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第13話 私のエメリアだって凄いんだから!

「お買い物行きたい」


 放課後の教室で私はポツリと呟いた。


「お買い物行きたいぃ~~遊びたい~~もう毎日毎日基礎基礎基礎基礎、時々体育と生命学!! もういやぁ~~なにこれ! 寺なの!? 修行僧なの!?」


 机に突っ伏しジタバタとする。基礎ばかりの毎日で色々溜まりすぎているみたいだ。


「仕方ないんじゃない? とにかく基礎覚えないと他の授業もろくに出来ないんだから」

「ルカはいいわよね。ヤキュー部あるし。私なんて毎日の楽しみはエメリアの極上膝枕だけなのよ!?」

「お嬢様!?」

「え? 膝枕とかして貰ってるの?」


 驚くルカに、


「あら? 当然でなくて? わたくしもシンシアに毎日して貰ってますわよ? わたくしの場合は腕枕ですけど」

「ええ、お嬢様ったら部屋に戻るとすぐに『いつものお願い』っておっしゃるんですよ」


 と、クラリッサ&シンシア主従。やはり百合百合ねこの2人。よきよき。


「おおお……貴族すげぇ」

「腕枕、そういうのもあるのね」


 じっとエメリアを見つめる。するとポッと顔を赤くして、


「わ、わかりました……お部屋に戻ったら……」

「楽しみにしてるねっ」

「ふふん、でもわたくしのシンシアにはかないませんわね。この子の腕枕はそれはもう極上なんですのよ」


 クラリッサがシンシアをぐいと前に押し出すと、シンシアはふんす! と胸を張り何やら誇らしげにしている。クラリッサから自慢されたのが嬉しいらしい。

 おん? その喧嘩買おうじゃないの。


「そんなことないわよ! 私のエメリアだって凄いんだから! 私なんか膝枕されてると、あ~もうご飯とかいらないからこのままがいいな~って思っちゃうくらいなのよ!」

「お、お嬢様っ……」


 私もエメリアを押し出し、シンシアと直接対決をさせる。

 押し出されたエメリアとシンシアのお胸が向かい合い、その大質量同士による頂上決戦に、残っていた生徒たちの注目が一気に集まる。


「うわぁ~。やっぱおっきぃ~」

「ひぇ~何食べたらあんなになるの? 今度教えてもらおっと」

「貧乳派の私でも……これはっ」


 教室がざわつく……ざわざわ。


「ふふふ、どうですの? 負けを認めまして?」

「なんですって? 私のエメリアがどうして負けてるの? よく見てみなさいよ」

「お、お嬢様っ……!! み、皆見てますっ……!!」

「うわ~私と同レベルの子なんて初めて見ましたよ~」


 そうしてしばらく押し合いへし合いしていたが、決着はつきそうになく――


「ぬっ……ぐっ……ぐうっ……」

「むむむむむ……っ」


 そのうちにらみ合っている私達のほうがへばってきてしまい、結局勝負は引き分けと言うことになった。

 当の二人は激戦の疲れか床にへたり込んでしまっており、周りから称賛の声をかけられている。


「いやぁ~凄かったよ二人とも。まさに頂上決戦だったね」

「やっぱりあれなの? 牛乳とか? それとも豆乳?」

「大きいのも……ありね……考えを改めるわ……」


 だがそのエメリアはゆっくり起き上がると、むくれた顔をこちらに向けてくる。


「もぉぉぉ……! お嬢様ってば!! ……今日の膝枕は無しです!!」

「えええええ!? そんな!?」

「ダメですっ!! すっごい恥ずかしかったんですから!! こういうことするのは2人っきりの時にしてください!!」

「あ、2人の時ならいいのね……」

「でも……私のエメリアって言ってくれたのは……嬉しかったです……」


 デレた。何このメイド可愛すぎる。

 そして対戦相手の方はというと、


「流石シンシアですわ。ご褒美に今日はわたくしが腕枕をしてあげますわね」

「ああっお嬢様~そんな、もったいないですっ」


 頭を撫でたり抱きしめたり、2人でイチャイチャしてる。微笑ましい。

 私も混ぜてほしいな。具体的には挟まれたい。


――そして一通りシンシアを愛でた後クラリッサが、


「話は戻りますけど……お買い物、いいですわね。ここしばらく勉強ばっかりでしたし、皆で街にでも行きませんこと?」


 その流れで戻ってくるの? まぁいいけど。


「街?」

「ええ、ユリティウスの近くにはキマーシュという大きな街があるんですの、大抵の物は揃いますわよ」

「いいねぇ~私も新しいグローブ欲しかったんだ」

「ふむ……じゃあ行きましょうか。エメリアも来るでしょ?」

「はい、勿論お供させていただきます」

「じゃあレッツゴー!!」


 そして私達は街へと繰り出した。

 乗合馬車に揺られること20分――


「わぁ~~おっきな街ねぇ~~」


 キマーシュの街に着いた。そこは歴史を感じさせる石造りの街だったが、けっして古びた感じはなくてむしろ活気に満ち溢れた街だった。

 

「わたくしもここに来るのは初めてですけど、色々と調べてはありますわ。ねぇシンシア?」

「はい、お嬢様の好きそうなところはばっちりです」

「あ~もう、いい子ねぇ」


 頭を撫でられたシンシアはくすぐったそうに眼を細めている。


「わ、私だってお嬢様の好きそうなところは調べてありますから!」

「そうなの? エメリアもいい子ね」


 同じく頭を撫でてあげると、これまた(とろ)けそうな顔になっている。


「はいはい、ご馳走様。んで、どうする? 私的にはお腹すいたから何か食べたいんだけどさ」


 そう言うルカにクラリッサが応える。


「ふっふっふ、任せてくださいまし。最近密かなブームになっているという食べ物がありますの。それを食べに行こうと思ってますわ。シンシア、道案内を」

「はいわかりました。お任せください」


 ほう、この異世界でのブームとな、楽しみね。

 こちらの食事も何度か経験したけど、前世では味わえないような面白いものが結構あったから今回も期待できそうだ。


 そして大通りから少し外れた小道をえっちらおっちら歩いて行って、本当にこんな外れに美味しいお店があるんだろうかと皆が疑い始めたとき、こじんまりと構えた店が現れた。


 その店には赤い提灯が飾られ、紺色ののれんが下がり、ぷ~んと嗅いだ覚えのあるいい香りがして――


「そう、これが最近巷で密かなブームと言われている……オコノミヤキですわ!」


「なんでやねん!!」


 思わず関西風に突っ込んでしまったのだった――


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