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第27話 やはりミニスカメイドは凄い

 キマーシュの町に一人でやってきた私は、以前ミニスカメイド服を仕立ててくれた仕立屋さんに向かう。

 狭い路地を抜けて、ひっそりと目立たずに建っているはずだったそのお店は。


「なにこれ」


 お客さんでごった返していた。とんでもない大繫盛である。以前の隠れた名店っぷりはどこへ行った。

 なんか出てくるお客さんがみんなミニスカメイド姿なんだけど。どれだけ流行ってるんだ。異世界デザイン恐るべし。


 長蛇の列に並んで、待つこと30分。ようやっと店内に入ることができた。

 棚にはサイズ違いのミニスカメイド服、ミニスカメイド服、ミニスカメイド服……もう絵面が完全に白黒である。

 店員さんも前来た時より増えていて、必死にお客さんをさばいていた。


 う~む。この現状を自分が作り出したと考えると空恐ろしいものを感じる。

 これだけ混んでいると店長さんに話をするのは無理だろう。仕方なく諦めて引き返そうとしたとき、肩をポンポンと叩かれた。店長さんだった。


「あ、てんちょ」

「しっ、静かに、こっち来て」


 言われるままに手を引かれて店の奥に連れて行かれた。一体何なんだろう。疑問に思いながら着いていくと、更に奥の部屋に連れ込まれる。


「あの? 店長さ――ふひゃっ!?」


 いきなり抱きしめられた。着やせするのか、服の上からはわからなかったその豊かな膨らみが押し付けられてくる。


「ありがとう!! あなたのおかげよ!!」


 何がだろうか。やっぱりあのお店の繁盛っぷりだろうか。


「もう売れに売れてしょうがないわ! 作るはしから売れていくのよ、あのミニスカメイド服!! あなたはやっぱり天才よ!! 」

「そ、そうですか、それはなにより」


 こんな密室でこんな密着されてると、その、変な気持ちになって来るからそろそろ離れてくれないと。ムラムラしてしまう。


「あ、ああごめん、つい興奮して……いやぁもう、アンリエッタは私の女神さまだね!」


 すすすと照れつつ私から離れる。そこまで言われるとこっちも照れる。あと興奮してたのは私もだからおあいこだ。

 しかしあそこまで繁盛するとは、やはりミニスカメイドは凄い。


「そんなに売れてるんですか?」

「そりゃもう、さっき言った通り、作るのが間に合わないくらいよ。謎のデザイナーAは誰かって大騒ぎね。次の新作が待ち遠しいってさ」


「いよっ!この天才デザイナー!」と再びおだてられる。木にも登りたくなるわよね。ブタじゃなくても。


「ところで、アンリエッタにあげた服はどうしたの? 誰かに着せた?」


 まず真っ先に1着貰ったやつだ。それはもちろん。


「ええ、私のメイドさんに着てもらいました」

「メイドさんいるんだ、いいなぁ~。ねぇ、どんな子? 前に連れて来てた?」

「ああ、写し絵ありますよ、この子です」


 私は撮った写し絵――デジカメのように、画像を記録できる魔道具――を店長さんに見せる。そこにはミニスカメイド服姿で恥じらうエメリアが映っていた。

 改めて見てもすさまじい破壊力である。まさに可愛さの暴力そのものだ。


「こ、これはまた……凄いね……! もしかして私は、とんでもない代物をこの世に生み出してしまったのでは……あああっなんて罪深いことを……」


 芝居がかった動きでヨヨヨと崩れ落ちる店長さん。私はその肩に優しく手をかける。


「大丈夫ですよ……その罪は私が半分背負ってあげますから……」

「アンリエッタ……!!」

「私達は共犯者ですからねっ」


 ガシッと抱き合う。そんなノリのいい店長さんと小芝居をした後、ちょっと気になることを聞いてみる。


「でも、なんでそんなに売れるんですかね? メイド服ですよ? メイドさんってそこまで大勢いないですよね?」


 メガネをくいっと上げながら「ちっちっちっ」と指を振られた。


「わかっちゃいないわね、あれはメイド服である以前に、そもそもとんでもなく可愛い服なのよ。あの絶対領域とか特にね」

「ふむふむ」

「だからペアであれを着てデートをするのが、女学生の流行りになってるんだよ」


 ほうほう、メイドさんコスデートか。それはいい。後で街を徘徊することにしよう。


「他にはあれだね、恋人にプレゼントして自分だけのメイドさんになってもらうってのも流行ってるらしいよ」

「ミニスカメイドさんプレイ!」


 まんま私がやってたことである。エメリアは本職のメイドだけど。


「好きな人に露出の多いメイド服を着てお世話をして貰って、その後はごにょごにょというわね。

 余談だけどそのタイプのお客様は何着かまとめて買っていくんだよねぇ、不思議なことに」

「へぇ~それは不思議ですねぇ。まぁ服って汚れますもんねぇ。色々と」


 HAHAHAと2人で笑う。この人とはうまい酒が飲めそうだ。お酒飲んだことないけど。


「もちろん自分のメイドに着せるために買うお客様もいるよ。普段(つつま)しいメイド服で包まれてる子が、あんな露出の多い服を着せられたらギャップでそれはもう……」

「恥じらう姿がたまりませんよねぇ」


 エメリアで実証済みだし。もうたまらんでした、はい。


「まぁこれまた全く関係ない話なんだけど、百合子作りを補助する魔道具――百合の揺りかご、だっけ? それが最近よく売れてるんだってさ。来年はベビーブームかなぁ」

「ほほう、それはそれは」


 王国の未来は明るそうだ。服1着でここまでのことが起きるのかと驚くけど。

 しかしあれだ、そうなると。


「ミニスカメイドさんがここまで人気となると……お店とか出したらいいんじゃないですかね」

「何? それ」


 よくわからないという顔をしている。ああ、この発想はまだこの世界にはないのか。


「えっとですね、喫茶店とかで働くウエイトレスさんっているじゃないですか」

「うん。でもそれがどうかしたの?」

「その制服を、ミニスカメイド服にするんです。……つまり、メイドさんにご奉仕してもらえる喫茶店を出したらどうか、というわけですよ!」


 ――そう、メイド喫茶である。


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― 新着の感想 ―
こういう小芝居というか、悪ノリ系の茶番、大好きです^_^
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