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え、それは嫌だな。私帰っていいですか?  作者: RS世代
第2部第1章:天空海闊のバルカローラ
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帰りたい(103回目)  もとい【怪傑の三銃士】


 【怪傑の三銃士】が凄い人たちで、それを打ち消すくらい癖のある人たちだということはよく分かった。


 問題は、なんでこのおっさんたちが、今回駆り出されたのかなんだけど。



「この任務に【怪傑の三銃士】の方々が必要だと言うことは、相当切羽詰まっているってことですよね?

 内容は何なんですか?」

「あぁ────今回の任務は、マグロ村の調査だ」

「マグロ村? どこだそこ」

「あ、お魚の……」


 聞き慣れない名前に首をかしげるクレアだったが、ここに住んで長いセルマやスピカちゃんには聞き覚えがあったようだ。

 私も、つい最近その村の名前には聞き覚えがあった。


「漁業が活発な村ですよね? 自分もよくお魚を食べるわ」

「そうだな。知ってる奴もいると思うが、最近その村で不漁が続いている。

 このままでは魚の値段の高騰が続き、経済に影響が出かねない────いやもう出ているな」


 この村の魚の流通は、マグロ村からの仕入れが約3割。

 魚の流通が滞り、店頭に新鮮な物が並ばず、実に約7割ほどの供給で、今は街が動いているわけだ。


 魚屋さんの店主のような人たちだけでなく、私やきーさんのような顧客にも影響を及ぼしているのだから、現状結構不味い状況なのだろう。


「最初は村の漁師たちも調査をしていたらしいが、結局理由は分からず。

 このままじゃ明日食う飯もままならないって事で、マグロ村の漁師組合と魚屋商業組合が金を出し合って、軍に依頼してきた」


 そう言うことだったのか、魚屋さんの大将が言っていた意味深な言葉の意味がようやく分かった。


「あ、でも、その村の不漁の原因て、確か…………」


 スピカちゃんが、横でおずおずと声を上げる。

 依頼の内容にようやく心当たりが出て来たらしい。


「私も何となく、聞いてます。スピカちゃんも同じ事考えてたんですね……」  

「お前さんたちそこまで知ってんのか。なら、話は早そうだな」


 マグロ村、不漁、それに関するこの間聞いた噂。

 噂なので、もちろん一切根拠もなかったが────


「エリーちゃん、原因て何なの?」

「そのマグロ村で何が起こってるのか分からねぇから、調査すんじゃねぇのか?」

「いや~、そ~れ~がぁ~……」


 アデク隊長の言い方だと、やはりあの噂についての真相を私たちが探るという流れだろう。

 セルマはそう言う話が大嫌いで、自分で話しているだけでも怖くなっちゃう子だ。


 話し始めようか、そもそも話していいのか考えあぐねていると、アデク隊長が顎で話せと指示してきた。


 こんにゃろ────


「いや、あくまで噂なんですが、その村の周辺で漁に出ると、沢山の骸骨が海に出て、みんな怖がって、海に出れないらしくて…………」

「が、骸骨……??」


 お化けが苦手だというセルマ、それを聞いて明らかに怯えた顔をする。


「ど、どうせデマよね……? デマだって確かめるのが自分達の仕事だって言うんでしょ……?」

「それが、ホントの話みたいでなぁ。

 事実だって事を確かめるのがお前さん達の仕事だ」

「いやぁぁぁ!!」


 初任務、どうやらセルマにとってはかなりの無茶ぶり要求だったらしい。


 まぁ、私もお化けは好きではないので、こんな内容が続いてしまうのは考え物だけれど。


「動く骸骨? そんなのと闘うのか!?」

「────────イヤだなぁ……」


 クレアは少しワクワクしている感じもするけれど、スピカちゃんは私と同じように死んだ魚の眼────帰りたいモードに入っていた。


 やる気が空回りしそうな人1名、やる気がない人2名、絶対に行きたくない人1名。

 初任務、こんなんで大丈夫か────?


