第96話 一応焼き肉しました。
今回は少し短めです。
こんにちは、勇者です。
はい。勇者、この度パパになりました。
クロちゃんのお父さんには後ろめたい気持ちがなくもないですが、それでクロちゃんの気持ちが少しでも落ち着くのなら幾らでもパパになりましょう!
さて、ウオンドルさんの計らいで作業中のドワーフたちに声をかけてもらい、山頂の一角では着々と焼き肉パーティーの準備が整いつつあります。
ドワーフたちは土魔法が達者なようで、瞬く間に立派な焚火台やら肉を焼くための焼き石焜炉を拵えてしまいました。
竜体化したクロちゃんが山で狩った沢山の獣を運んでくると、彼らは我先にと肉を解体しては丸焼きにしたり、薄く捌いて焼き石で焼いていきます。
野菜? んなもん必要ねーですよ! だって今日は肉祭りだもん!
何処から持ち出したのか木箱にたんまりと詰まった酒瓶も運ばれてきて、既に頬が赤い人もチラホラと。
「あ、そういえばすっかり忘れてたんだけどぉ」
その輪の中に混ざって杯片手にグイグイ飲んでいたルルエさんが言いました。
「なんか此処を仕切ってたっていう奴らがいたから閉じ込めてあるんだけど、アレどうするぅ?」
「えぇぇ?」
っていうかそれ、ツムラの仲間ですよね。
あの人なんで持ち帰らなかったんだろう。めっちゃ迷惑なんですが?
「えっと⋯⋯面倒だしとりあえず肉食ってから考えましょう」
「アハハハハハッ! お肉っ! お肉っ! 食べていい? 食べていい!?」
テンションの上がりまくったクロちゃんが、竜の姿のまま生肉に齧り付こうとしていました。
「クロちゃん、今日はドワーフさんたちも一緒だから人の姿で一緒に食べましょうね」
「わかったぁー!」
そう言うとクロちゃんは素直に人へと擬態化し、肉へと群がるドワーフの中へと突撃していきました。
竜になったり人になったりと忙しいクロちゃんを見て、ドワーフたちが驚くのではと思っていたのですが、自分が眠っている間にその辺りはルルエさんの説明と実演もあり特に騒ぎにはなりません。
むしろドワーフたちはクロちゃんを好意的に見ているようで、焼けた肉を次から次へと彼女へ与えていました。
「正直言うとな、ワシらはあの子に罪悪感を抱いとるんですよ」
そう言ったのは眉根に皺を寄せてすまなそうな顔をするウオンドルさんでした。
「奴隷として使役されていたとはいえ、ワシらはあの子の父親の死体をバラしとったんです。それを知った時には何とも複雑だったし、あの子に殺されるんじゃないかと怯えもしやしたよ」
それは⋯⋯そうするしかなかったでしょうし、復讐されると思うのも無理はないでしょう。
「だけどなぁ。あの子、クロ嬢ちゃんはワシらにお礼を言ったんだ。お父さんを埋めてくれてありがとうと。無理したような笑顔でな? その時の顔はもう⋯⋯見ておれんかった」
手に持った杯に口を付けようとせず、ウオンドルさんは懺悔するように言葉を続けます。
「だから作った墓も、せめてもっと立派にしてやろうと今も手を加えている。そんなことで償えんと分かっちゃいるが、少しでもあの子の為に何かしてやりたいんですわ」
だからでしょうか。クロちゃんの周りにいるドワーフたちの表情は、みな笑っていてもほんのりと影が差しているように感じました。
「今日、アンタが目ぇ覚ましてからのクロ嬢ちゃんは見違えるくらい明るく見えますよ。余程心配だったんだろうなぁ」
ウオンドルさんは口一杯に肉を頬張るクロちゃんを見て、嬉しそうに微笑みました。
彼が何歳なのかは知りませんがまるで好々爺のような雰囲気で、ウオンドルさんの優しい人柄が窺えます。
「パパ! パパもはやくお肉食べて! なくなっちゃうよ!」
口元を脂でベトベトにしながら、クロちゃんが無邪気に叫びます。
あの、人前ではその呼び方は止めようね!?
「パ、パパァ?」
それを聴いたウオンドルさん、だけでなく周囲のドワーフたちも一斉に自分を見て眼を見開いていました。
「あの、まぁ、成り行きで⋯⋯」
「ハッハッハ! そうかい成り行きかい! だったらもうあの子を寂しそうにさせんで下さいよ、パパさんや!」
豪快に笑いながら、ウオンドルさんに肩をバシバシ叩かれる。
い、痛い⋯⋯。一応ね? 生き返って目が覚めたばっかりだから手加減してね?
「そんじゃパパさんもたんと食いなせぃ! あんな不味いパン粥じゃ腹も膨れんかったろう、どんどん食って体力つけな! ほれお前ら、パパさんにも肉を配れやっ!」
ウオンドルさんの言葉を皮切りに自分の周りにもドワーフたちが集まり背中を押され、焼き肉会場へと連行されます。
いつの間にか酒も持たされ、代わる代わる杯を打ち合って挨拶と言葉を交わしていきました。
「ほら、焼けたぜパパさん!」
「細っちいパパさんだな、ほら食え、もっと食え!」
「そんなんじゃあ娘に食い負けちまうぞ〜パパさん!」
「ちょっ、あの、こんなに沢山は――っていうかパパさんって連呼しないで!?」
皿には山のように肉が積まれて、正直胃が受け付けないと思いながらもこの空気では言い出せません⋯⋯。
仕方なく肉の山を崩すように食べるのですが、少し減ると横合いからお代わりが盛られて一向に山が無くならない!!
酒も次から次へとお酌をされて飲まずにはいられず、自分は一時間もしないうちにベロベロになってしまいました⋯⋯。
でもドワーフの皆さんが気の良い人たちの様で本当に良かった。
今では絶滅も危ぶまれている種族なだけに自分はここで初めて触れ合い、どう接すればいいか迷っていましたが――お酒の力とは凄まじいもの。
最後の方は肩を組んで皆でゲラゲラ笑い合っていましたよ。
その後酔い潰れてぶっ倒れましたが!
「アッハハハ! お肉おいしい! みんなもかおが真っ赤でおもしろい!」
クロちゃんも楽しそうだし、やって良かった焼き肉パーティー!
なおツムラの仲間たちのことなどはすっかりと忘れて、事情聴取は後日となりました。
今話は帰還と言ったな、あれは嘘だ!まだまだ帰れなさそうです!
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