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第44話 何かのプレイの様だ

「ところで新デザインってどんなの?」


 ひとまず話が付いたところでモニカが聞いてきたので、カバンからデザイン画を取り出して渡す。


「これなんだけど」

「……ん? これ何? 何の服?」

「これはね……水着よ!」

「水着!? これが!?」


 実家に帰った時に領地の池で泳ぐことがあったんだけど、その時着た水着の余りにダサさに戦慄した。ゆえにこれを作って広めようと決意したのだ。

 なにせこの世界の水着って、半袖半ズボンの長さにした縞模様の全身タイツとしか言えないような代物だったからだ。


 前世でも100年前とかにあったデザインで、もう色気も何もないヒドイものである。

 学校の魔法スポーツの授業でもそろそろ水泳があるだろうし、そのためにも水着革命に乗り出さないといけないのだ。


「この、大胆な切れ込みと、肩が出た斬新なデザイン、紺一色というシンプルさが、かえって色気を醸し出している……まさに脱帽ね」


 モニカがデザイン画を食い入るように見ている。


「これ、ブルマみたいに名前があるの?」

「もちろんあるわ……その名も『スクール水着』!! 略してスク水よ!!」

「スク水……!!」


 雷に打たれたようにモニカが震えている。


「これは……!! 水着の革命よ!! 確かにこれを見た後だといつも着ているあの水着が、いかにダサくて色気が無いかがわかるね」

「でしょ? あんなのを年頃の女の子に着せるなんてとんでもないわ」

「そうね……!! これは早急に広めた方がいいね。こんな可愛ければ喜んで着るでしょ……あと、実はこの水着、結構えっちじゃない?」


 そこに気付くとは。やはりモニカもただものではない。


「そうね、実はえっちよ」

「だよね。こう、秘められたエッチさと言うか、とにかくすごいデザインよ……」

「いやぁそれほどでも」


 私が考えたデザインじゃないけどね。でもスク水の人気は実証済みだ。この世界でも瞬く間に流行るだろう。


「それにしても、ミニスカメイドといい、ブルマといい、スク水といい……どうして次から次へとこんなデザインを思いつけるの? 1つだけでも蔵が立つレベルよ?」

「あ~えっと、それはね」


 まさか異世界のデザインだなんて言えるわけもない。適当にごまかさないと。


「夜寝てるとね、こう、ビビビーっと頭にイメージが振って来ると言うか、あれはそう、天啓(てんけい)ね」

「天啓か……まさにそうとしか思えないレベルのデザインよ……アンリエッタ、私はあなたに会えてよかったと心底思ってるよ」


 そこまで言われると照れてしまう。


「で、これどれくらいでできる?」

「そうね……最近私の腕も物凄く上がってきてるし、試作でよければ今すぐに出来るね」

「今すぐ!?」

「ええ、それで……出来たら着てくれる?」


 じっとモニカが見つめてきた。


「えっと……私のスク水姿が見たいの?」

「えへへ……実はそう。このデザイン画を見たとき、これを着たアンリエッタが見たい!って思って……ダメ?」

「いいよ、着てあげる」

「ほんと!? じゃあ待ってて!! 加速呪文も限界まで使って最速で仕上げるから!!」


 それからモニカは社長室に併設されているらしい工房にすっ飛んでいくと、あっという間に戻ってきた。まだお茶も飲み終わってないんだけど。


「できたよ!! これでいい?」


 手渡されたものは、確かにスク水だった。このモニカの能力もとんでもないレベルだと思うんだけど。


「完璧ね。イメージ通りよ。生地も水着用だから伸縮性もあるみたいだし」


 スク水は伸縮性も大事なのだ。色々と。


「でもこんなに早く仕上げてくるなんて、そんなに私のスク水姿が見たかったんだ? モニカって実は結構えっち?」

「わ、私は純粋に職人としてアンリエッタがこれを着てるとこが見たいのであって……!! け、決してアンリエッタのお肌が見たいとかそういうんじゃないから……」


 そんな顔を真っ赤にして言っても説得力がないんだけどね。


「ま、そういうことにしておきましょ。じゃあ着替えてくるね」


 私は物陰に移動して、モニカの作ってくれたスク水に着替える。でもプールとかでもない社長室でスク水に着替えるなんて、なんかいけないことをしているみたいだ。


