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第59話 揉まれると大きくなる?

「歩きにくい……ああっ、でも最高っ……」


 私は両脇からエメリアとクラリッサ、後ろからはルカにしがみ付かれたままの状態で、暗い森を歩いている。


 その3人の美少女達は、何か物音がするたびに更に力強くしがみ付いてきて、そのたびに私は体に押し付けられるたまらない感触を味わっていた。

 ……まぁもっとも、押し付けられるくらいの質量を持っているのはエメリアだけではあったけど。


「ところでシンシア、まだ目的地は先なの?」

「ん~目的の廃教会はまだ先ですね~」


 だいぶ歩いたけど、目的地にはまだだいぶあるらしい。


「それはそうとシンシアはこういうの平気なの? 怖かったらシンシアも抱き着いてもいいんだよ?」


 他の3人が物凄い力でしがみ付いてきているのに、先頭をスタスタと歩くシンシアはやっぱりけろりとしたままだ。

 シンシアの感触もぜひ味わいたい私としては、抱き着いてくれると嬉しいのだけど。


「別に平気と言うわけじゃないんですけど~」

「そうは見えないけど」

「でも皆さん手がふさがってますし、誰かがカンテラを持たないといけないですから」


 それはそうだった。私の両手は脇の2人に貸し出し中で、その2人は両手でしがみ付いている。

 後ろのルカなんて腰に回した手を放す気配は微塵もない。


「あ、じゃあこうしよっか。それ貸して?」

「これですか? でもどうやって持つんですか?」

「いいからいいから」


 不思議そうな顔をしながら私に近づいたシンシアが、私の前にカンテラをかざす。


「こうするのよ」


 私は最近習ったばかりの魔法を唱えると、カンテラが淡い魔法の光に包まれた。


「あ、なるほど『物体浮遊』に『自動追跡』ですか」


 意図を察したシンシアがカンテラを離すと、それはふわりと私の前に浮いた。


「確かにこの合わせ技なら私が持たなくても大丈夫ですね~」

「でしょ?」


 魔法をかけられたカンテラはその場に浮いたばかりか、私の前から一定の距離を保って移動している。


「さ、おいで、シンシア。前が空いてるよ」

「ですね。では遠慮なく~」


 シンシアはそう言うと私に正面から抱きついてきた。それによりその豊か過ぎるたわわが思いっきり押し付けられてくる。


「うわぁ……これは凄い……エメリア並みだぁ……」


 それは予想以上のとんでもない大質量だった。こんな小さな子なのにここまで育つとは、どういう食事をしたらこうなるのだ。


「でしょう? この子は凄いんですわよ」


 クラリッサが誇らしげにメイドの自慢をしてくる。褒められたメイドも実に嬉しそうだ。

 しかしその主人はと言うと……


「……クラリッサって、シンシアと同じようなもの食べてるの?」

「え? まぁいつも食事は一緒でしたし、同じメニューでしたけど、それがどうかいたしまして?」

「いや、なんでもないよ~」


 となると食事が原因じゃないのか……やはり遺伝なんだろうか。


「わ、私だって……まだまだ成長してるんですよっ」


 シンシアが褒められたので対抗心が湧いたのか、エメリアも負けじと押し付けて主張してくる。


「え、まだ育ってるの!?」「ますの!?」


 後ろのルカと脇のクラリッサが驚愕の声をあげる。


「は、はい……入学時からも少しずつ……さ、最近はカップが1つ上がりまして……」


 言ってて恥ずかしくなったのか、最後の方は消え入りそうな声だった。


「あ、私もまだまだ成長中です~」


 もう1人のメイドもサラッと追い打ちをしてきた。鬼か。


「そ、そんな……不公平すぎる……」

「なんでですの……ずるいですわっ……」


 ペタンコ組が怖さも忘れてドヨンとした顔になる。

 そう言えばこのメンバーって、有る組と無い組でくっきり分かれていて、その真ん中が無いのよね。


「ま、まぁまぁ、2人の感触もこれはこれでいいものだよ? 自信を持って……」