「安心しなライト嬢さん、私たちがいれば大丈夫だ」


 タラシっぽいおじさんこと、ジョノワさんが、なんだか頼もしいことを言いだした。


 もしかして、セルマを気遣ってくれているのだろうか。


「だ、大丈夫なんですか!? ホント骸骨とか大丈夫なんですか!?」

「はは、そうだぜぇ? オレやライルはもっとこえ~もん毎日相手にしてんだからよ!」

「こえ~もん?」

「カミさんだよ、カ・ミ・さ・ん!」


 ガハハと笑うエッソさん、どうやら彼らの中では鉄板のネタのようだ。


「ま、具体的に言うと、お嬢さんたちは直接の調査より、別の仕事を任せたいんだ」

「べ、別の仕事……?」

「あぁ。私たちより数日先に村に行って、色々とやってほしい事があるんだ。

 村の人たちと仲良くなること、今の村の現状を知ること、骸骨騒動の真偽を知ること。その3点を優先で頼むよ」


 ジョノワさんが任務を分かりやすくまとめてくれた。


「あぁ、それらは最優先────我々到着までに頼んだぞ」

「村人と仲良くなる? なんでそれが必要なんだ? アンタらでもできんだろ?」


 相変わらず失礼な口調のクレア。

 それを気にした様子もなく、おっさんたちはつらつらと説明してくれる。


「ほら、オレたちにゃ時間がねぇ。おそらく今回も手段を選ばず解決に導くための方法を考えることになる。

 でも、もしオレらが調査に行って、無理矢理な力業で解決しなきゃいけなかったら、村の人たちが良く思わんかもしんないだろ?」

「そうですね」


 普段どういう方法をとる人たちなのかは知らないが、そこまで軍から仕事をすることを敬遠される人たちだ。


 今回も彼らが「なるかも知れない」と言ったら、経験上そう言う確率が高いのだろう。


「だから、嬢ちゃんたち先に村の人と仲良くなっておいて『軍のみんなはこんな優しい人たちです』ってアピールが必要になるのさ!!

 ふははっ、オレらおっさん衆より、若い衆が集まってキャピキャピしてくれた方が、向こうも受け入れやすいだろう!?」


 まぁ、礼儀とか作法とかを私たちに求めるというのはいささか不足な気もするが、そこは考えあってのことだろう。


 三銃士はハッキリとは言わないけれど、頼りない女の子達が最初に向こうで色々とやってくれれば、後から来たベテランがより頼りがいがあるようにも見えるわけだ。


 最初は若い力で盛り上げて、一気にベテランがたたみかける。

 これが時間がない中、人数が少ない中で出来る最短の信頼の得方なのかも知れない。


「それに村での様子は私たちの耳には入りにくいんだ。

 貧困してるのか、解決しようと躍起になってるのか、諦めムードなのか────その辺の情報は不確かな物も多いから、誰かが直接見てくるしかないよね」

「その状況の調査はオレたちのチームにできる、最低限の前準備になるってことだ」


 魚屋さんの大将の言っていた、噂は噂でも実際確かめたわけでもなければ店を空けて、わざわざ確かめに行くことも出来ない、と言う調査をつまりは私たちが代行としてやる、と言うことだ。


「そして忘れちゃいけないのが、事実の確認だ。

 骸骨って言うけど、それはホントに骸骨なのかな?」

「え、骸骨じゃない事ってあるんですか?」

「あるよ、そんなもの見る人間や状況、あと村人の風習なんかでいくらでも見間違う。

 夕焼けに包まれた山だって、みんなが燃えてると思えば誰も信じて疑わないでしょ?」


 なるほど、直接見た物でもそれを安易に信じてはいけない。

 中々それは難しいことだけれど、第三者の目線────私たちの目線を通せばそれも出来るというわけだ。



「てことで、お嬢ちゃんたちの初任務がこれなのも、『新人だからこそ見れる目線』てのが必要だからだ。

 村の人の偏見にはなびかず、かといってオレらみたいな専門家の視点を持ってるわけでもない────

 ハハハ、おあつらえ向きだっていった理由が少しは理解できたかえ?」

「えぇ、まぁ」


 うまく言いくるめられた────言いくるめようとしているのはよく分かったので、私はとりあえず納得しておくことにする。


「んじゃ、オレたちがお嬢さんたち追っかけて出るのは5日後だ。

 明日早朝に出りゃ、午後には着くから調査は明後日から始めるといい。

 向こうで合流したら何か奢ってヤッから、色々はなし聞かせてくれや!」


 そんなこんなで、私たちの初任務が始動する────────


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