「どうかな……」


 物陰から出てきて、モニカの前にスク水姿をさらす。


「ふおおおおっ……素晴らしいっ……」


 感嘆の声と共にモニカが近づいてきて、私の全身を撫ペタペタと触ってくる。


「ちょっ……モニカ!?」

「ああっ……もう最高っ……こんな斬新なデザインの服を仕立てることができて、しかもそれをアンリエッタが着たとこを見られるなんて……!!」


 なんか職人的に凄く琴線に触れたらしい。触ってきてはいるけど手つきにえっちさはまるでなく、純粋に仕上がりを確認している手だったのでされるがままに任せた。


「……うん!! 我ながら完璧!! これなら絶対流行るよ!!」

「なんとか学校で水泳が始まる前に流行らせたいんだけど、どう? いける?」

「任せてよ!! ジャンジャン作ってジャンジャン宣伝するよ!! あ、スク水喫茶ってのもいいかも!!」


 それは……なんかそっち系の店になりそうだけど、ブルマ喫茶の時点でもうアレだよね。


「じゃあ任せるわ。流行ればあんなダサいの着る子もいなくなるでしょうし」


 これで水泳の授業にも張り合いが出ると言うものだ。やっぱりどうせ運動するなら目が楽しいほうがいいに決まってる。


「それはそうと……もう1つ水着のデザインがあるんだけど」

「そうなの!? 見たい見たい!!」

「じゃあ……これよっ!」


 私はカバンからもう1つのデザイン画を取り出した。


「え……? いやこれ、下着じゃない?」

「下着じゃないわよ? これを水着の生地で作るの。ビキニって名付けたわ」


 上下が分かれたセパレートタイプの水着で、おへそが見えるのが最大の魅力だ。


「な、何て大胆な発想……!! 学生が着るならスク水の方が似合いそうだけど、これはこれで素晴らしいっ……!!」

「どう? 受けそう?」

「これもイケるよ!! うん!! ここはスク水だけでなくブルマも合わせた水着喫茶で……!!」


 それは完全にそっち系の店なんだけど。まぁいっか。


「で、どう? モニカそれ着てみない?」

「私が!? いや、でもこんな大胆なデザイン、私なんかには……」

「え~? 私、モニカがビキニ着てるとこみたいなぁ~」

「み、見たい……!? ホントに!?」

「うん。見たいな!」


 それを聞いたモニカは「じゃ、じゃあしょうがないな……」なんて言いながら工房へスタスタ歩いて行った。

 そしてちょっと待っていると、扉からひょっこりモニカが顔を出す。


「あ、出来たの? もしかしてもう着てる?」

「う、うん……でもっ……は、恥ずかしくて……」


 だから顔だけなのか。往生際の悪いモニカの腕を掴んで引っ張り出してあげることにする。


「ほらっ……見せてっ」

「あっ……だ、ダメぇっ……」


 引っ張り出されてきたモニカはその大きな胸も相まってそれはもう抜群にエロ可愛かった。


「エロ可愛い!!」

「直球!!」


 私からストレートに褒められたモニカがモジモジとする。水着で社長室に2人、完全に何かのプレイの様だ。違うけど。


「ほわ~やっぱモニカって可愛いわよ」

「も、もうっ……やめてってばっ……」


 じろじろ見てあげると更にモジモジとして肌を手で隠そうとするけど、ビキニではその可愛いおへそまで丸見えなのだ。


「うんうん、あ~もうっ、モニカ可愛いなぁ~」

「あ、アンリエッタの方が可愛いってばっ……」

「いやいや、モニカの方が」

「いやいや、絶対アンリエッタの方だって」


 私達がお互いを褒め合い、その水着姿を存分に楽しんでいると――


「社長! すみません! 急ぎの書類が――」


 店員さんが飛び込んできた。

 そう、この時代的には説明しないと下着にさえ見える水着を着ている、私達の部屋にだ。

 そしてそんな刺激的な恰好をしている私達を見た店員さんは――


「あっ……!! お、お楽しみ中でしたか!! すみませんでしたっ……!!」

「ち、違っ……」


 見事に誤解をして、顔を真っ赤にして出て行ってしまったのだった。


 それから社内では、社長に恋人ができて、社長室でえっちなことをしていたと噂になったらしかった――


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