「アンリちゃんだってかなり大きいじゃありませんのっ!! 持てる者には、持たざる者の気持ちなんてわかりませんのよっ!!」

「そうだそうだ!!」


 う、う~む、どうも火に油だったようだ。


「あ、そう言えば他人から揉まれると大きくなるって聞いたことが……」

「なんですのそれ!? 初耳ですわ!!」

「私も!! それでおっきくなるの!?」


 クラリッサとルカが目を見開いて驚いている。

 あ、この説こっちの世界では無いのか。まぁ私も俗説だとは思うけど。


「聞いた話だけどね、なんかそうらしいよ?」

「じゃあシンシアやエメリアのが大きいのも……!?」


 ルカが「謎は全て解けた!」と言った顔をしている。いや、多分エメリアのは違うと思うんだけど――


「実はそうなんですよ~」

「えっ」


 何とシンシアは肯定してきた。


「クラリッサ!? そうなの!?」

「ち、違いますわよ!? わたくしはこの子のお胸を揉んだことなんてありませんわよ!?」

「ほんとにぃ~?」


 みんなからの生暖かい疑惑の視線を浴びて、クラリッサが大慌てで否定する。


「ほんとですわ!! さ、触りたいと思った事だってありませんわ……!!」

「えええ~~それはショックなんですけど~」


 シンシアがわざとらしくシュンとする。何度も言うが、やはりいい性格をしている。


「え!? あ、そ、それは!!」

「私のお胸ってお嬢様が触りたいって思えないほど魅力が無いんですね~」

「そ、そんなことありませんわ!! シンシアのお胸の魅力はわたくしが保証しますわ!!」

「でも~触りたいとは思わないんですよね~?」


 私は触りたいけどね。


「う……ご、ごめんなさい……ウソですわ……ほんとは触りたいですわっ……」


 白状した。それはでも当然よね。女の子なら誰だってそう思うわ。


「え、じゃあやっぱり?」

「で、でも触りたいとは思ってましたけど、触ってはいませんの!! ましてや揉んでなんていませんわ!!」


 その必死な様子から、こっちはウソを言ってないように見えるんだけど……


「覚えてなくても当然ですね~。だってお嬢様が寝てるときのことですし」

「え?」

「お嬢様ったら寝相が悪くて、いつも寝てるとき私のお胸を揉んでいるんですよ~」


 そう言えばこの2人、いつも添い寝してるんだった。


「そ、そうなんですの!?」

「それはもうムニムニと。いやぁ~どうりでおっきくなるわけですね~これはお嬢様のおかげとういうわけですか~」


 微笑みながらゆさりと胸を揺らす。あの俗説、本当だったの……?


「そ、そうだったんですの……!? わ、わたくしが寝ている間に……なんてハレンチな……」


 自身の寝ている間の行いにクラリッサが愕然として膝をつく。

 そんなクラリッサを見てシンシアは――


「――まぁウソなんですけどね」


 ニコリとほほ笑んだ。


「……へっ?」


 クラリッサを含んだ私達がポカンとする。


「ウソですよ~。だってお嬢様、一度寝たらもう私を抱きしめたまんまですから」

「えっ……」

「これは普通におっきくなったんですよ~。あ、でも揉まれてたらもっとおっきくなってたんですかね~」


 シンシアがクスリと笑う。

 それを見て――しばらく固まっていたクラリッサは、またしてもメイドにからかわれたことを理解すると――


「……シンシアぁぁぁ!! あなたって子はもぉぉぉぉぉぉ!!」


 夜の森の中にクラリッサの叫び声が響き渡ったのだった――



「――ちなみにエメリアのは……?」


 記憶が無いけど私が育てたってことは無いんだろうか?

 もしそうだとしたら是が非でも取り戻さないといけない記憶なのだが――


「ち、違いますよ!? 揉まれていませんからね!?」


 と、顔を真っ赤にして否定してきた――ちぇっ残念。


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