第16話 可愛くて仕方がない!
約束通りきっちり2日後……仕立屋のお姉さんから例のブツが出来上がったと連絡があり、私は放課後に全速力で受け取りに行った。
そしてブツを手に入れた私は、かねてからの計画を実行に移すことにした――
まずエメリアに買い出しを頼んで部屋に私だけの状況を作り、その間にメイド服を見つからないよう隅にしまった。
更にわざと部屋を散らかしておく。屈みこまないと拾えないように、床にも色々置いておくのも忘れない。
あとはエメリアが帰るのを部屋で待つだけだ。ワクワクしながらエメリアを待っていると、
「お嬢様、ただいま戻りました――ってうわっ!? 何ですか? こんなに散らかして」
帰ってきた帰ってきた。ふふふふふ。
「あ~ごめんごめん、ちょっと探し物をしてて」
「もう、しょうがありませんね。私がお探しします。その前に着替えを……」
もうすっかり私の前で着替えるのには慣れたようだ。だが、
「あ、あれ……? メイド服が無い……?」
「あ、ごめんね、ちょっとお茶こぼしちゃって、学園付きのメイドさんに洗濯頼んだのよ」
もちろん嘘である。
「ええっ? そんな、お洗濯くらい私がしますのに」
「いやいや、急がないとシミになっちゃうからね。それで渡してきたのよ」
「でも……ハンガーにかかっていたのに、どうすればお茶が……」
「い、いや、こう! ね! 椅子に足引っかけちゃってステーン!! ってね、あはははは」
苦しいか? いやでも押し通す!!
「そうなんですか?」
「そうなのよ!!」
「は、はぁ……でも困りましたね……メイド服が無いとご奉仕が……」
「あ、そういえばここにちょうどいいものがっ」
今だ!! とばかりに、綺麗に包装されたプレゼント用の箱を取り出してエメリアに見せる。
「これは?」
「普段からエメリアにはお世話になってるからね、新しいメイド服よ。受け取ってくれる?」
「あ、アンリエッタ……!! そんな……! 私のために……!?」
箱を抱きかかえて目を潤ませている。
うっ……欲望100パーの品なのにそういう反応されるとちょっと困る……だが後には引けぬのだ。
「ほ、ほらいいから開けてみてよ」
「ありがとうございますっ……では……」
宝物を扱うようにゆっくりと包みを開いていき、その包装紙まで愛おしそうに畳んでいく。そしてうやうやしくゆっくりと箱を開けて出てきたのは――
「こ、これはっ……!?」
「ふふふっ、どう? 私がデザインしたエメリアのためだけのメイド服よ!」
しかもこことは異なる世界のデザイン!! 他の誰も着たこともない代物だ。
「わ、私のためにわざわざ……!? そ、それは嬉しいんですけど……!! 嬉しくて涙が出そうなんですけど……!! でも、このデザイン……!!」
「可愛いでしょ? エメリアに絶対似合うと思うのよね」
エメリアはそのスカート丈がかなり短い、フリルのふんだんについたメイド服を手に取って嬉しいけど恥ずかしい、そんな複雑怪奇な表情を浮かべている。
なにせ普段来ている慎まやかなメイド服とは全く違うのだから。
「どう? 着てくれる?」
「あ、あのっ……でもっ……恥ずかしいですっ……」
「お・ね・が・い・っ」
「ううっ……えっと……わ、私がこれ着たら……アンリエッタは嬉しいですか……?」
メイド服を抱え、頬を染めてちらちらこっちを見てくる。
当たり前でしょうに! そのためにデザインしたんだから!!
「もちろん!! 可愛いエメリアの色んな姿が見られたら凄く嬉しいわ」
「じゃ、じゃあ……わかりました……着ますっ!」
かなり葛藤はあったようだけど、私のためならと着てくれるらしい。とても嬉しい。
そしてゆっくりと着替え終わったエメリアだったが……
「あ、あの……これ、なんでこんなピッタリなんですか!? 胸とか腰とか……測ったことないですよね!?」
「そりゃもちろんエメリアだからよ? 近くで見てきたもの。寸法くらい手に取るようにわかるわ」
「えっええええっ!?」
「ほらほら。手で隠さないで、可愛いエメリアを全部見せてちょうだい?」
そう頼まれて、おずおずと手を下ろしたミニスカメイドエメリアは……もう可愛さの権化だった。
大きく開いた胸元から見える谷間は、ただでさえ素晴らしすぎるエメリアのお胸をさらに引き立てて、もはや国宝と言ってもいいレベルだ。
きゅっと締まった腰のくびれは完璧な曲線を創り出し、ハイソックスとフリル付きのミニスカートで挟まれた太もも絶対領域にはもはや言葉もない。
もうとにかく可愛い。可愛くて可愛くて仕方がない。
「最高……最高よ……」
私は感動で打ち震え、ベッドに突っ伏す。店主さんは完璧な仕事で、エメリアの魅力を120%引き出してくれた。
「お、大袈裟です……そんな私なんて……」
「そんなことないわ、胸を張りなさい。あなたは最高に可愛い! 私が保証するっ!」
「はうっ……」
見悶えるエメリアの動きに合わせて、たわわなお胸はゆさりと揺れるのだった――




