達で、その子達はほとんど全員がブルマだった。

 ――そう、私達はブルマをこの異世界に定着させることに成功したのだ。

 前世ではすっかりお目にかかることも無くなった、あのブルマをだ――


「だって、ブルマってあの激ダサ運動着に比べたら天と地の可愛さだし」


 そう言いながら、モニカはブルマに包まれた私のお尻を眺めてくる。


「モニカのエッチっ」

「い、いや、これは、その、アンリエッタのは特に気合い入れて作ったやつだから、その仕上がり具合を確認していたんだよ!!」

「ふぅ~ん? で、どう? 私のお尻は?」

「最高だよ……私の作ったブルマがアンリエッタの可愛いお尻を、更にこれ以上ないほど引き立てている……作って良かったよ」


 モニカはうっとりとした目で、更にじっくりと私のお尻を舐めまわすように見てくる。


「ああっ……早くアンリエッタの彼女になりたいなぁっ。そうしたらアンリがデザインして私が作った服を着て……………………」


 なにやらピンクな妄想をしているのか、モニカの顔が真っ赤に染まる。

 ごめんね、初カノ期間がもう少しで終わるから、そうしたら彼女にしてあげるからね。

 そうこうしていると、遠くからエメリアがそのたわわをおおいに揺らして駆け寄ってきた。


「お嬢様? どうしたんですか? もう授業終わったんですからそろそろお部屋に……あれ? モニカ社長? どうしてここに?」

「やぁ、久しぶり、エメリア。今日は私の会社で作っている、ブルマの市場調査にね。い、いやぁそれにしても凄いね……」

「凄いでしょ~」

「? 何がですか?」


 不思議そうに首をかしげるエメリアもまた着替えておらず、ブルマ姿だったのだ。

 豊か過ぎるお胸が体操着に付けられた名前をぐにゃりと歪め、そのブルマで包まれた見るからに柔らかなお尻はほとんど凶器と言っていいレベルだ。

 思わずムラっとしてしまう。


「エメリア……部屋に帰ったら、着替えなくていいからね。そのままブルマのままでいるんだよ?」

「ええ!? そ、それはっ……で、でもっ……授業の後であ、汗かいてますしっ……」

「だからいいんじゃない。いいね、これは決定だから」

「は、はうっ……お嬢様のえっちぃ……」


 部屋でのことを想像したのか、エメリアが頬を染めて身をよじる。


「仲が良くて何よりだね」

「え、えへへ……ありがとうございますっ」

「あ、あ~、エメリア? ところでちょっと言わないといけないことがあるんだけど……」


 そろそろモニカも彼女候補だという事も言っておいた方がいいだろう。

 黙ってはいたけれど、決してやましいことはしていないわけだし。


「それって、モニカさんのことですか?」

「え、あ、うん」

「あの、もしかしたらなんですけど……モニカさんもお嬢様の彼女候補……なんですか?」


 鋭い、女の勘というやつは侮れない。


「わかる?」

「それはわかりますよ。だって、モニカさんのお嬢様を見る目が」

「見る目が?」

「こ、恋する少女の目ですもんっ」

「私、そんな目してる!?」


 指摘されたモニカが狼狽する。確かに最近は特にそんな感じだったけど。


「あ、でも初カノ期間中だから一切手は出していないからね? そこは信じてもらえると……」

「それは、はい、信用してますけど。えっと、これで今何人目でしたっけ?」

「えっと……彼女のエメリアと、候補のクラリッサ、ルカ、シンシア、マリアンヌ、アリーゼ先生、テッサ先生、それにモニカを加えて……8人かな」


 もう秋だけど、現時点ではそんな感じだ。なかなかに多い。私のハーレム計画はなかなかに順調に進んでいる。


「うわぁ~。わかってはいたけど、アンリエッタ、モテるんだね~」

「まぁね」

「ところで、どういったいきさつで彼女候補になられたんですか?」


 エメリアとしては、そこは気になるところだろう。


「いや、実はね……ほら、ミニスカメイドとか、ブルマとかをデザインした謎のデザイナーAって聞いたことない?」

「あ、聞いたことあります! なんでもすい星のように現れた天才デザイナーで、その人のデザインはまったく新しい概念だと評判ですよね」

「そうその人、エメリアにもその人がデザインした服は、いっぱい着てもらってるよね」

「は、はいっ……」


 何やら思い出したようで、恥ずかしそうにモジモジとしだす。


「でもその人がどうかしたんですか?」

「それ、私なんだ」


 それを聞いたエメリアがしばし固まり――


「ええええええええ!? お、お嬢様がデザイナーえ――もがもが!」

「しーっ!! しーっ!! みんなには内緒なの!!」


 大声をあげそうになったエメリアの口をとっさにふさぐ。


「す、すみません、あまりにびっくりして……。まさかお嬢様があの服とかをデザインしてたなんて……」

「で、私がアンリエッタのデザインを形にして、それで会社が急成長したんだよね」


 モニカがほほを指でかきながら話を引き継ぐ。


「そんなこんなであまりに会社が大きくなっちゃって、でもそうなると問題がね――」

「あっ!! 跡取りですね!? それで!!」


 エメリアが即座に答えを導き出す。やっぱりこの子閃きがずば抜けているわ。


「そ、そういうこと、跡取りが必要になったんだけど、私的にはアンリエッタとの子供しか考えられなくて……」

「それで彼女にしてって言ったんですか?」

「ううん、モニカは子供だけくれたら十分だ、ワガママは言わないって言ったんだけど、それは、ねぇ?」


 流石にそれでウンというのは薄情すぎる。それに私もモニカ好きだし。


「で、将来的には結婚を前提に彼女になってもらおうかなと」

「はぁ、まぁ確かに会社が大きくなったのがお嬢様のおかげとあれば、そうするのが筋ですよね」


 エメリアがウンウンと頷く。


「で、どう? エメリア、モニカと仲良くやっていけそう?」

「それはもちろん! だってモニカさんとは同好の士ですし!」

「エメリア……!」


 2人はガッシと握手をする。そう言えばそうだった。この2人、大のメイド好きっていう共通の趣味があったんだった。


「それじゃあ、これからはカノ友として、そしてメイドを愛する者として、よろしくお願いしますね、モニカさん」

「こちらこそ、よろしくエメリアっ!」


 そうして、メイドによって結ばれた友情は、カノ友としても結ばれたのだった――


お読みいただき、ありがとうございますっ!!

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